ホンダというメーカーは家電のソニーのように、ときおり画期的なアイデアやひらめきを持つモデルが大ヒットすることがある半面で、いいクルマ、面白いクルマで、モノはいいのに売れないということも珍しくない不思議なメーカーである。ここではそんなホンダのクルマたちをタイプ別に振り返ってみた。
文/永田恵一、写真/HONDA
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セダンはまさに迷走の歴史だがキラリと光るモデルも……
まず、ホンダから「モノはいいのに売れない」というクルマが登場し始めた時期を考えてみると、昭和の時代までホンダにいわゆる「いいクルマ」というのはあまりなかったこともあり、平成に入ってからである。
1989年9月に発売された4代目アコード2.0si
そのトップバッターは1989年登場の4代目アコード&初代アスコットだったように思う。4代目アコード&初代アスコットは、この世代からマークII三兄弟やローレルに相当し、FFミッドシップという5気筒エンジンを縦に置くアコードインスパイア&ビガーという趣味性の高いシリーズが加わったこともあり、ごくオーソドックスなミドル4ドアセダンとなった。
4代目アコード&初代アスコットはごくオーソドックスながら、それまでのホンダ車ではあまりなかった4ドアセダンと呼ぶのに相応の全高を確保した点や静粛性の高さなど、4ドアセダンに求められる要素を煮詰めたモデルで、非常に完成度が高かった。
しかし、4代目アコード&初代アスコットはごくオーソドックスな点が当時のホンダファンには受け入れられなかったことや、バブル景気という時代背景によりアコードインスパイア&ビガーに注目が集まった点が原因だったのか、あまり売れなかった。このモデル以来アコードは、アメリカ製だったこともあるステーションワゴンとユーロRなどのスポーツモデルモデル以外、歴代「いいクルマなのに地味で今一つパッとしない」という状況が続いている。
また、セダン系では1998年登場の3代目モデルでFFミッドシップをやめオーソドックスなエンジン横置きのFF車となったインスパイアや、タイプR以外目立たなかった2005年登場の8代目シビックも4代目アコード&初代アスコットも近い運命となってしまった。
コンセプトがわかりにくくて売れなかった名車
1992年3月に発売された3代目CR-X デルソル SIR
このタイプのトップバッターは1992年登場のCR-Xデルソルだ。CR-Xの初代と2代目モデルはシビックベースのピュアなFFスポーツというイメージが強かったが、3代目モデルとなるCR-Xデルソルは軟派な要素もあり、電動タイプも設定するタルガトップを持つオープン2シーターとなった。このコンセプトは今になるとルノーウィンドという類似したモデルがあったなど、比較的軽いノリがそれはそれでアリだった。
しかし、当時は2代目までのCR-Xからのあまりの変化や「オープンカーなら楽しめる幅が広い」という魅力を持つユーノスロードスターが強敵になったこともあり、CR-Xデルソルは失敗に終わり、CR-Xとしても最後のモデルとなってしまった。
同じように分かりにくさで売れなかったホンダ車としては独立したシートを前後二列に持つ2004年登場のエディックスや、ミニハマーのような雰囲気に加え3列シートを持つという今なら売れそうな要素が揃う2007年登場の2代目クロスロードも浮かぶ。
ホンダ社内の意見が割れて売れなかったモデル
1999年9月に発売されたアヴァンシア。V型6気筒3.0Lと直列4気筒2.3LのVTECエンジンを搭載
1999年登場のアヴァンシアは「ミニバンのような快適なリアシートとステーションワゴンの広いラゲッジスペースを持つ」というモデルだった。アヴァンシアは乗ればラージセダンのように快適で、価格も2.3リッター4気筒エンジン搭載車で220万円台からリーズナブルないいクルマだった。しかし、当時200万円から250万円のホンダ車にはアコードワゴンや2代目オデッセイといったモデルがあったこともあり、アヴァンシアは分かりにくさや中途半端な感も否めなかった。アヴァンシアはマイナーチェンジで走りの質を高めたアブソルートを追加するなどのテコ入れも行ったものの、結局浮上せず初代限りとなってしまった。
アヴァンシアと同時期となる2000年に登場した7代目シビックの5ドアハッチバックも広いリアシートを持つなど、実用的ないいクルマだった。しかし、それまでのシビックのスポーティなイメージは7代目シビックでは3ドアハッチバックのタイプRだけとなってしまった。さらに悪いことに翌2001年にコンパクトカーながら広いリアシートとラゲッジスペースを持ち、燃費も良好で激安価格の初代フィットが登場したことで、シビックの存在意義が薄れてしまったためなのか、こちらもいいクルマなのに売れず、シビック低迷のきっかけのようになってしまった。
本当にいいクルマだったのに売れなかった名車
2000年のホンダ車にはいわゆる「いいクルマ」が少なくなかった。その代表が2004年登場のラージミニバンのエリシオンと、乗用車型ミドルミニバンで2006年登場の2代目ストリームである。
2004年5月に発売されたエリシオン。新世代プレミアム8シーターをコンセプトとして開発された
エリシオンはラージミニバンながらホンダのミニバンのDNAである低床低重心パッケージによる乗用車に極めて近いハンドリングと、良好な乗り心地と高い静粛性により、乗ればライバル車だった初代アルファードや2代目エルグランドを大幅に上回るクルマに仕上がっていた。2代目ストリームも5ナンバーサイズながら3列目もシッカリ使える広さを持つ点や、ボディ剛性の高さを基盤にした全体的な上質感が魅力だった。
しかし、エリシオンは初期モデルのフロントマスクがラージミニバンに求められる押し出しに欠けていた点や3列目シートの収納方法、2代目ストリームはストリームを徹底的に研究した初代ウィッシュのイメージの強さ、2代目ウィッシュの価格の安さが原因だったのか、どちらも実力ほどは売れなかった。
現在では軽ハイトワゴンのN-WGNが価格を含め内容は文句ないのに、スタイルが地味なのが原因なのか、実力ほど売れていないのは残念である。
近年はいいクルマだけど高くて売れない悲劇
クラリティはFCV(燃料電池車)としてデビュー。プラグインハイブリッドモデルは2018年8月に追加された
現行モデルとなるCR-V、インサイト、N-ONE、もう絶版になってしまったクラリティPHEVという2017年以降に登場したホンダ車はインパクトに欠けるものもあるにせよ、すべていいクルマである。
しかし、どのクルマもN-ONE以外はカーナビなどフル装備ということもあるにせよ、ライバル車より価格が高い。特にクラリティPHEVは約600万円だったこともあり、これでは売れないのも仕方ない。最近のホンダ車に価格の高いクルマが多いのは、地域ごとの独立採算制となっているためで、特に日本仕様は相当の自信がないと戦略的な価格を付けるのは難しいようだ。確かに戦略的な価格を付けるのはリスクも多いにせよ、リスクゼロばかりでは得るものも少ないのではないだろうか。
まとめとしては現在のホンダ車はいいクルマが多いのに、現在量販車が軽乗用車とフィット(ちょっと微妙だが)、フリード、ヴェゼルあたりに偏っているというのは歯がゆい。それだけに特別仕様車の設定などによる価格の見直しなどにより、いいクルマが多くなったホンダ車には実力通りに売れるようになって欲しいところだ。
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みんなのコメント
最近のホンダ車は高い
かつての本田宗一郎は他社の力を借りずに
ホンダ独自のオートマチックを開発したという
エピソードが載っている。
一見するとチャレンジ精神があってすげぇと思うけど
でもそれはユーザーのニーズに応えるために
ホンダが出した答えの出し方でもある。
それを途中で履き違えて、ユーザーのニーズより
開発者がやってることこそ絶対に変わってしまった。
こういうクルマを連発して開発者はさぞ気持ち良く
なっただろうけど、その反面デザインや質感は二の次、
トドメは高級感と上手い言い訳をしたコストアップに
繋がった。
その結果、日産みたいに懐古でネタを稼ぎ
数値だけは優等生なクルマを量産することになる。
これがホンダユーザーは高齢者とオタクしかいない
という理由。
チャレンジ精神に期待してるなんて言ったところで
軽自動車程度の利益であれやれこれやれなんて
ホンダもかわいそうに、これがホンダユーザーの民度。