発売したばかりのスーパーSUV=SSUV・ウルスのセールスが絶好調というランボルギーニ。最新仕立てのファクトリー“リネア・ウルス”では、SSUVのアッセンブリーが2交代制の日産23台規模で、急ピッチに行われていた。一方、以前からのファクトリーでは、早くもアヴェンタドールの最終進化系SVJの生産が始まっていた。
そのほか、VWアウディグループ内でのいろんなウワサも絶えないが、いずれにしてもウルスの成功がこのスーパーカーブランドの未来を決すると言って過言ではない。ウルスのデリバリーが本格化してからが本当の勝負。果たしてその人気はいつまで続くのか。ランボルギーニとしても、決して楽観視はしていないはず。
最後かもしれないランボ製自然吸気12気筒エンジンは精緻で豪快だった──エストリル・サーキットでアヴェンタドールSVJを堪能する
そんなタイミングで、トラディショナル(と、ランボルギーニの首脳は表現する)な2シーターミドシップのスーパーカーとはまるで毛色の異なる、要するに現代のランボルギーニイメージとは、SUVと同様にかけ離れたフロントエンジンGT(グラントゥーリズモ)の生誕50周年を祝うオーナーツアーイベントを盛大に開くというから、“間もなくSUVに続く第4のモデル登場か”と、世界のランボファンが色めき立ったのも無理はなかった。
実際、第4のモデルについて検討している事実を、サンタガータ・ボロネーゼのボードメンバーは決して否定しない。CEOのステファノ・ドメニカリは、言葉を慎重に選びつつ、検討する余地はもちろんあって、将来にはいろんな選択肢があることをことあるごとに示唆している。
果たして第4のモデルは登場するのかどうか。登場するとしたら、それは4シーター4ドアなのか、2 2の2ドアGTか、はたまたミドシップ4シーターか、興味は尽きないが、ミウラ以来2年ぶりとなるオーナー参加型50周年モデルのドライブツアーイベントに参加した。
2018年に50周年を迎えたのは、イスレロとエスパーダの両400GTである。イスレロは2 2、エスパーダはフル4シーターという違いこそあれ、いずれも初代350GTの血を色濃く引き継ぐ2ドアパッケージ(エスパーダはハッチゲート付き)のグランツーリズモだ。
なかでもエスパーダは1968年にデビューを飾ったのち、その実用性の高さから、都合10年にわたって生産され、1200台以上の販売を記録した。当時のランボルギーニ社としては大ヒット作といっていい。シリーズ1、シリーズ2、シリーズ3と、そのモデルラインは大きく3つに分けることもできるが、基本設計を変えることなく販売された。
それはとりもなおさず、2ドアながらも幅広ボディにゆったりとしたフル4シーター、そして大きくて使い易いラゲッジルームという、実用的なGTクルーザーとしてのユーティリティの高さが、当時の上流階級に評価されたからであった。
一方のイスレロはというと、ミウラやカウンタックなどスター揃いのクラシックランボチームにあって、これまでは比較的、地味な扱いを受けてきたモデルだ。
ベルトーネやトゥーリングといった有名カロッツェリアではなく、無名のデザインハウスがスタイリングを担当したから、かもしれない。前後期あわせてもわずかに225台のみという生産台数の少なさと、そのユニークなスタイル(特にリアバンバーの位置!)が今になってクラシックカー市場では高く評価されるようになり、エスパーダとともに数年前に比べて2~3倍の価格でディールされている。ミントコンディションなら3000万円以上のプライスタグやハンマープライスも珍しくはなくなった。
50周年ツアーは、グランツーリズモ・ベルリネッタの祝祭にふさわしく、イタリアの“ロマンチック”を堪能する仕立てになっていた。
ペルージアを出発し、いったんオルヴィエートやアッシージあたりを回遊した後、トスカーナのカントリーサイドを抜け、ボローニャからサンタガータ・ボロネーゼへと里帰りするという全5日(ドライブは4日間)のプログラムで行われた、正にグランツアー。ランボルギーニ社が所有するイスレロとエスパーダS3をあわせて21台が参加した。
筆者ももちろん、ポロストリコで十分に整備されたイスレロとエスパーダをドライブ。ヨーロッパ全域から集まったオーナーたちに混じって、グランツアーを堪能することに。
4日間、イスレロとエスパーダはもとより、最新のウルスやアヴェンタドール、ウラカンスパイダーなども比較試乗したが、改めて感心したのが、いずれもGTとして申し分のないキャラを持っていたということ。
なかでもイスレロとエスパーダは、コンセプトのまるで異なる2台にも関わらず、結局のところは秀逸なグランツーリズモであるという褒め言葉に落ち着くあたり、当時のランボルギーニがいかにGTを理解していたかが分かる。
イスレロはちょっぴりクラッチが重めだけれどもシャープなハンドリングの持ち主で、常にクルマとの一体感が楽しめた。狭いワインディングロードも、ハンドルを切ってからのノーズの動きにドライバーが慣れさえすれば、ひらりひらりと器用にこなす。フータ峠をイスレロで駆け上がれば、ミドシップモデルとはまた違った楽しさがあった。
対してエスパーダのほうはというと、クルーザーのようにジェントルな操舵感覚があって、乗り心地も柔らかで優しい。荒れた路面でも凸凹を上手にいなし、気持ちよく進んでいける。それでいて、鈍重かというとそうではなく、イスレロほどじゃないにしても、ワインディングロードも楽しめた。
いずれを駆っても、2名分の荷物(筆者はでっかいトランクだった)を飲み込んで目的地まで快適に過ごせるというのだから、GTカーとして現代にも通用すると言っていい。
そしてなにより、6つのキャブレターが空気を吸い込んで、精密機械のようなV12 DOHCエンジンをキーンと回し、濃厚な音(とガス)を吐き出しながら豊かなトルクを稼ぐという、その感触がたまらない。同時代のフェラーリよりもそのライドフィールは味わい深いと思う。
その昔、フエルッチョがそうであることを望んだ(彼はGTスポーツ界のロールスロイスを造りたかったのだ)ように、本格的な2ドアFRのGTもランボルギーニにはお似合いだ。
イベントの打ち上げで、マウリツィオ(レッジャーニ、開発部門のトップ)とミッチャ(ボルカート、チーフデザイナー)にそういうと、2人ともニコニコと笑って頷いていた。
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