若々しくスポーティなフレーバーを追加
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
8代目フォルクスワーゲン・ゴルフの、節度ある振る舞いや操縦性、予測や運転のしやすさは期待通り。そこへ、8代目では若々しくスポーティなフレーバーが追加されている。130psの1.5L TSIでも、しっかり変化を体感できる。
全体的なゴルフのドライビング体験として、フォルクスワーゲンの狙いは成功していると思う。フォード・フォーカスと比べて、どんな違いなのかは、日を改めて比較試乗をしてみたい。
少なくとも、7代目ゴルフよりも姿勢制御は引き締められている。ステアリングの反応も、直進状態からの切り始めで、先代より明らかに機敏だ。
限られたコストを感じさせるのが、路面変化が及ぼす乗り心地。セカンダリーライドと呼ばれる部分だ。8代目ゴルフでは、このクラスのハッチバックで秀逸の衝撃吸収性を備えた、最も快適なモデルとはいえなくなってしまった。
試乗したゴルフでは、路面からのノイズや振動がしっかり車内へ伝わってきていた。サスペンション・スプリングが硬くなったことで、路面のツギハギによる揺れも、先代より少し大きく感じられるようだ。
ただし、煮詰められていないわけではない。トーションビームではなく独立サスペンションを備えた、より高いグレードの8代目ゴルフを連れ出して、難敵の英国の道を走らせてみたいところ。
燃費は印象的なほどに良い
試乗車のトランスミッションは6速MTだったが、レシオが長く、一方でエンジンのパワーは抑え気味。変速の質感もあまり冴えないものだった。これらが組み合わさり、ゴルフ1.5 TSI 130は運転が楽しいと、心からいえなかったことは事実。
ハンドリングは正確で機敏。柔軟性やレスポンスも含め、洗練されているものの、素晴らしいと呼べるほどではない。少なくともシャシーは、パワートレインが生み出すパワー以上の走りを許せるようではある。
試乗で得られた燃費は、走りが与えた印象より優れている。約50kmほどを走行した英国での高速道路では、23.0km/L前後を表示していた。空力性能を磨き込んだフォルクスワーゲンの努力が、オーナーへの見返りとして表れている。
排気量1.5Lのターボガソリン・エンジンで、ハイブリッドも付かないハッチバックボディ。23.0km/Lという燃費は、間違いなく感心できる数字だ。
英国の道で初めて試乗した、8代目フォルクスワーゲン・ゴルフ。根本的にプラットフォームは7代目と変わらないものの、効果的にモダナイズされ、明確な違いを生んでいる。欧州での人気を証明するように、英国でも支持を集めるだろう。
AUTOCARでは今後、比較テストと、より詳細を検証するロードテストを行う予定。長年選び続けられてきたゴルフが、最新版でも変わらぬ選択肢なのか、はっきり見えてくるはず。歴史と定評を持つモデルとして、ゴルフが基準とするのは、過去のゴルフだ。
翼を奪われた8代目ゴルフ
最新版のゴルフで気になる部分があったとしても、優れたクルマということに変わりはない。われわれの点数は先代より若干下がるかもしれないが、限定的だろう。
若々しくモダンな感覚を強めた一方で、ゴルフは混戦気味のハッチバック市場にひしめくライバルたちと、直接並ぶことになったように思う。そこが悩ましく思える部分。
今までのフォルクスワーゲン・ゴルフは、他のハッチバックとは違う存在として見られてきた。8代目ではその個性が薄れてしまったようだ。今を意識しすぎたことで、タイムレスで特別な雰囲気が弱まったのかもしれない。
これまではゴルフとしての翼を持ち、他のライバルとは違う位置を進んでいた。8代目ではその翼を奪われ、強力なライバルたちと同じ目線で見られてしまうような気がする。少し大げさかもしれないが。
フォルクスワーゲン・ゴルフ1.5 TSI 130ライフ(英国仕様)のスペック
価格:2万3875ポンド(315万円)
全長:4284mm
全幅:1789mm
全高:1456mm
最高速度:214km/h
0-100km/h加速:9.2秒
燃費:18.6km/L
CO2排出量:122g/km
乾燥重量:1315kg
パワートレイン:直列4気筒1498ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:130ps/5000-6000rpm
最大トルク:20.4kg-m/1400-4000rpm
ギアボックス:6速マニュアル
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みんなのコメント
こんなことを率直に書ける日本人評論家、いまだにいないね。
それどころか、ことワーゲンに対しては「さすが、見えないところにコストがかかっている!」とか、ほんと勘弁。