この記事をまとめると
■ジャーナリストがいままでの人生で買わずに後悔したモデルを紹介する本企画
中古スポーツカー価格「高騰」が止まらない! 最近驚異の「爆上げ」をみせているクルマ4選
■当時はいまほどまでに価格が高騰していないモデルが多かった
■輸入車やスーパーカーは維持費などが壁となってしまうのが難点だ
買っておけばよかったといまでも悔いているモデル
「後悔先に立たず」
これってクルマ好きのためにある言葉ではありませんかね。「あのとき、あのクルマを手に入れておけばオレのクルマライフはもっとこう、なんか違っていたかもしれん」と、そんな思いは誰しもあるのではないでしょうか。かくいう筆者も買ったクルマについての後悔は一度たりとてないものの、手に入れなかったクルマの数々はいまも夢枕に立つことしばしば。ほんと「命短し乗りなよクルマ!」とはよくいったもの。
そこで、あくまで筆者の趣味ですが、買っておけばよかったと悔しさで歯噛みした奥歯が砕けそうなクルマをいくつかご紹介しましょう。
デ・トマソ・パンテーラ
輸入車専門誌の編集部で薫陶を受けた筆者としては、生意気にも「パンテーラ? 雑魚か(笑)」みたいな時期がありました。設計やスペックといった耳学問だけでの判断は若さゆえの大いなる過ちと、いまじゃ自分を許してますけどね。そんな先入観をガラリと変えてくれたのは、やっぱり実車の試乗にほかなりません。
企画でもって、どうしてもパンテーラGTSのグループ5仕様をブッキングしたいと探しまわったところ、友人が某アメ車ショップで買ったばかりというタマを発見。実車の第一印象は「ははぁ、オーバーフェンダーとかウイングとかやる気まんまんじゃね」などと薄ら笑い&高めの視線、いま考えると顔から火が出るくらい恥ずかしい。で、第三京浜とか首都高の横羽線とかちょいちょい走らさせてもらったところ、スタート20メートルから笑いが止まらないのなんの。
※画像は通常のデ・トマソ・パンテーラGT5S
とにかくトルクと安定性のバケモノって感じで、巷間言われたボディ剛性やらサス取り付け局部剛性とか、フォードエンジンのドロドロ感みたいなもの、全部デマでした。ボディ&シャシーが一切合切カッチリしていて、加速のリニア感など6気筒のアルピナ並みにシルキースムース! 目から鱗が200枚は落ちましたね。 で、その後はGTSでなく初期の吊るし(1974~76年あたり)を探しまわったのですが、軒並み安かった!
それもそのはず。実際のところ、安いモデルはグッサグサのカッサカサばっかりでドアを開けたくもないようなタマばっかり。というのも、当時は前述のグループ5仕様がパンテーラのデフォルトみたいになっていて、ストック状態のタマがそっち(カスタム)にまわされてしまい激減していたのかと。
あるいは、初期物は本当に賞味期間の短いモデルだったのかもしれません。いまとなっては海外のオークションでバリ物がバリバリの値段で取引されていますけど、干し柿みたいなタマをレストアしたのだとしたら、ほんと頭が下がります。
中古車はどんなときでも一期一会
アルファロメオ RZトロフェオ
こちらも、輸入車専門誌で表紙に登場させたクルマ。当時SZは、かの徳大寺大先生をして「抜群に魅力的! ただし、クルマとしての完成度はダウト」みたいな評価だったかと思いますが、筆者も同感。撮影や取材で何度も乗らせてもらったり、友人がふたりもSZを手に入れたりして、わりと身近にあったからかもしれませんが「やっぱ、どうってことねーな」くらいの印象。
しかし、その後に乗ったRZのワンメイクレース用マシン、トロフェオはまったくの別物! 屋根がなくなって、6点式ロールケージが組み込まれ、エンジンはアルファコルセだったかコンレロだったか、ファインチューンが入ったくらいでしたが、「最初からこういうのにしてくれたらよかったのに」と思うことしきり。とにかくハンドリングが異次元で、当時のPゼロと相性バッチリ! 路面追従性の高さといったら「張り付いてんの?」ってくらいのビタビタ感で、この感触は1999年にフェラーリ360モデナに乗るまでぶっちぎりでした。
※画像は通常モデルのRZ
当然、そんなタマは当時のザガートジャパンが試しに輸入した1台だけで、すぐさま売れちゃうのかと思いきや、1年近く葉山の倉庫に眠っていたようです。表紙撮影からしばらくの後、ご担当の方としゃべくっていた折「あんなの(RZ)売れるわけねーべ」となり、意外に思って理由を問うと「ナンバーは無理くり付けても、所詮はレーシングカーだからサービスが難しい」とのこと。
「どっかに、心の広いお金持ちいたら紹介してよ」と聞くにおよんで、筆者は寝ずに3日ほど考えた挙句、「964RSとの2台持ちは経済的に無理。とはいえRS売ってまで手に入れたいかというと???」なんとも情けない&女々しい結論に。
じつは、いまでも葉山とか逗子のあたりを走るたび「ああ、ひょっとしたらこの道をRZで走っていたのかも」などと目頭が熱くなるという未練タラタラな不始末です。
ポルシェ959
大それたことを、そう思われても致し方ありません。なにしろ、自分でも大それ過ぎたといまでも反省と後悔をしております。だいたい、欲しいクルマが出てくるとそれを深く掘り下げて研究するのが筆者のプロトコル。これまで手に入れたクルマも、事前に専門書やらヘインズのサービスマニュアル、はたまたディーラーの整備要領なんかもゲットして勉強していました。で、いろいろ知識を積み上げていくにつれ、欲しい度合いもアップしていき、ついにゲットした暁の満足度たるや何物にも代えがたい喜びであること、ご承知のとおりです。
もっとも、959は「欲しい」と思って勉強したわけではありません。なにしろ、スーパーカーですから、欲しいどころか「憧れリスト」にすら載せるのを憚るような尊い存在。じつは、当時在籍していた編集部で959の別冊を刊行することになり、筆者はそれこそバイザッハでの取材やら、開発責任者のボット教授のご自宅までお邪魔するなどポルシェ大学959学部の研究生かのような境遇に恵まれたのでした。
無論、別冊発売時だって959は高嶺の花、すぐさま欲しくなったわけでもありません。ただ、脳内での存在感はマシマシ、当時のディーラーにいらした959マイスター(959の整備情報などを本国で仕込んできた方)とおしゃべりする時間がこの上なく幸せな時間となっていました。
その後、十年ほど経過したころでしょうか。お世話になっていたポルシェのチューニングショップから連絡があり、並行モノ、距離不明(メーター交換の跡あり)、しかも車体横に軽微な修復歴あり(いわゆる事故車)という959の売り物があるとのこと。値段は500万円でいいと聞くと矢も楯もたまらず秒で飛んで行きました。
で、修復歴は予想よりはるかにマシで、線キズ直したくらい。インテリアのレザーだってヒビすらなく、チューニングショップだけに圧縮からなにからチェック済みで「問題なし」の太鼓判。ですが、ひとつだけ許せなかったのはリヤバンパー、マフラー上の焼けでして、これの修理は件のマイスター曰く「ケブラーを含んだ特殊素材なので、剥離や再塗装は無意味」ついては塗装済みのリヤパネル一式を本国から取り寄せるしか術はないとのこと。
また、タイヤの交換が必要だったのですが、純正の空気圧センサー付きホイールはセンターロック機構なので、なにかと手間も多いし面倒。「911ターボのハブ、キャリパーにしたい」とマイスターに相談したところ「物理的には可能だが、959の価値は損なわれる」と至極ごもっともなお返事。
しかも、パネルやキャリパーの値段は余裕で500万円以上になったので、あえなく、というか当然のように筆者は撃沈。後日、マイスターのところに諦めた旨を伝えにいったところ「42万マルクという値段(およそ3600万円)ですから、それだけのパーツが積み重なってるんですよ。クヨクヨしなさんな」と肩を叩かれたというね。
とはいえ、人生で1回くらいは大それたことやってみたかったなぁ、といまでも胸がうずくこともあるのです。
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みんなのコメント
パンテーラGT5も昔の雑誌で、スタイルやエンジンフィーリングは絶賛していたがOHVエンジンなので…、とかいう評価が横行していた。今から思うに、どこかからの聞きかじりで記事を書いただけで、実際には誰も運転しなかったのだろうと思う。