BYDの起源はバッテリーメーカー
BYDは1995年、広東省深セン市にバッテリーメーカーとして設立された。
【画像】中国で盛大に開かれたBYDシール試乗会のようすをもっとみる 全74枚
世界の名だたる電子機器メーカーによる採用例を増やしていき、2003年には国営の自動車メーカー「西安秦川汽車」を買収。自動車部門「BYD汽車」がスタートした。
勘違いされやすいがBYDはBEV専業メーカーではない。PHEV、そしてそれを支える内燃機関も自社で手がけている。
事実、2023年は全世界でBEVを157万4822台、PHEVを143万8084台を販売している。2024年はBEVが世界的にやや下火傾向にあることに加え、BYDが「第5世代」と呼称する新たなPHEVシステムを市場へ投入したこともあり、同社においてはPHEVの割合が増加するのではないかと見られる。
日本においては2015年に京都府のバス事業者「プリンセスライン」へバスを5台納入したことにより、電気バス事業をスタートさせた。
現在までに日本全国のバス事業者へ約200台の納入を完了しており、2030年までに累計4000台を日本で販売するという目標も立てている。
日本で乗用車の販売を発表したのはまだ記憶に新しい2022年7月のこと。2023年1月にローンチしたのはSUV「アット3」で、続いて同年9月には小型ハッチバック「ドルフィン」を発売。
そして明日2024年6月25日に日本発売となるセダン「シール」まで、すべてBEVで3車種を取り揃える。
当初の予定ではシールも2023年中に発売予定としていたが、最終的には「2024年初夏」へと延期。そしてついに、2024年6月25日に発売されることとなったのだ。
純正でもスポーティな走り
筆者が初めてシールに試乗したのは、日本のサスペンションメーカー「テイン」が2023年7月に中国で開催した試乗会でのこと。
テインの中国工場近くにあるミニサーキットで「テスラ モデル3」「テスラ モデルY」「ジーカー001」「BYDシール」の4車種を、それぞれで「純正」「純正形状サスペンション EnduraPro Plus」「スポーツ車高調 FLEX Z」「FLEX Z+電動減衰力コントローラ EDFC5」の4通りのセッティングを試すことができた。
そこで驚かされたのが、シールは純正でも意外と悪くないという事実だ。
シールはBYDの「e-Platform 3.0」で設計され、底面のバッテリーパックがボディ構造の一部を担う「セル・トゥ・ボディ(CTB)」構造を採用する。
これにより実現した高いねじり剛性が効果を発揮し、狭いコースにおけるタイトなコーナーでもしっかりとボディが付いてきてくれると感じられた。
また、ハンドリングも正確でクイックな印象を受けたが、これはダブルピニオン式電動ステアリング(DP-EPS)によるもの。
加えて、全輪駆動モデルでは四輪トルク制御システム「iTAC」と可変ダンピングアブソーバを独自に採用しているので、走りに関してはBYDもかなり自信を持って仕上げたと言える。
純正でも十分に良いシールだが、そこへテインのスポーツ車高調 FLEX Zを組み合わせることで「安心してもっと踏める」BEVが完成する。サーキットでは基本的にストレートで速度を稼ぎ、その後のコーナーでいかに速度を抑えながらも素早く曲がるかが肝心。
FLEX Zを装着することで不必要なロールが軽減されるだけでなく、街中においても本領を発揮する路面上の凹凸の吸収加減も向上することによって、ちょっとした攻めた走りもこなせると感じた。
動力性能に見合った制動力を!
2023年10月にはBYDが日本のメディアを招待し、深セン市にある本社の見学、そして珠海国際サーキットでのシール試乗会を開催した。
シールを国際的なレースも開催できるサーキットで試乗するのは初めてだったこともあり、とりあえずは純正の限界を知り尽くそうと考えた。
乗り心地は変わらず良かったものの、より直線区間が多いサーキットではブレーキの扱いづらさが目立った。
全輪駆動モデルでは出力530psを発揮するが、その加速力に見合うだけの制動力が備わっているとは言いにくい。
もちろん本格的なハイパフォーマンスセダンの水準は求めないが、コーナリング時の減速においては明確に物足りなさを感じた。
また、ブレーキペダルも半分ぐらいまではスカスカ、そこから踏み込むことでじんわりと効いていく「慣れ」が必要なタッチだ。
BEVは、加速するだけであればアクセルを踏めばモーター駆動により瞬時に速度を上げてくれる。その一方で、高速で移動する物体は急には止まれない。
シールの位置付けとしては街乗り性能が重視されるべきであるし、0-100km/h加速3秒台のような爆発的なパフォーマンスよりも緊急時にしっかりと対応できるブレーキ性能の方が肝心だ。
ただ、逆に言えば走りの面における懸念点はそれぐらいで、乗り心地に関してはドイツ車的な硬さで安心・安定のある走行体験をもたらしてくれた。
スポーティな純電動セダンはまだ日本で少なく、シールが発売されれば大きな話題を呼ぶだろう。シールがライバルとして見据えるのはBEVだけでなく、同じDセグメントセダンのガソリン車たちも含まれる。
日本での販売価格は明日6月25日に発表予定とのこと。なみいるライバルたちにどう挑むのか、目が離せない。
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