まさにソリオとイグニスのいいとこ取り!
ガレージに収まる様子を想像しただけでも、ふふふっ……と気分が上がるようなモデルがスズキからまた1台登場した。それは小型クロスオーバーモデルのクロスビー。そう、東京モーターショーで注目を集めたモデルだ。“また一台”と記したのは、この顔や佇まいを見て“ピンっ”ときた方なら想像がつくかもしれないけれど、“遊べる軽!”でお馴染みのハスラーを連想する方も少なくないでしょう。
「今までにない小型車を作りたい」開発責任者がスズキ・クロスビーに込めた思いを直撃
クロスビーについて「ハスラーのようなユニークさを持ち、なおかつ、お子さんが大きくなったときの受け皿(サイズ)にもなれば」とおっしゃるのはスズキ四輪商品の製品・用品企画課の五十嵐 薫さん。もちろん「ハスラーよりも、もう少し大きいほうがいいな……」という声に応える存在でもある。
クロスビー誕生の背景にはハスラーの個性やその人気ぶりが確かにきっかけになっているとのことだが、こだわりや新しさに注目すると、単にサイズを大きくしただけではないことがわかる。現在のスズキにはワゴンモデルでスペース効率に優れたソリオやSUVのイグニスなどもあるが、クロスビーはその両車の利点=スズキの魅力を活かし、ソリオともイグニスともまた異なるパッケージと乗り味を持つクルマが誕生したことになる。
その個性と実用性の兼ね合いぶりは他ブランドの小型SUVともちょっと違って見える。それはワゴンとSUVを融合させたスタイルとそのカタチが、じつに機能面でも理にかなっているとわかると、ますますそう思えるかもしれない。
丸いライトの目じりを横に引っ張ってウインカーを納め、上下幅の薄いハニカムグリルが強調されたフロントマスク。しかしそれらのパーツがこのコンパクトモデルを頼もしく引き立たせているのはその下のシルバーのバーのようなバンパーとアンダーガーニッシュではないかと思う。
まるで童顔にさわやかさを保つ髭を上手に蓄えた男性みたい。ワイルドでタフな印象を与えてくれる。これに実用的なアクティブさを加えているのが、ワゴンの要素を取り入れたスクエア感の強いフォルム。ホイールアーチまで四角く見せているから、なおさら強調されて見える。
全長3760mmのクロスビーの室内の前後長は、ソリオと並ぶほどではないものの、全長5mクラスの前後長に匹敵するという。結果、SUVのイグニスの前席と後席の乗員間と比べて155mmも長く、なおかつ前席のヘッドクリアランスは+55mm、後席は+90mm。じつは着座位置をイグニスより前席で+60mm、後席で+50mmも上げてこのクリアランスが保てるあたり、ワゴンのDNAを感じずにはいられない。
さらにサイドウインドウからの乗員の頭部の位置も、前後席ともに100mm以上も広い。これにより後席でも大人がゆったりと座ることができ、シートはスライド調整も可能だ。雪道やラフロードでの高い走破性を狙った地上高180mmと着座位置の高さが、運転席はもちろんすべての乗員にとって、より良好な視界が得られるのもクロスビーならでは。ラゲッジのスペースも後席のシートスライド含むアレンジ次第で、床下から天井まで幅広いシーンに対応してくれそう。
運転席からの眺めはAピラーが立ち、かつステアリングの奥、左右に広がる横基調のフロントパネルのスッキリぶりも心地よい。デザインも質感もバランスよく、ちゃんと感じられるのに、必要以上に「ココ、すごいでしょ」的なアピールを各パーツがバラバラに主張してこないのがいい。小さなクルマのインパネの使い勝手と“見せ方と魅せ方”、スズキはさすがに心得ている。
かと思えば、メーター脇の光が反射するとクロスビーが現れる隠れクロスビー、全方位モニターに現れるクルマの画像がちゃんとクロスビーになっていたり……、クスッとなるキモも抑えているのがニクイ! けど嬉しい、と思うのはきっと私だけではないはず。
1リッターターボ+マイルドハイブリッドが楽しい!
そんなクロスビーのドライブフィール、今回は4WDモデルの印象をお伝えしたい。ちなみにこの4WDは通常走行では前輪により駆動力を配分し、滑りやすい路面では前後輪に最適な駆動配分を自動で行う。今回はドライ舗装路面で試乗をしたのだけれど、直進走行では足もとから天井までひと塊りになって、カッチリ感としなやかさが同居した乗り味を活かしながら動く感覚がある。
緩いカーブや交差点ではバランス良く前後のサスペンションが伸び縮みし、ハンドル操作に対してごくごく自然な姿勢と挙動を保ちながら曲がってくれる。
また、これまでも滑りやすい路面でより確かな発進が行える“グリップコントロール”や急な下り坂で車速を制御してくれる“ヒルディセントコントロール”の採用はあった。だが4WDのクロスビーには、さらにエンジントルクをよりスポーティな特性に変更可能な“スポーツモード”と、雪道やアイスバーンでのスムースな発進をサポートする“スノーモード”が追加されている。
たとえばアクセルを中速程度で一定に保った状態でスポーツモードのスイッチをオンにすると、回転数が上がるのと同時にグッと背中を押されるような力強さが得られた。ただその力がターボの加速みたいにものすごいかと言えば、それほどではない。しかしより積極的にトルクを活かした走行がしたいときに生かせるのは間違いないし、このトルクは登坂路でのよりスムースな加速も可能にしてくれるはず。
走行シーンに合わせた走りの頼もしさが1つ加わったのは間違いない。そんな走行の原動力にもなるパワートレインは、今回新たに1リッター直噴ターボエンジン+マイルドハイブリッドを搭載した6速ATが組み合わされている。これはエンジンの動力を走行状況に合わせ、発進や加速時には専用リチウムイオンバッテリーに蓄えた電力を使いモーターがエンジンをアシスト。発進後や加速時に、最長30秒間継続することができる。
ちなみにスズキは9km/h以下でエンジンが自動停止し、2つのバッテリーから電装品には電力を供給(アイドリングストップ時)し、再始動は鉛バッテリーに蓄えた電力を使用するISGのスターター機能でエンジンをかけるから非常に静かで滑らか。ちなみに走行中の電装品への電力供給も減速時に蓄えた2つのバッテリーの電力で行われるしくみになっていて、走行中のムダな発電(燃料を使った)も抑えられる。
その結果、クロスビーの燃費はJC08モードで4WDが20.6km/L、2WDは22km/L。これは1.3リッターエンジン+ハイブリッドを搭載し、最新の軽量ボディを採用しているとはいえ、車重もより軽いイグニスと比べたらやや劣る。
しかし、ボディサイズに対して十分な力強さとスムースな加速、そしてイグニスに対し収納も乗員スペースも広いパッケージがクロスビーの特徴。余談ながらスペースよりも、より力強い走りを優先させるならイグニスを選ぶ“手”もある。
安全性能はスズキの小型車として初採用となる後退時ブレーキサポートに加え、6つの先進安全機能を搭載。
さらにフロント/サイド/リヤにカメラを採用した新機能“3Dビュー”を採用した。これは発進時に周囲の安全確認を360度、俯瞰(真上からの)画像でグルリと回転させたり、室内からドライバー目線で車体を透かした映像で周囲の確認ができる“全方位モニター”も、この機能に対応するナビゲーションをメーカーオプションで選ぶと使用可能になる。駐車場や路地など左右が確認しにくいシチュエーションで自車に近づいてくる人やクルマなどを検知&警告音と表示で知らせてくれる機能に加え、安全確認の進化系機能といえそうだ。
前述したようにクロスビーは視界がよく、ボディのコンパクトさしっかりと生かせる取り回し性能も、街中でのスムースなドライブに繋がり頼もしい。1リッターターボ+マイルドハイブリッドの燃費マネージメントと、動力の効率の良さからはスズキらしく、かつ新しい走行性能が得られる。広々とした後席の乗り心地も合格点といえるだろう。
ワゴンのような実用スペースと180mmの地上高が降雪地や悪路でも活躍しそうなSUVをクロスオーバーさせたクロスビーは、さまざまなシーンやフィールドで使えそう。そんな魅力の詰まったモデルの顔とカタチがこんなに親しみやすい雰囲気を醸し出しているわけで……。
登場はハスラーの後発だけど、新しい分だけそして広くて大きい分だけ頼もしさも大きい。クロスビーをアニキって呼んでもいいですか、スズキさん!?
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