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【MotoGPコラム】中上貴晶&長島哲太、MotoGPと8耐で明暗分かれたふたり……同い年日本人ライダーが交差した日

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【MotoGPコラム】中上貴晶&長島哲太、MotoGPと8耐で明暗分かれたふたり……同い年日本人ライダーが交差した日

 8月第1週の週末は、日本では鈴鹿8時間耐久ロードレースが、そして欧州ではMotoGP後半戦の口火を切る第12戦イギリスGPが行なわれた。

 鈴鹿では、ホンダファクトリーのTeam HRCが、土曜の予選でポールポジションを獲得。日曜の決勝レースでも、他を寄せ付けない高い安定感とスピードを披露して、2014年以来の優勝を飾った。まさに往年のホンダの〈無慈悲な強さ〉が甦った圧勝である。その最大の功労者は、予選で唯一の2分04秒台を記録し、決勝でもチェッカーライダーを務めた長島哲太であったことに異論のある人は少ないだろう。

■長島哲太、鈴鹿8耐初優勝に感無量「嬉しい以外の表現ができない!」

 ホンダは、伝統的に特定の個人を指して「エース」と呼ぶことを好まない傾向がある。だが、長島、高橋巧、イケル・レクオナという3名のラインナップを眺めると、今回の8耐では長島がエースとしてのポジションにいたことは間違いない。CBR1000RR-R SPのマシン開発を引き受けてきた長島は、ウィークのマシンのまとまりに関してもかなりの手応えを掴んでいたようだ。

 長島が金曜午前の予選でいきなり2分04秒台を記録した直後に、ピットレーンで少し立ち話をする機会があった。

 彼は仕上がりの良さに好感触を得ていると述べた後、2番手を1秒以上突き放す圧倒的なラップタイムを記録したことについて「これだけが唯一の気がかりだったけど、タイムを出せて良かった」と、ホッとした様子で述べた。そして、この調子でいけば日曜の決勝はいい戦いをできそうだ、とも明るい表情で話した。

 その言葉どおりに、翌日は危なげなくポールポジションを獲得。日曜の決勝は8耐を知り尽くした高橋がスタートライダーを務めて序盤からリードを築き、長島にバイクを渡した。長島もさらに差を広げて、レクオナへ繋いだ。その後も、彼らはなにひとつミスなく大差を広げ続けた。午後7時半に長島がトップでチェッカーフラッグを受けたのは、ライダー3名とチームスタッフがそれぞれに高水準の仕事を最後まで続けた当然の結果にすぎない。

 表彰台で長島は、2020年末にMoto2のシートをなくした際に、自らHRCの門を叩いてテストライダー就任を打診してチャンスをもらい、以後、この8耐での勝利を目指してひたむきにテストを重ねてきた、と明かした。

■MotoGP中上に託された車体

 その長島がテストライダーとしてマシン開発に関わったのは、CBR1000RR-R SPだけではない。MotoGPマシンRC213Vも担当する開発範囲に含まれている。長島がテストを重ねたRC213Vの改良車体は、MotoGPの後半戦がスタートした第12戦シルバーストーンで中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)に託された。

 この車体で初日金曜の走行を終えた中上は、特にリアのエッジグリップが改善し、安定感が向上している、と述べた。とはいえ、MotoGPでのホンダは、他陣営に比して苦戦が続いている。土曜の予選を終えて21番手、という苦しいスタート位置になった中上は、「車体は良いが、他に詰めなければならないところがあまりに多い」と話し、質疑応答の口調からは日曜に向けて強い自信を持てないでいる様子も窺えた。

 7列目スタートの決勝レースは、13位でゴールした。ポイント圏内で、しかもホンダ勢で最上位とはいえ、とても上々とは言えないリザルトだ。それは中上自身がいちばんよく感じていただろう。レースを振り返る口調も厳しく、明るい様子はまるでなかった。

 それにしても、同じ日にイギリスと日本で行なわれたレースの結果は、ホンダにとってまったく対照的な結果になった。イギリスで戦った中上貴晶と日本で戦った長島哲太がそれぞれレース後に噛みしめた思いの違いは、彼らふたりが偶然にも同い年(1992年生まれ)でありながら、そこまでに歩んできた道のりの違いを振り返ると、まさに〈禍福は糾える縄のごとし〉といった感もある。

 今週末は、レッドブルリンクで第13戦オーストリアGPが開催される。2020年のレース(スティリアGP)では、中上は表彰台圏内の3番手を走行中に赤旗が出て仕切り直しになり、再開後はリズムを取り戻せないまま7位で終える、という出来事があった。そのレース結果はともかくとしても、この時期の中上にはたしかに勢いがあった。

 その2年前、長島は中上の後任としてMoto2クラスのIDEMITSU Honda Team Asiaに在籍していた。この年のレッドブルリンクで、長島は激しい雨のセッション中に転倒し、横倒しになったバイクの上に正座したような恰好で滑走する珍事があった。

 その様子がサーフィンにたとえられ、現在の彼のキャラクターデザインに使用されるようになったのはよく知られているエピソードだ。わずか数年前の出来事だが、この当時は長島と中上が現在のような関係性でつながるようなことになるとは、おそらく誰も想像しなかっただろう。

 現在の長島は、HRCのテストライダー業務と並行して、全日本ロードレース選手権のST600クラスで自らが立ち上げたチームの監督を務めている。一方の中上は、おそらく何度目かの、グランプリライダーとしてもっとも重要な正念場を迎えている。来季のシートに関する正式発表はまだ行なわれていないが、どのような形に落ち着くにせよそれが誰の目にも納得できるものに映り、また彼自身も確固たる何かを掴み取れるような、そんな有意義な週末になるだろうか。

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