フィアット500eは最高にお洒落!
岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第183回
価格は31億円!? 「ロールス・ロイス」が製造した究極のフルオーダーモデルとは?
フィアット500eに乗った。「e」とは、もちろんEVを意味する。
誰もが「500である」ことはすぐわかるが、同時に「プレミアム度」のランクがグンとハネ上がっていることもわかるはず。
まぁ、エントリーグレードで450万円のプライスタグを見れば当然のことだが、これほど上質に仕上がっている500にはやはり驚く。
まずは塗装がいい。5種類のボディカラーの内、僕がいちばん気に入ったのは「セレスティアルブルー」。淡く艶やかなブルー3層のパール塗装とのことだが、華やかでいて上品、、そう、、上質な真珠のように見える。
美しいピンクパールを手にしたことはあるが、、淡いブルーのパールがあったら、きっと素晴らしいだろうな、、といった夢想が膨らむ。
そんなボディカラーを、「ダイヤモンドカット」と名付けられた17インチのアルミホイールがより印象づける。さらには、LEDヘッドライトと「500」のオーナメントもインパクトあり、だ。
カタログには、「イタリア的デザインを未来へ向けて解釈した、クラシカルかつ先進的なデザイン」と紹介されているが、僕は素直に「そうだな!」と頷ける。
インテリアにも同様な言葉が当てはめられる。ボディと同色の艷やかなインストルメントパネルもいいし、短冊切りのレザーを編み込んだインストルメントパネルもいい。
このインストルメントパネルは、まるでボッテガヴェネタの財布のような仕上がりだ。リサイクルレザーを使ったシートの質感も上々と言っておこう。
フットスペースが狭く、ペダルが少し中央寄りになっているのは難点だが、まぁ、「乗っていれば慣れる」範囲内だと思う。
トップは「固定式ガラスルーフ」と「電動開閉式ソフトトップ」があるが、どちらを選ぶか、、難しい決断を迫られる。
ルックスとプレミアム感では、むろんソフトトップが上を行く。さらには、畳んだソフトトップを背負う形になるのも、僕は好きだしカッコいいと思う。
固定式もガラス幅は広く、キャビンにはサンサンと陽が射し込む。そして、電動開閉式ルーフは「フルオープン」とさえ言えるレベル、、そこらにあるサンルーフとは別物の開放感が味わえる。
ルーフ開閉時のモーター音や作動感もいい。スムースに精度感高く開閉する。閉じるときのカチッといった音とロック感もいい。
フルオープンにしたときの風の巻き込みもよく抑えられている。少なくとも80キロ辺りまでのクルージングでの「髪の乱れ」は、ほとんど気にならない。
オープンにしたときの風の巻き込みを嫌う女性もいる。、、が、海岸沿いの道路をゆっくり流す、、といったレベルの速度では、そんな女性でも喜んでくれるだろう。
フルオープン形態ではすべてを周囲に晒してしまう。なので、街では使い難い。でも、500eの形態なら、街でも存分に使える。スモークの入った窓ガラスを閉めておけば、プライバシーは保たれるということだ。
ソフトトップで感心したのは風音がよく抑えられていること。この辺りにも、精度の高い作り込みを実感させられる。
もちろん、固定式ガラスルーフの風音は文句なしのレベル。EVの静粛性を邪魔する無粋なレベル / 類の風音はしっかり封じ込められている。
なので、タイヤノイズ / ロードノイズが相対的に耳に入ることにはなる。が、これも「しかたがない」とうなずけるレベルには収まっている。
乗り心地も「しっかりした感触」で、小さなクルマにありがちなヒョコヒョコした動きもない。とくに、クローズドボディはかなり上質な乗り心地、、プレミアムクラスを名乗るに十分な資格がある。
ちなみに、ソフトトップのボディの剛性感はクローズドボディには少し劣る。同じ17インチタイヤでも、強い不整路面に出会ったときの反応は異なる。クローズドボディは「見事に!」と言えるほどのレベルで不整をクリアするが、ソフトトップボディは、時折角を伝えてくる、、、そんな違いがある。
モーターはフロントを駆動する。出力 / トルクは118ps / 220Nmで、一充電走行距離は(WLTCモード)335km。いちばん重いソフトトップ・モデルの車重は1360kgだ。
一充電走行距離(実用的には150~200kmくらいか ? ) は長いとは言えない。、、が、多くの人々の日常的な移動範囲は十分カバーできるはず。加えて、充電器(3kWhでも)を家に設置できれば、まずは快適なEVライフが送れるだろう。
500eのパフォーマンスはひとことで表現すれば「気持ちがいい!」といったことになろうか。トルクがあって、レスポンスが良くて、静かで滑らかで、、すごい!といった速さではないが、気持ちのいい速さ!である。
気持ちのいい加速感が120キロ超辺りまで続くのも嬉しい。この、滑らかでノビの良い加速感の設定は巧みであり、500eのプレミアム感を押し上げてもいる。
走行モードは、ノーマルモード、レンジモード、シェルパモードの3種。ノーマルは回生ブレーキなし、レンジは回生ブレーキあり、シェルパは80キロ以下での走行とエアコン / シートヒーターをオフする。
僕は回生ブレーキの効くレンジモードが好きだが、淡々とした走りなら、ワンペダルでのドライブは十分可能。ちなみに、基本ワンペダルで気持ちよく走れるようになるまで(慣れるまで)の所要時間は30分ほどだった。
ここまでは500eを褒めまくってきたし、実際に大好きだ。、、でも、注文もある。ひとつはドアの重さであり、もうひとつはステアリングフィールだ。
2ドアはどうしてもドアサイズが大きくなり重めになる。仕方がないことかもしれない。でも、この小粋な500eには、とくに「素敵な女性に多く乗ってほしい!」と僕は思っているので、、気になってしまう。
ま、女性とは言ってもさまざまだが、たとえば小柄であるとか、シニアであるとか、、といったことを考えると、できるだけ軽めのドアがほしくなる、、ということだ。
軽めのドアがもたらす「乗降時のスマートな身のこなし」は、乗り手と500eをいっそうスタイリッシュに見せる、、というのも理由のひとつに加えておこう。
もうひとつの注文であるステアリングフィールは、要改善と報告しておく。
切り始めの手応えも曖昧だし、たとえば、中高速コーナーを一定の舵角で旋回する、といった場合の「舵の決まり」もよくない。
路面とのコンタクト感、路面からのインフォメーションは明らかに甘い。
小さな四つ角で切り込んだステアリングを、掌の中でスルスルと滑らせながら戻す、、といったときの戻り感もよくない。ときには手を添えて戻してやらなければならない。
ボディも足もよくできているし、EVとしての制御もよくできている。動質は素晴らしい仕上がりだ。なのに、「ステアリングフィールがよくないのはなぜ!?」と、首を傾げてしまう。
要改良 /要改善点はある。、、が、それはフィアット 500eの魅力にダメージを与えることはまったくない。なぜなら、基本的な魅力が絶対的とさえ言えるものだからだ。
フィアット500eはほんとカッコいい。単に内外装等の見てくれだけではない。EVであることをも含めて、インテリジェンスな体臭を周囲に意識させるような魅力とオーラがある。
そんな500eを素敵な男女がスマートにスタイリッシュに乗りこなす、、これは、間違いなくいい眺めだろう。
とくに、「500e+素敵な女性」の組み合わせはイチ推しだ。そんなシーンのあれこれを想い浮かべるだけでワクワクしてくる。
来年以降、ミラノやローマに行けば、僕が夢想しているようなシーンにあちこちで出会えることになるだろう。楽しみで仕方がない。
1953年、オードリー・ヘップバーンが世界のスターに上り詰めた映画「ローマの休日」では、フィアット・トポリーノが活躍した。
知的で美しくてヤンチャな王女役のオードリーは最高だった。フィアット 500eが似合う女性をイメージするなら、僕はローマの休日のオードリーを挙げる。
ちなみに、「現代の女性なら?」と問われたら、、当たり前すぎるかもしれないが、モデルのテイラー・ヒルを挙げる。現代のオードリーと呼ばれる素敵な女性だ。
● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト
1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。
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本連載のイラストをずっと手がけて戴いている溝呂木 陽 先生の個展が開催中です。4月23、24はフィアットアバルト松濤で整備等されたお客様に、ご希望により愛車やオーナー、ペットなどの水彩画クロッキーがプレゼントされるそう。さらに水彩画・模型・模型雑誌・Tシャツ・画集等販売・水彩画オーダー会も開催。在廊日には水彩画実演・水彩画教室・水彩クロッキーなども。お時間ある方、フィアットオーナーの方はぜひ伺ってください。
「フィアットカフェ松濤2022春 溝呂木陽水彩展」
開催期間/4月16日(土)~4月30日(土)
作家在廊予定日/4月23、24、29、30(11~17時の間で水彩画実演)
住所/東京都渋谷区松濤2-3-13 フィアットカフェ松濤
開場時間/10:00~18:00
定休日/火曜 入場無料
HP/http://tricoloretoto.com/fiatcafe
お問い合わせ/03-6804-9992
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みんなのコメント
大好きなのはオンナの方でしょw
ジローラモみたいにさ