かつて日本ではセダンが市場の中心だったが、現在ではコンパクトカー、ミニバンに主役の座を譲り衰退の一途を辿っている。そんななか、トヨタのミドルセダン、カムリが2023年12月をもって国内販売終了となる。そのいっぽうで、9月20日(発売は2024年春)にアコードの国内販売が復活、そして11月にはクラウンセダンが発売予定になるなど、セダン市場が盛り上がっていくなかでのカムリの国内販売終了は残念。今回はカムリにスポットを当ててみた。
文/ベストカーWeb編集部、写真/ベストカーWeb編集部、トヨタ、日産、ホンダ
アコードは復活したのになぜカムリは国内販売終了? 代わりは11月発表のクラウンセダンか!?
■セダン復活の兆しありなのにカムリだけ!?
2017年7月登場の10代目(現行型)カムリ。北米では好調な売れ行きを見せており、今後も販売が継続される。写真はGレザーパッケージ(2WD)
9月20日、ホンダはアコードセダンの国内販売復活を発表した。12月から先行予約を開始し、発売は2024年春を予定している。
ホンダはアコードを2023年1月末に国内販売終了し、約10カ月ぶりの国内販売復帰となる。
セダンモデルとしては、すでにホンダはレジェンドやインサイトを2022年末に販売終了しており、オデッセイの再販売を含めホンダファンにとっては嬉しいニュースだろう。
2023年9月21日に発表されたホンダコード。先行予約は12月から始まり、2024年春に発売予定
一方、トヨタは2023年4月、43年にわたって販売されてきた名門カムリの国内販売を、2023年12月をもって終了すると発表した。
余談かもしれないが、車名のカムリは日本語の冠から来ているが、国内市場で、日本語の車名がトヨタミライだけになるというのも寂しい。
国内販売終了の裏には、FFベースのミドルセダンというカムリの役割をクラウンクロスオーバーやクラウンセダン、プリウスで充分補完できるという考えがあるのだろう。
2022年9月に発売されたクラウンクロスオーバー(FF)
カムリの価格帯はエントリーモデルが349万5000円、最上級のWSレザーパッケージのE-fourが468万2000円だ。価格帯が近いのは、クラウンクロスオーバーのエントリーモデル430万円や新型プリウスPHEVの460万円。これらは、カムリの中上級グレードの価格帯とほぼ同じ。
ただカムリは、国内での販売が終了になるが海外では販売が継続される。カムリは、北米や中国ではとても人気があり、2022年は日本を含むグローバルで約60万台も売れているという。北米では22年連続でミドルサイズセダンのベストセラーとなっている。
しかし、北米、中国で人気の反面、日本国内におけるカムリの2022年の登録台数は5750台と、グローバル販売のたった1%しかない。
トヨタは、クラウンクロスオーバー、アルファード&ヴェルファイアを積極的にグローバル展開していくこともあり、たった1%ではやっていけない、という懐事情もあったのだろう。
これでは、国内販売終了もやむなし、といったところだが、やはり国内=セダン不人気の構図は仕方ないのか。
せっかく2021年のマイナーチェンジで、アグレッシブな外観となり、これからイケるかも、という感じがしていたのに残念でならない。
2021年2月のマイナーチェンジで、フロントバンパーやヘッドランプ、リアコンビランプの加飾、フロントロアグリル、アルミホイールなどのデザインを変更。写真はスポーティなWSレザーパッケージ
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■カムリの魅力はどこにある? 日本復活はないのか?
1980年1月登場の初代ではセダン版セリカという扱いで「セリカカムリ」という車名だった
50代以上のおじさん世代にとって、カムリはどんな存在だったのだろうか、43年10代にわたるカムリの歴史を振り返ってみよう。
カムリの初代モデルは、セリカカムリの車名が表すように、セリカの兄弟車となるFRのスポーツセダンとして1980年に登場した。
初代の販売期間は短く、1982年に2代目に移行。初代はビスタ店での販売だったが、「広いセダン」を売りにしたFFになった2代目はカローラ店での専売となり、ビスタ店で販売される初代ビスタが誕生。
1986年8月登場の3代目カムリ。豪華な装いでFFのマークIIとも呼ばれ評価も高かった
3代目は1986年に登場。質素だった2代目に対し「FFのマークII」と呼ばれるほどゴージャスなクルマとなり、ビスタにはハードトップも加わった。さらにカムリには2代目でV6エンジンを搭載するプロミネントが追加され、アメリカでの生産も始まった。
1990年7月登場の4代目カムリ。写真はカムリプロミネント
1990年登場の4代目から、カムリの立ち位置は微妙に変わり始め、日本向けは3代目のキープコンセプトながら、北米向けはボディサイズが拡大され、日本においてはセプターの車名で販売されたのだ。
5代目は北米カムリとの部品の共通化率を高めた3ナンバーモデルとして計画されていたがバブル経済崩壊の影響から変更され、5ナンバーサイズとなった。
1994年7月登場の5代目カムリ
セプターは1996年に後継車となるカムリグラシアに移行、これが実質6代目カムリとなる。グラシア以降カムリは現在のポジションに落ち着いた。
2017年7月登場の10代目カムリ
2017年7月登場の現行型10代目は全体的にアグレッシブなモデルとなり、スポーティグレードも登場。
北米では2023年7月に2024年モデルが発表され、2.5Lガソリン、2.5Lハイブリッド、3.5L、V6(TRD)という3種類のパワートレインを用意。
インテリアは4.2インチまたは7インチのTFTメーターのほか、マルチインフォメーションディスプレイは7インチもしくは9インチとなり、安全装備についてもダイナミックレーダークルーズコントロールやレーンディパーチャーアラートなどの機能を備えた予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス 2.5+」を標準装備。
FFだから後席は広いし、快適そのもの。個人タクシーのカムリに乗ったことがあるが、先代クラウンセダンより広く感じた。
10代目カムリWSレザーパッケージのインテリア
5代目あたりから北米でベストセラーセダンのイメージがあったが日本ではさっぱりという印象があった(アコードもそう)が、それは最後まで拭えなかった。
トヨタディーラーの営業マンにカムリ終売について聞いてみると「ミドルサイズのセダンが欲しいという方は多くいらっしゃいます。ただSUVが人気となっていますのでセダンの人気が下がっているのは事実です。クラウンクロスオーバーもありますし、今後、SUVのクラウンスポーツ、クラウンセダンが発売予定となっていますので、そちらをおススメしています」。
FFなので後席スペースは広々としているカムリのインテリア
■カムリの代わりは11月発表予定のクラウンセダン!?
2023年5月27日、富士スピードウェイで初披露された新型クラウンセダン(最終プロト)
カムリの代わりになるのは、2023年11月に発表予定の新型クラウンセダンだろう。FFのカムリと違って、新型クラウンセダンはFRとなるのが濃厚。
2023年5月27日、富士スピードウェイにて行われたスーパー耐久レースで新型クラウンセダンのプロトタイプが公開されたのを覚えている人も多いはず。
パワートレインはFCEVとHEVの2仕様が用意され、今回の展示は水素を充填し電気モーターで駆動するFCEV仕様。
リアCピラーは寝かせられており、ハッチバックに近いフォルム。リアタイヤ周りは盛り上がっているようなデザインで、力強さを感じるデザイン
ボディサイズはMIRAIよりホイールベースを80mm伸ばして全長は5030mm、(これまでのクラウンセダンには全幅1800mmまでという縛りがあったが)全幅1890mm、全高1470mm、ホイールベース3000mm。
堂々としたフォルムは、広大でゆったりした室内空間の快適性と高級車らしい存在感のあるデザインで、セダンらしいスマートな佇まいをすべて併せ持つ。
5名乗りで、後席はゆったり。レクサスLMに用意される「リアコンフォートモード」(後席の乗り心地や快適性を優先した足回り制御)も用意されるという
今後、アコード、クラウンセダンの復活で、セダンが見直され、販売が上向くことを望む。実際、廃盤となったプレミオの中古車価格も300万円近くまで高騰している。
SUVが出尽くした感のある今、セダンが見直される日はそう遠くないはず。そうなったらカムリも国内再販売されるかもしれない。
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