■2021年もトヨタ勢は怒涛の新型車ラッシュ!
トヨタは、2020年に「ヤリス」(旧ヴィッツ)、「ハリアー」、「ヤリスクロス」、「GRヤリス」、「ミライ」を相次いで新規投入ならびフルモデルチェンジしました。
そして、2021年も数多くの新型モデルが登場するといわれますが、どのようなモデルが出てくるのでしょうか。
2015年に登場した4代目「プリウス」から展開が始まったTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)。
実はこれ、プラットフォーム/パワートレインの刷新のみを意味しているわけではなく、「クルマ作り」や「仕事の進め方」を大きく改革するキーワードです。
トヨタ自身、TNGAを「クルマづくりの構造改革」と語っているのは、そのためです。
TNGAのポイントは、「商品力の向上」、「グルーピング開発による効率化」、「モノ作り改革」、「グローバル標準への取り組み」、「TNGAと連動した調達戦略」の5つです。
より具体的に説明すると、プラットフォームやパワートレインは中長期的に使えるように最初に高いレベルを実現させそれを皆で共用するという技術のモジュール化だけでなく、各モデル/各ユニット/各生産工場でバラバラだった技術的な共有もおこないます。
これは単なる開発効率の向上ではなく、“いい物”を安く効率的に作るための手段と考えたほうがいいでしょう。
その結果、これまで車種によってバラバラに開発していたことによる無駄がなくなりました。
さらにレベルの高いモジュールを用いて開発することで、逆に各モデルの個性や色が出しやすくなっているのは、以降に登場したニューモデルの仕上がりを見ると明らかです。
グローバル企業のトヨタは世界のさまざまな国や地域に開発・生産拠点を持っており、そのすべてを改革するわけですから、さすがのトヨタでも「短期間で」というわけにはいきません。
とはいえ、4代目プリウスの導入から6年が経過し、多くのモデルがTNGAモデルに世代交代されているものの、まだ旧世代モデルがラインアップされているのも事実です。
では、2021年から2022年にかけてどのようなニューモデルが登場するのでしょうか。
1台目は「86」です。2代目もスバルと共同で開発されているのはすでに周知のとおりですが、新型モデルは「GRスープラ」、「GRヤリス」に続くGRブランドのオリジナルスポーツカーシリーズの第3弾となります。
兄弟車のスバル「BRZ」は2020年11月に世界初公開、デザインや基本的なスペック(北米仕様)は、すでに公開済みですが、86に関しては現時点ではノーアナウンスです。
その理由は解りませんが、基本的には2社で1台を開発というスタンスなので、フロントマスクや走りの味付けといった細部の差以外は同じと考えていいでしょう。
外観での違いはフロントマスクで、偽装されたテストカーの画像から86はGR共通の「ファンクショナルマトリックスグリル」が採用されたバンパーであることが解ります。
走りに関してはインナーフレーム構造や構造用接着剤の採用、アルミパーツの採用拡大や18インチのタイヤの採用などにより、大きくレベルアップしているのは間違いありませんが、初代と同じく「FRらしさ」を重視したセットアップなるでしょう。
ちなみに新型BRZは、ATモデルにアイサイト採用と発表していますが、86はどうなるのでしょうか。国土交通省は「2021年11月以降にデビューする国産新型モデルに対して衝突被害軽減ブレーキの装備を義務づける」方針を発表しており、MTに未採用ということならば、それまでに発売されるのは間違いないでしょう。
2台目は「アクア」です。プリウスに続くハイブリッド専用車として2011年に登場。
5ナンバーサイズのコンパクトボディと世界トップクラスの低燃費(発表当時)を武器に大ヒット。
海外でも展開(ネーミングはプリウスC)されていますが、販売は圧倒的に日本市場が高く、基本は「日本人のためのモデル」といっていいでしょう。
すでにトヨタは主要モデルにハイブリッドをラインアップしています。そんなことから「アクアの役目は終わり、そのまま生産終了」というウワサもありましたが、新型は存在します。
実は以前、筆者(山本シンヤ)は、あるトヨタの関係者に同じ質問をしたことがありますが、そのときに聞いた答えは次のように説明していました。
「実は当初は我々もそう思っていましたが、ユーザー調査でアクアの『ブランド力』の高さに驚きました。それなら継続させたほうがいいという判断です。
アクアの役目の一つに『ハイブリッドの間口をより広げること』があります。
そのなかにはお求めやすい“価格”という要件も重要だと考えていますが、それらを統合的に見ていくと必ずしも『最新が最良』ではない答えもあると思っています」。
※ ※ ※
それらから推測すると、どちらかといえば前席主体の「ヤリス」に対して、新型アクアはファミリー需要を重視したパッケージングと考えるのが妥当でしょう。
パワートレインは普通に考えればヤリスハイブリッドと同じダイナミックフォースエンジンの最新作となる1.5リッター直列3気筒+モーターだと思いますが、前出のコメントを考えると現行モデルの進化版という線も否定できません。
プラットフォームはGA-Bに刷新で間違いないでしょう。気になるのは価格です。
ヤリスハイブリッドは199万8000円からとなっています。ちなみに現行アクアは181万8300万円からですが、「ハイブリッドの間口をより広げること」という言葉を信じると、新型アクアは戦略的なスターティングプライスを掲げるのではないではないかと、筆者は予想しています。
3台目は「ランドクルーザー」(以下、ランクル)です。1951年に警察予備隊向けの機動車からスタート。
世界中のあらゆる道を想定し、「道なき道でも自由に走れる」、「命・荷物を運ぶために壊れない。もし壊れても何とかかえってくることができる」ともっとも厳しい条件でクルマ作りがおこなわれているモデルであり、そのトップレンジとなる現行200系は、今やレンジローバーやメルセデス・ベンツGクラスと並ぶブランドへと成長しています。
とはいうものの、現行ランクルの登場は2007年で世代交代のタイミングが近づいているのも事実でしょう。
ちなみに2021年はランクル生誕70周年という年で、世代交代にふさわしいタイミングでもあります。そんな新型はスクープサイトなどでは「300系」と呼ばれています。
昨今、モノコックボディに鞍替えするライバルも多いですが、300系はランドクルーザーの伝統となっている「フレーム構造」を踏襲するも、すべてを刷新。
もちろんTNGAの概念に則って開発されています。加えて、走りをサポートするさまざまな制御系デバイスの採用も相まって、オフロード性能を一切損なうことなく、オンロード性能を引き上げているのは間違いないでしょう。
パワートレインも刷新されます。現行モデルはガソリンが4.6リッターV型8気筒、ディーゼルは4.5リッターV型8気筒ツインターボ(海外向け)を搭載していますが、300系は共にダウンサイジングユニットを搭載するそうです。
もちろん、環境対応の観点からだと思われますが、ランクルの場合は「過酷な使用条件をクリアしながら」という条件があるので、開発陣の苦労は並大抵ではなかったと思われます。
電動化(=ハイブリッド)はデビュー当初に設定されるかは現時点では解りませんが、開発は着実に進められています。
実は2017年に発表された「電動車普及に向けたチャレンジ」のなかで、寺師茂樹副社長(当時)は、ハイブリッド戦略に関して次のように語っていました。
「2030年に電動車550万台を実現させるためには、電動車の大半を占めるハイブリッドの技術をさらに磨き上げる必要があります。
ハイブリッドは今まで以上に多様化を進めるために、トヨタハイブリッドシステム(THS II)だけでなく、トーイング性能が求められるCV(商用車)やアフォーダブルな価格が求められる新興国向け、さらにはスポーツカー用などモデルに合わせたシステムをも開発していきます」
ちなみに弟分の「ランドクルーザープラド」も世代交代のタイミングに来ています(現行モデルの登場は2009年)。
フラッグシップの200系、質実剛健な70系の影に隠れていますが、実はシリーズのなかでは最量販モデルなので、新型にも期待が集まっています。
ただし、世代交代はもう少し先のようです。さらにいうと、日本でスマッシュヒット中のピックアップトラック「ハイラックス」も、近いタイミングでTNGA化されるはずです。
■新型SUV登場? 人気ミニバン、ノアヴォク&アルヴェルはどうなる?
4台目は「カローラクロス」です。2020年7月にタイで世界初公開、同国で発売が開始されたモデルですが、プレスリリースにはこのように記されています。
「今後、順次、導入国を拡大してまいります」
数年前までクロスオーバーSUVが手薄だったトヨタですが、C-HR以降ライズ、RAV4/ハリアー、ヤリスクロスとラインアップの拡充をおこなっています。
しかし、もっとも激戦区と呼ばれるCセグメントは変化球のC-HRのみで、実は直球勝負できるモデルがありませんでした。
ちなみに海外向けのカローラツーリングにはクロスオーバー化された「カローラTREK」が用意されています。
ただし、オンロード志向でC-HRとキャラクターが被る可能性があるという判断から、カローラクロスに白羽の矢が立ったと考えるのが素直でしょう。
外観は力強さと洗練さをバランスよく両立。全長4460mm×全幅1820mm×全高1620mmと全幅以外は扱いやすいサイズです。
カローラファミリーというよりもミニRAV4といった雰囲気がありますが、昔の「スプリンターカリブ」のような立ち位置と考えれば納得といった感じだと思います。
タイ仕様のパワートレインは1.8リッターガソリンと1.8リッター+モーターのハイブリッド、プラットフォームはGA-C(リアサスがトーションビーム仕様)となっていますが、日本向けはどのような組み合わせになるのでしょうか。
個人的にはカローラの上級仕様であることを踏まえれば、パワートレインはガソリン/ハイブリッド共にダイナミックフォース(2リッター)、リアサスはダブルウィッシュボーンの採用を期待したいところです。
5台目はトヨタのミドルサイズミニバン3兄弟「ノア/ヴォクシー/エスクァイア」です。
現行モデル2014年(エスクァイアは2017年)登場でモデルライフ末期ながら好調なセールスを続けていますが、古さは否めません。
新型は現行モデルの使い勝手の良さ/扱いやすさを継承しながら、メカニズムはパワートレイン(2リッターダイナミックフォースエンジンと同エンジン+モーターのハイブリッド)、新プラットフォーム(GA-C)と刷新され、「走る/曲がる/止まる」の性能は大きくレベルアップ。
とくに“曲がる”に関しては背の高さを感じさせない安定・安心の走りを実現しているようです。
ちなみに現行モデルでは4WDはガソリン車のみでしたが、新型では雪国待望のハイブリッドとの組み合わせ(E-Four)も用意されるようです。
また、現行モデルではライバルに対してウィークポイントだった安全支援機能も最新スペックが奢られます。
ちなみにトヨタは2020年5月から国内全系列の全車扱いがスタートし、すでにラインナップの統廃合が進められています。
企画段階ではノアに一本化、グレード毎にふたつのフロントマスクを用意する計画だったと聞きますが、全車扱い以降も煌びやかなフロントマスクのヴォクシーの人気が高いことから続投が決定したようです。しかし、エスクァイアはノアに統合(=高級志向になる!?)される形でラインナップ落ちだといいます。
6台目は「アルファード/ヴェルファイア」です。ラージサイズミニバンとして登場したモデルですが、今や高級セダンと同じ、いやそれ以上のポジションを築き上げたモデルです。
現行モデルの登場は2015年とモデルライフ終盤となっていますが、2020年販売台数で2台を合算すると10万8752台。これは1位ヤリス、2位ライズ、3位カローラに続いて4位の記録です(アルファード単体だと5位の9万748台)。
しかし、その一方で走りの部分は現行モデルで大きくレベルアップされたものの、「高級セダン並みか?」といわれると、課題がなかったわけではありません。
現行アルファードはリアサスをダブルウィッシュボーン式に変更、構造用接着剤なのでボディ剛性アップなどがおこなわれましたが、元を辿れば現行ノア/ヴォクシー/エスクァイアやプリウスαが採用する新MCプラットフォームで、色々な部分に限界があったのも事実です。
そこで新型はプラットフォーム/パワートレイン共に刷新されます。恐らくTNGAのメリットなどを考えると、基本的な部分は北米専用ミニバン「シエナ」と共通と考えていいでしょう。
つまり、プラットフォームは「GA-K」、パワートレインは高出力化されたダイナミックフォースエンジンの2.5リッター直列4気筒と同エンジン+モーターのハイブリッドの組み合わせは間違いないでしょう。ただし、301馬力を誇る3.5リッターV型6気筒は環境適合の関係上、残念ながらラインアップ落ちでしょう。
ちなみに内外装はキープコンセプトで、「よりダイナミックに」、「より豪華」に進化しているそうです。
ちなみに弟分の「ノアヴォク」兄弟は継続されますが、アルヴェル兄弟は統合されアルファード一本となりヴェルファイアはモデル落ちとなる可能性が濃厚です。
ここ数年、アルファードの圧倒的な販売比率の高さが故の判断でしょう。ただ、ヴェルファイアのファンが離れないように、ヴェルファイアに相当するカスタム系グレードが用意されるようです。
※ ※ ※
そして最後は「シエンタ」です。トヨタ最小の3列ミニバンで現行モデルは2015年に登場。
アルヴェルと同じくモデルライフ終盤ながらも2020年販売台数は7万2689台とトップ10入り。ただ、ライバルのホンダ「フリード」(2016年登場)の7万6283台に僅かに負けているのも事実です。
外観は現行モデルが好評なことからキープコンセプトと噂されていますが、詳細は残念ながら解りません。
内装は現行モデルの課題から推測すると、2列目/3列目の居住性向上が目標となっているはずです。
メカニズムはヤリスと同じく、パワートレインはダイナミックフォースエンジンの1.5リッター直列3気筒と同エンジン+モーターのハイブリッドの2本立てとなるでしょう。
プラットフォームはGA-Bなのは間違いありませんが、気になるのはホイールベースです。
現行シエンタは2700mmですが新型では居住性アップを考えるともう少し伸ばしたいところです。
ただ、現在販売中のGA-B採用モデルはヤリスが2550mm、ヤリスクロスが2560mmと比較的短めのホイールベースなので、ロングホイールベース化が走りにどう影響するのかは気になる部分です。
※ ※ ※
これらのモデルが登場するとTNGA化はほぼ完了となります。豊田章男社長がいう「もっといいクルマづくり」は確実に花が開き、トヨタ車の評価も以前とは大きく変わっています。
ただ、トヨタはここで手綱を緩めることはありません。すでに2順目がスタンバイ中となっています。
プリウスからスタートした1順目は「クルマの走りを正しい方向をリセット」の期間で、2順目からが本当の意味での「100年に一度の大改革」だと筆者は思っています。
そう思うと、2020年に日本中を賑わした「クラウンが変わる」という報道も想定内に思えてくるのです。
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みんなのコメント
あの安っぽい内装何とかして!!
ライバルメーカーは力不足。
この先どうなるのやら、真っ先に削られるかの業界の人は何ら影響力の無い自動車評論家だろう。