進化した分身、ロールス・ロイス「ブラックバッジ カリナン シリーズII」
ロールス・ロイスは「カリナン シリーズII」の発表と同時に「ブラックバッジ」を発表しました。ブラックバッジはロールス・ロイスの体験をより直感的に解釈することを求め、自己表現や個性、大胆さを大事にする新しい顧客層に支持されてきました。このブラックバッジが同時発表されたことは、そのようなカスタマーの心を一気に掴むロールス・ロイスらしい、じつに用意周到な作戦です。このブラックバッジモデルの特徴を見ていきます。
ロールス・ロイス新型「カリナン シリーズII」が登場! 超高級SUVの進化したポイントを解説します
歴史上初めて取り入れられたエクステリアの仕上げ
ロールス・ロイス「ブラックバッジ カリナン シリーズII」の特徴は、インパクトのあるフロントエンドの存在感である。おもな差別化要因は、エアインテーク下部の幾何学的なパーツであろう。このクルマのダイナミックなキャラクターをより強調するために、幅を広げたベインを組み込んでいる。その上には、シリーズIIで初めてライトアップされた、ブランドを象徴するパンテオングリルがある。ブラックバッジの場合、グリルはシリーズの特徴であるブラックで仕上げられるが、シルバーの「ホライゾンライン」がクルマの縦型デイタイムランニングライトと相まって、広がりと立体感を生み出している。クルマを完全に暗闇に包み込みたいカスタマーのために、オールブラック仕上げも用意されている。
スピリット オブ エクスタシーのマスコットを含む、エクステリアのボディの細部とブライトワークもすべてブラックで仕上げられている。ブラックバッジの歴史上初めて、この仕上げがウインドウサラウンドやドアスピアからドアハンドルにまで及んでいる。
このドアハンドルの仕上げには、まずハンドル全体を軽い研磨剤で磨き、耐久性のある下塗り用の「基礎」を作り、その上にブラックの塗料を4度塗りする。硬化後、これらの部品は、ブラックバッジ カリナン シリーズIIの豊かで光沢のあるコーチワークにマッチするように、ひとつひとつ磨かれる。
リアテールゲート、バンパーアクセント、エキゾーストなど、その他のダーク化されたパーツは、ミラーブラック効果を得るために特定のクローム電解液で処理される。これは従来のクロームメッキ工程に導入され、ステンレス鋼の下地に共析されることで、仕上げを黒くする。最終的な厚さはわずか1マイクロメートルで、これは人間の髪の毛の100分の1ほどの幅に相当する。これらのパーツは、クルマに装着される前に、手作業で丁寧に研磨され、ミラーブラックのクロームが仕上がる。
ブラックバッジ カリナン シリーズIIは、エクステリアカラーをボディ下部のすべてに拡大することができ、さらにロアシル、バランサー、ロアフロントバンパーもブラックバッジ カリナン シリーズIIだけの特別な処理が施される。これにより視覚的に車高が下がることで、よりダイナミックな印象を生み出し、その一体的なフォルムをさらに際立たせている。
エクステリアはブラックバッジモデルでは初となる23インチのホイールが装着される。遠くから見ると、グロスブラックとシルバーで仕上げられた5本スポークのように見えるが、実際は、10本スポークの仕様である。この視覚効果は、ポリッシュ仕上げと塗装仕上げをホイールの凹んだネガティブな表面の間に相互に織り交ぜたことから生まれる。また、このデザインにより、ディスクブレーキキャリパーをはっきりと見せることができる。
破壊的なインテリア仕上げ
先進的でテクニカルな素材は、ブラックバッジ ロールス・ロイスの特徴となっている。ブラックバッジ カリナン シリーズIIでも、このテーマは継続されている。初代ブラックバッジ カリナンのテクニカルカーボン仕上げは、顧客から高い評価を得た。ネイキッド織りのカーボンファイバー仕上げは、幾何学的な形状の正確な繰り返しパターンを作り出し、立体的に見える効果を生み出した。テクニカルカーボンは、ラッカーを6度塗りした後、72時間かけて硬化させ、23枚のすべてが手作業で鏡面仕上げされる。この工程には合計21日間を要する。
独立したリアシートをオーダーした場合、インフィニティ(∞)シンボルとして知られるブラックバッジファミリーのモチーフを、リアリクライニングシートを区切り、シャンパンクーラーを隠す「ウォーターフォール」エリアに入れることができる。この繊細なアルミニウムパーツは、微妙に着色された6層のラッカーの3層目と4層目の間に配置され、シンボルがテクニカルカーボンの上に浮かんでいるような錯覚を生み出している。ラウンジシートには、インフィニティシンボルが刺繍されている。
メタルパーツもダークな雰囲気
シートは、見事な新しいデュアリティ ツイル テキスタイルで注文することができる。このテキスタイルは竹から作られた新しいレーヨン生地で、ヘンリー・ロイス卿の冬の別荘ヴィラ・ミモザに隣接するコート・ダジュールのル・ジャルダン・デ・メディテラネにある広大な竹林にインスパイアされている。ツイル織りのテキスタイルには、アーティスティックな「双体」するグラフィックが刺繍されている。このデザインは、ロイス創設者のイニシャルである「R」を抽象的に解釈したもので、セーリングヨットに見られるロープが織りなすラインを彷彿とさせる。
複雑な刺繍が施されたテキスタイルのデュアリティ ツイルには、220万針、11マイル(約17.7km)の糸が使われている。この極上の素材は、大胆なビスポークカラーでさらにドラマチックに仕上げることができ、ブラックバッジの顧客のために、この注目すべき新しい仕上げをさらに強化する。
また、カリナンでは、プレースド・パーフォレーションシートをオーダーすることもできる。これはシートレザーに0.8mmと1.2mmのパーフォレーションを最大10万7000個も施し、夕暮れ時にグッドウッドにあるロールス・ロイスの本拠地上空で絶え間なく変化する雲の形と影からインスピレーションを得た抽象的なパターンを作り出している。
ブラックバッジのダークな雰囲気は、インテリアのメタルパーツにも見ることができる。ダッシュボードとリアキャビンの吹き出し口の周囲は、物理的蒸着法という、時間が経っても、繰り返し使用しても変色や変質しない金属の着色方法を用いてダークに仕上げられている。
ブラックバッジモデルの破壊的なデザイン原理は、カリナン シリーズIIのユニークなクロックキャビネットにも適用されている。このはめ込み式のガラス戸には、アナログ時計とライトアップされたスピリット オブ エクスタシーの彫像の両方を見ることができる。スピリット オブ エクスタシーは無垢のステンレススチール製で、ブラックバッジのカリナン シリーズIIの船首に鎮座する姿を彷彿とさせるブラックで表現されている。クロックキャビネットの両脇には、カリナンの新しいイルミネーションフェイシアが配され、縦長のシティスケープパターンの中に、幽玄な光を放つインフィニティシンボルが描かれている。
実証されたエンジニアリング
ブラックバッジ カリナンの最初のモデルにおいて、顧客はブラックバッジモデルが単なる美的な改良だけにとどまらないことを要望した。発売から5年、ロールス・ロイスのエンジニアが2019年の車両のために行った変更には、ボディのロールを緩和する大容量のエアサスペンションの採用や、さらなるエンジンのパワーアップなどが含まれ、この大胆なクルマの魅力に欠かせないものとなった。したがって、ブラックバッジ カリナン シリーズIIでも、最高出力600ps、最大トルク900Nmを発生するツインターボ6.75L V12エンジンを採用し、その考えを受け継いでいる。
追加されたパワーを引き出すために、トランスミッションとスロットルは、より素早い加速のために改良された。ZF製8速ギアボックスとフロントとリアの両アクスルが連動し、スロットルとステアリングの入力に応じてドライバーへのフィードバックレベルを調整する。
ギアセレクターの「Low」ボタンを押すと、ブラックバッジのテクノロジーがさらに解放される。これを作動させると、特注のブラックバッジ エキゾーストシステムの音色と音量が変化し、通常のアイドリングよりわずかに700rpm高い1700rpmから900Nmのトルクをすべて利用できるようになる。さらにローモードでは、スロットルを90%まで踏み込むと、ギアシフトの速度が50%上がる。ブラックバッジ カリナン シリーズIIのポテンシャルをフルに活かすため、ブレーキペダルのトラベル量が短縮され、ドライバーの入力により即座に反応するようになった。
AMWノミカタ
今回、通常のカリナン シリーズIIとブラックバッジモデルが同時に発表されたのは大きな驚きであった。それだけこのブラックバッジを待ちわびている顧客が多いのであろう。そしてコスメティックな変更だけで特別モデルが作られることが多い中、パフォーマンスの部分にも手を入れている点もさすがといえる。
さらに、スペクターというフルエレクトリックモデルでロールス・ロイスの未来を見せながら、片や伝統の6.75Lエンジンを躊躇なく使い続ける。世間の風潮などどこ吹く風である。顧客はクルマを買いに来ているのではなくロールス・ロイスを買いに来ている。それを知っているブランドはじつに堂々と潔い。
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