連日30度以上の異常な暑さも過ぎ去り、26度前後の「いつもの夏」が戻ってきたドイツ。とはいえ、8月も後半に入った今、日照時間は日に日に短くなってきており、夏の終わりがすぐそこまで迫ってきているのを実感します。
すっかり過ごしやすくなったベルリンで、一台の端正なスタイリングのカブリオレに遭遇しました。日本へは結局輸入されずに終わってしまった、フォード・フォーカス・クーペ・カブリオレです。
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ラリーのイメージが強いフォーカス、ヨーロッパでは?
8月16日から19日までは、第35回ADACラリー・ドイチュラントが行われていたドイツ。フォードは今でもラリー参戦に積極的ですし、「フィエスタ」で参戦している現在でも、「フォーカス」に対してWRCのイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。しかし、歴史をたどってみると、フォーカスWRCがデビューしたのは1999年。2010年までの11年間に渡って活躍したのち、フィエスタRS WRCにスイッチと、すでにバトンタッチから10年近くの年月が経っているのですね。
ヨーロッパでも、WRCのイメージを受け継いだホットなフォーカスは多く走っているのですが、そこはヨーロッパ・フォードのお膝元。街中で見かけるのは、一般的な3ドア・5ドアのハッチバック、セダン、ステーションワゴンのモデルが大半です。フォーカスは2018年4月に4代目にバトンタッチしたばかりで、4代目を見かけることはまだ少ないですが、2011年から2018年まで生産されていた3代目モデルは、レンタカーも含めて本当に数多く走っています。2012年上半期には「単一車種として世界で一番売れたクルマ」となったフォーカスの面目躍如といったところでしょう。
フォーカス・クーペ・カブリオレはわずか4年間のみの生産
今回撮影したフォーカス・クーペ・カブリオレは、3代目モデルよりもさらに前、2005年から2010年までに生産された2代目モデルがベースになっています。フォーカス・クーペ・カブリオレが発表されたのは2006年のジュネーブショーのことでした。2006年半ばから生産が開始され、2010年7月には生産中止になるという、比較的短命のモデルとなっています。
フォーカス・クーペ・カブリオレをデザイン、そして共同開発したのは、イタリアの名門カロッツェリア、ピニンファリーナです。ボディサイドのエンブレムも誇らしげですね。生産もピニンファリーナで行われ、トリノ郊外にあるグルリアス工場とバイロ工場で組み立てられました。定員は4名で、スチール製の電動格納式ハードトップはボタン一つで29秒以内に開閉でき、クローズ状態のトランク容量は500リッター以上と、十分な実用性も兼ね備えています。
エンジンは1.6リッター(100ps)と2リッター(145ps)のデュラテック・ガソリンエンジンと、2リッター(136ps)のディーゼルエンジンの3種類が用意されていました。スポーティなイメージとは真逆の、クリーンで端正なスタイリングのフォーカス・クーペ・カブリオレは、知名度こそ低いものの、プジョー306カブリオレと並んで「平凡なハッチバックを魅力的なカブリオレに変身させた」ピニンファリーナの傑作と言えるのではないでしょうか。
フォード、北米からセダン撤退の衝撃
フォードは日本において、フォーカスやフィエスタの投入で、2010年には年間約2500台までに落ち込んでいた販売台数を2015年には4856台まで回復させていましたが、2016年には突如日本市場からの撤退を発表。マスタングの右ハンドル車の日本導入まで計画されていましたが、全て白紙に戻されてしまいました。さらに2018年4月末には、北米市場において、マスタングとフォーカス・アクティブ(フォーカスのクロスオーバーSUVタイプ)の2車種のみを残して、セダンやハッチバックの販売から撤退し、SUVやピックアップトラックなどの生産に専念、という衝撃の発表がありました。
北米とヨーロッパでは状況が異なりますが、ヨーロッパ・フォードが開発するクルマにも影響を与えそうな「フォード、北米からのセダン撤退」。今後もフォードからフォーカス・クーペ・カブリオレのようなエレガントなクルマが登場することはあるのでしょうか。フォードの今後の動向から目が離せません。
[ライター・カメラ/守屋健]
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