早い人だと納車がそろそろ始まってきたランドクルーザー70。買えないという声も多いが、さっそく編集部がオフロードで試乗してきた。しかも乗り味が2004年の再販と大きく変わっているという。4WDの専門家が試してきたぞ。
文:河村大/写真:森山良雄
取材協力:さなげアドベンチャーフィールド
ランクル70緊急試乗!! オフロード志向は健在も乗り味が優しいぞ……令和のナナマルは最高の完成度だ
■オフロードが本拠地というブレない姿勢
ランクル70の本拠地はあくまでオフロード。そこはブレていないぞ
2023年11月末の発売と同時に抽選等の申し込みが始まると、瞬く間に入手困難の人気車として認知されるようになったランドクルーザー70。Web上にも悲喜こもごものコメントが溢れているが、我々はひと足早くオフロードで試乗する機会を得たので、まずは新型の乗り味をご報告したい。
試乗車はAXグレードの白。といっても今回の再再販では1車型1グレード3色の設定しかなく、エンジンもプラド譲りの2.8L直4ディーゼルエンジンのみという設定だ。
さて。試乗は西日本で随一のアミューズメント性を誇るオフロードコース「さなげアドベンチャーフィールド」で行った。アップダウンが激しいので走り出す前にトランスファーレバーをLに入れてしまう。
レバーにはH2、H4、N、L4と記されているが、これはそれぞれハイレンジの2WDと4WD、ニュートラル、ローレンジの4WDを示している。この複雑なギア構造を分かり易く例えるなら、前に2段×後ろに6段=合計12段の変速ギアを持つ自転車と同じ。
古典的な副変速機レバー。ボタンにしないことにも意味がある
この車は6速ATなので、普段使う6速(ハイレンジ)の他に、その全てが一律にローギアードされた6速(ローレンジ)があると考えてもらえばいい。全部で12速の前進ギアがあるわけだ。
ここで注意すべきは4WDの使い方だ。ナナマルはジムニー同様、前後直結のシンプルな4WDなので、路面ミューの高いオンロードではハンドルを切った際に「タイトコーナーブレーキ現象」が発生してしまう。
そのため、通常はリア駆動の2WDのみを使って走る。ただし、雪道やオフロードではタイヤの強制スリップにより、タイトコーナーブレーキ現象が問題にならなくなるため、4WDで力強く走ることが可能になる。
逆に言うとジムニーやラングラーなど、他の本格四輪駆動車と同じく、ミューの高いアスファルト路面では2WDでしか走れませんよ、ということ。この辺りは後に発表を控えているランドクルーザー250(フルタイム4WD)とは決定的に違うところなので、購入を検討する前に知識として知っておいて欲しい。
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■リアリーフがマイルドになった
このリアサスの可動域を見よ!! 世界の悪路を視野に入れて開発されているぞ
話を元に戻そう。今回のは登り下りの角度がキツイ路面だったので、基本的に極低速のローレンジに入れて試乗を行った。
走り出すと、車内の揺れがこれまでのナナマルと随分違うことに気が付く。リアのリーフリジッドサスペンションが想像以上にしなやかで凹凸路面へのアタリが柔らかい。
元々バン登録だったナナマルは荷室に重い荷物を積むことを前提に造られていたが、今回ワゴン登録とするにあたり、リアスプリングのバネレートや形をパッセンジャー優先で煮詰めてきたのだ。これが…凹凸の激しいオフロードにほどよくマッチしていた。なお、フロントはコイルリジッドのサスペンションだ。
だが、前後とも空荷のままよく伸びよく縮み、乗り味に比例して土や砂利の路面を柔らかくしなやかにトレースしてくれる。また、前後デフのギア比がプラドよりローギアード化されたことにより、より低い速度で走れるようにもなっていた。
■1GDエンジンの豊富なトルク
超圧倒的なトルクでグイグイ進む
エンジンも扱いやすい。最大トルク500N・mはナナマル史上最高の値だが、これを1600rpmという低回転域から幅広く発生してくれるため、見上げるようなヒルクライムでも2.3トンからなる車体を軽々と運び上げてくれた。
そして凹凸の激しい岩場でもクリープ現象プラスαのアクセルワークで十分トルクフルに、安全に走り抜けてくれた。
新たに装備されたアクティブトラクションコントロール の効きもよく、ほとんどの難所を電子的なブレーキ制御だけで難なく走り抜けてくれたが、激しい対角線スタックが連続するような極悪セクションでは伝家の宝刀「前後デフロック」が強力無比なサポートをしてくれた。
オンロードでの快適性も担保されているぞ
他にもダウンヒルアシストコントロール、ヒルアシストコントロールなど、悪路で役に立つ機能が沢山あるが、このあたりは動画をご覧いただけたらと思う。
正直、ナナマルに多くの快適性を望んでいなかったが、凹凸路をこれだけしなやかに、トルクフルに走れる総合力は歴代ナナマル随一と言っていいと思う。
そしてオンロードこそ試乗していないが、ファミリーカーとして充分に通用する素養も感じた。この車が可能な限り多くの人に行き渡ってくれることを願うばかりだ。
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