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三菱アウトランダーPHEV試乗記(2.4L+ツインモーターPHEV)曲がる概念が変わる

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三菱アウトランダーPHEV試乗記(2.4L+ツインモーターPHEV)曲がる概念が変わる

三菱アウトランダーPHEVが正式発表され、それに先駆けプロトタイプをサーキットで試乗してきた。

ポイントはフルモデルチェンジに伴う内外装の変更と三菱独自の車両運動制御S-AWCの進化、そしてクルマの新たな価値とも言えるV2Hといった3点に注目してみた。また詳細な解説は既報で詳しくはこちらの記事を参照してほしい。

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早速気になる走りについてお伝えしよう。S-AWCはモーターの制御を細かく行なうことで安心安全とスポーティな走りを楽しむ事ができることを目指した技術。古くはランサーエボリューションをスーパー耐久で走らせAYC(アクティブヨーコントロール)により、旋回性をあげ同じ2.0LターボAWDのインプレッサを圧倒し連勝を重ねた実績がある。

そのAYC技術も進化を遂げS-AWC技術に取り込まれている。そのスーパーオールホイールコントロール技術は、前後に配された駆動モーターを制御することで理想の車両運動性能を手に入れる考え方だ。ところが実際にサーキットを走行すると走りの概念を変える走りを体験するのだ。

一般的にはコーナリングでロールが始まりダイアゴナルロールからのヨーを感じながら旋回をするというのを身体が覚えている。弱アンダーステアを感じながら、そしてタイヤのグリップを感じリヤの接地感を得ながら旋回する。しかし、アウトランダーPHEVはハンドルを切ると、そのまま曲がり始める。当たり前のように思うだろうが、ハンドルを切ってからの動きが異なっているのだ。

特にアンダーステアが出そうなオーバースピードでコーナリングを始めるとその違いが顕著になる。普通ならクルマは前のめりになりステア方向には旋回せず直進しようとするのがアンダーステアだが、アウトランダーPHEVはオーバースピードであってもアンダーステアとならずに旋回するのだ。どこまでも曲がってしまうのでどんどん進入速度が上がる。いきつくところタイヤのグリップ限界までイケるわけだ。

これは前後のトルク配分と4輪がバラバラに制御できるコーナリングブレーキ(AYC)、ASC、ABSがもたらす効果で、安心安全で、さらにはスポーティな走行も楽しめるというわけだ。

整理すると、S-AWCはアクティブスタビリティコントロール(ASC)、ABS、前後左右のブレーキを独立制御するAYCを統合制御し、舵角、ヨー、駆動トルク、ブレーキ圧、車輪速などの情報から車両コントロールを行なっている。特にブレーキ制御によるAYCは、従来の前輪のみから、前後左右ブレーキ制御に拡張され、よりアンダーステアを抑えるなどコーナリング時のライントレース性が高められているのだ。

そして、このS-AWCにはドライブモードが7つもある。それだけ豊富なドライブロジックを確立しているということだ。走行モードは、センターコンソール上のダイヤルスイッチで選択でき、ノーマル、ターマック(舗装路・スポーティ走行)、グラベル(非舗装路)、スノー、マッド(泥濘地)、エコ、パワー(加速重視)があり、またダイヤルスイッチの中央部にはヒルディセント・コントロールもあるというわけだ。

これだけあると、何がどう違うのかと思うが、スポーティな走行をしようと思ったとき、パワーモードかターマックモードを選択すると思う。その違いだがパワーモードはその名の通りもっともパワーを出し、ノーマルより回生の配分も変更。そしてターマックとはアクセルゲインを少し寝かせている制御だ。逆に言えばターマックモードはアクセルの付きが良くて回頭性の高さという違いは顕著に感じられる。

ターマックは最初のきっかけで、少しの操舵でスーッと回頭が始まり向きが変わっていく。まさにターマックラリーをイメージした車両の動きだ。パワーモードではその初期の動きがターマックほど素早く回頭しないと体感し、それがアクセルゲインの制御違いというわけだ。

そしてタイヤを見るとエコピアを装着している。燃費を中心とした環境タイヤでここまでスポーティにサーキットを走行できるとは想像もしていなかった。S-AWC開発の澤瀬氏に尋ねると、もちろんハイグリップタイヤを受け止めるキャパシティは十分あるということで、スポーツ志向の人はそうした選択肢があると思う。が、20インチサイズということも好影響していることも間違いない。

また減速制御では新たに「イノペダル」を搭載した。イノベーティブペダルオペレーションの略で、ワンペダル走行できる制御だ。アウトランダーPHEVのブレーキはペダル踏力を数値化し電動ブースターでブレーキをかけるシステムで、回生ブレーキとメカブレーキの協調制御となっている。

このイノペダルを使ってターマックモードで走行すると気持ちよくサーキットを走行できる。イメージは高速ワインディングといった感じだ。ペダルを抜いたときの減速度はそれほど高くなく、次第に減速Gが強くなる。これはドライブモードに連動して減速Gが変化するので、好きなモードが選択できる。当然トラクションコントロールやスタビリティコントロールの効き方もモードに追従して変わっている。ちなみにパドルで回生ブレーキ力を変更する従来からの機能も装備している。

ここまでで「ハンドルの動きで向きが変えられる」という当たり前のようなことの意味が伝わっただろうか。ヨーのコントールを自在に、キネティックエネルギーを制御下に置いているとも言え、革新的な走行フィールを作っている。ここに新しい概念と走行フィールがあると言えるだろう。

ちなみにエンジンは4気筒2.4LのMIVECガソリンを搭載し、シリーズ式、パラレル式、そしてエンジン走行を行ない従来からの変更はない。これもそもそも革新的であるのだが。そして0-100km/h加速はパワーモードで8.2秒。これは先代より2秒以上速い。EV走行距離も87kmまでに伸び、総走行距離は1000kmを超える能力を持たせている。だから、通勤など日常は電気だけで、休日のロングドライブにはエンジンも使って長距離ノンストップ移動ができるというわけだ。

新しいクルマの付加価値

さらに、この電気を使って走る部分であらたなクルマの価値としてV2Hがある。三菱自動車は日産とともにV2Hに力を入れており、アウトランダーPHEVから取り出せる電力を家でも使えるようにアウトレットを装備している。

ニチコンのポータブルインバーター 野外を含め1500Wのアウトレットの他、据え置き型インバーターを介して家庭にも電力を供給できるシステムだ。ニチコンではさらに移動可能な「パワームーバー」「パワームーバーライト」を用意しV2Hに対応している。クルマからの直流をインバーターで交流に替え、電圧を変更して供給。その双方向できるタイプもあり、電力だけで移動も含めた新しい価値を提案しているのだ。

ニチコンは世界で初めてV2Hシステムを開発し、そのEVパワーステーションはEV車やPHEVの電力を家庭に、あるいは野外で家電等が使えるように開発した企業で、一般家庭、レジャー、そして災害時を含めあらゆるケースにクルマのバッテリーを有効利用するシステムを開発している。こうしたシステムと連動することでクルマの新しい付加価値が産まれてきていると言えるだろう。

さて、驚くのはインテリアの質感だ。アウトランダーPHEVはルノー、日産と共通プラットフォームCMF-CDを採用し、日産ローグ(北米)、次期エクストレイル、そしてメガーヌとも共通で、PHEVでは初めて3列シートもラインアップに加わっている。

レザーシートやインテリア全体の質感が上がり高級な内装と誰もが感じることだろう。価格的にも欧州プレミアムモデルのICE仕様と競合できる設定で、ひとクラス車格が上がっている印象だ。ブラックレザーシートにステッチを入れ、ステッチのカラーとダッシュボードの色をあわせて落ち着きのある大人なインテリアになっている。

ピアノブラックも効果的に使われ、シフトレバーやダイヤル式のコントローラーの細部デザインまでセンスよくデザインされているという印象に残るインテリアだ。

新型アウトランダーPHEVの3つの進化、価値について考察してみたが、最も印象に残ったのはやはりS-AWCによる走行性能の進化だ。この進化は「クルマが動く」という物理を制御によって、新しい「動き方」を伝えるもので、従来からのS-AWCより、より安全安心な走行がプラスされた印象だ。そして動きそのものが新しい走り方として、クルマの革新を起こしている気になる一台だった。<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi>

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