カレラカップ王者獲得の立役者
1989年から週刊プレイボーイで連載が始まった『サーキットの狼II モデナの剣』には、主人公である“剣・フェラーリ”と共に90年代を象徴するスーパーカーが数多く描かれファンを魅了した。ここでは『サーキットの狼』と『モデナの剣』の作者であり、スーパーカーの第一人者でもある池沢早人師先生をお訪ねし、当時の世相と共に名車との思い出を振り返ってみたい。今回は池沢先生の愛車として活躍し、またポルシェ・カレラカップへの参戦を促した「ポルシェ 911 カレラ RS(タイプ964)についてお聞きする。
池沢早人師が愛したクルマたち『サーキットの狼II』とその後【第12回:ポルシェ 911 カレラ RS】
73カレラの伝説が蘇るレーシングライクな1台
『サーキットの狼』や『モデナの剣』ではロータス・ヨーロッパとフェラーリ 348を主人公の愛車として描いたこともあり、ボクのイメージはロータスとフェラーリというのが一般的らしい。もちろんロータスやフェラーリも大好きだけど、ボクの中での絶対的存在はポルシェ 911。その理由は単純明快に「身体の一部みたい」だから。
フェラーリやランボルギーニのような華やかさはないものの、ドイツ車らしい質実剛健なクルマ造りはフェルディナント・ポルシェから受け継がれた哲学が詰め込まれている。初代911から受け継がれた空冷エンジンとRRレイアウトを基本とし、個性的なクーペフォルムは現行モデルにも色濃く残されている。
まぁ、環境問題や時代の流れを汲んで水冷エンジンになってしまったことを除けば911は今もなおポルシェの象徴であり、1964年の誕生以来変わらぬイメージを踏襲し続けている唯一無二の存在だと思う。スーパーセヴンやモーガンみたいな特殊なクルマを除けば、初代モデルのイメージを残したまま一線で活躍しているクルマなんて他にはないからね。
人生でベスト3に入るポルシェが964 カレラ RS
ポルシェ 911の魅力はドライブフィールの素晴らしさに尽きる。911って、乗っている人を冷静でありながらも興奮させてくれる二面性を持っているんだよね。他のスーパーカーとは違ってメチャクチャ実用的でもある。そして天候を選ばず速い。特別な存在でありながらも買い物やドライブでも気軽に扱え、サーキットに持ち込めば驚くような実力を発揮してくれるのは素晴らしい。
ポルシェ 911は頼れる相棒としてボクの自動車遍歴の中で最も多く乗り継いでいるクルマになっている。パブリックイメージとは違ってしまうかもしれないけど、911は人生に欠かせない存在であり、その中でもベスト3に入るほど気に入っていたのが1992年式の「911 カレラ RS」、通称「964 カレラ RS」だ。
『サーキットの狼』を描いていた頃から「73カレラ」と呼ばれる73年式のカレラ RSは憧れの存在だった・・・が、80年代に中古で待望の73 カレラ RSを手に入れたけど、その個体は感動するほどではなかった。でも、その伝説のRSが復活すると聞いた91年、「やっぱり新車だろう!」ということで、ボクは当時のポルシェ正規輸入元だったミツワ自動車に即オーダーした。このチャンスを逃したら一生後悔することは分かっていたからね。
荒れた路面では隣の車線まで飛び跳ねることも
翌1992年、純白のボディが眩しい911 カレラ RSがボクのガレージにやってきた。ボクの中では911=白いボディがお約束。最初に買った930ターボや993 GT2、RUF CTRII、現在進行系で乗っている911 カレラS(タイプ991)も白だからね。ボクの愛車としてやって来た964 カレラ RSは初期モデルで、AC、オーディオ、パワステ、パワーウインドウどころかドアノブもないシンプルな1台に仕上がっていた。
とにかく軽量さを追求したモデルでその車両重量は1230kg。贅沢品は全て排除され、車内にはレカロ製のバケットシートが2脚付いているだけだからすごくレーシーで、サーキットのレース場から飛び出てきたようなクルマはボクのストライクゾーンだった。
実際にドライブしてみると、締め上げられたサスペンションは一般道ではハードな印象を与えるけど、フロントガラス越しの風景がサーキットに見えるほどワクワクさせてくれるものだった。荒れた路面では足が硬すぎて勝手に車線変更しちゃうこともあったけど、その緊張感も楽しさのひとつに思えてしまうほど。
運転する楽しさを再認識させてくれた相棒
この92カレラ RSは究極のアスリートであり、ボクの好みにピッタリだったね。後期型には贅沢装備を配したコンフォートも追加されたけど、やっぱりカレラ RSはシンプルさが魅力になると思う。無駄な贅肉を削ぎ落としたソリッドな乗り味は歴代の911の中でも突出していて、伝説を築いた「73カレラ」の再来・・・いや、それ以上のクルマだね。
日常生活では硬いと思わせる足まわりだけど、サーキットに放たれた瞬間“水を得た魚”のようにレーシングカーとしての顔を見せてくれた。初のサーキット走行時の感動は今でも強く残っている。シャープなハンドリングは自分が頭に描いたラインをイメージ通りにトレースすることができ、コーナーに突っ込んでいくのが楽しみになる。3.6リッターの排気量を持つ空冷式のフラット6は最高出力260psと決して大パワーではないけれど、軽量化されたボディのおかげでスペック以上の走りを披露してくれる。
ボディ剛性もしっかりしている964 カレラ RSだけど、特筆すべきはブレーキのパフォーマンスだ。ここがフェラーリやランボルギーニとの違いなんだよね。自動車の基本「走る・曲がる・止まる」のすべてがハイレベル。特に「止まる」ことの重要性はサーキットではパワーよりも大切になるからね。
ポルシェ 911がスポーツカーの頂点であり続ける理由はブレーキ性能の素晴らしさにあることは間違いない。この964 カレラ RSにその重要性を再認識させられた気がする。愛車の964 カレラ RSは運転する楽しさを教えてくれた貴重な存在だったんだ。
ポルシェのレーシングカーでレースに出る幸せ
話は変わるけど、ボクは1992年から始まった「ポルシェ・カレラカップ・ジャパン」と呼ばれるワンメイクレース(※編集部注:タイプ964のポルシェ 911 カレラ RSをベースにしたカップカーを用いる)に参戦することになった。同時期にニッサン スカイライン R32 GT-Rでもレースを楽しんでいたけど、ボクの気持ちはもう「カレラカップ」に切り替わっていた。
そしてレースがスタートした1992年には筑波サーキットで2戦、それから富士スピードウェイ、スポーツランド菅生を転戦して初年度チャンピオンを獲ることができたんだけど、これも愛車である964 カレラ RSのおかげだと思う。サーキットでしか乗れないカップカーのベースになったクルマを日常の足にしているんだから、ボクと911は一心同体みたいなもの。
記念すべき初レースでポールポジションを獲得し、スタートを待つあいだのコクピットで、これからポルシェのレーシングカーでレースができる幸せを噛み締めていた。そしてこのシーズンは2位、優勝、2位、優勝と全戦表彰台にのぼり、シリーズチャンピオンになれたことは自分にとっても大きな価値だった。「あの人、マンガ家なのに」とよく言われたからね。
カレラカップのクラッシュが遠因で964 カレラ RSを手放す
でも、翌1993年の初戦として開催された鈴鹿サーキットで、大クラッシュを喫してカップカーを失ってしまった。一時はシリーズを諦めようとも思ったけど、ディフェンディングチャンピオンの意地もあって2戦目までに新しいレースカーを買うことにした。悲しいかな、そのために愛車の964 カレラ RSを手放すことになってしまった。その後は3位、2位、2位で、3戦の参加ながらシリーズ総合3位を獲得できた。タラレバになってしまうけど、このときのクラッシュさえなければ964 カレラ RSを手放すことはなかったと思う。
ボクが憧れていた「サーキットにレーシングカーと同じクルマで向かう」という映画『栄光のル・マン』と同じシーンを再現してくれた愛すべき964 カレラ RSは、今もなお心の中でベスト・オブ・ポルシェとして色濃く生き続けている。でも、飽きやすいボクのことだからエアコンやパワーウインドウのないクルマを持ち続けていたかと聞かれれば、「もちろん!」と胸を張って答える自信はないけどね(笑)。
Porsche 911 Carrera RS(Type 964)
ポルシェ 911 カレラ RS(タイプ964)
GENROQ Web解説:贅肉を削ぎ落としたレンシュポルト
1964年にデビューを果たした初代ポルシェ 911。その3世代目に当たるのが964型911シリーズだ。生産年は89年から93年となり、RRレイアウトの「カレラ2」と4WD方式を搭載した「カレラ4」がラインナップされている。
組み合わされるトランスミッションには5速MTの他に「ティプトロニック」と呼ばれるマニュアルモードを備えたATを用意。基本イメージは前モデルのタイプ930や911 Gシリーズを踏襲するものの、構成されるパーツの約80%を刷新するなど次世代のポルシェとして大きな変革が行われている。リヤスポイラーは電動格納式となり速度に応じて自動に昇降させることが可能。ボディタイプには通常のクーペの他、タルガ、カブリオレの3種類がラインナップされた。
際立った軽量化策で非凡な性能を発揮
そして1992年には軽量化を施した特別仕様の「カレラ RS」を限定発売。このモデルはポルシェ 911の伝説となった73年式のポルシェ 911 カレラ RS 2.7(通称:ナナサンカレラ)の血統を受け継ぐモデルとして91年のジュネーブショーで発表され、世界中のパラノイアたちを驚愕させた。総生産数は約2400台とされ、そのうち220台が日本国内へと正規輸入されるも、発表と同時にオーダーが殺到して完売したという。
究極のNAポルシェと称される946 カレラ RSの特徴は軽量化が図られたボディだ。補強されたボディは1350kgの車両重量を持つ標準型のカレラ2と比較して120kgも軽量となる1230kgを誇り、パワーステアリング、パワーウインドウ、エアコン、オーディオ、リヤシートをレス化するだけでなく、フロントフードなどにアルミ部品を多用すると共に17インチのマグネシウム製ホイールへの換装、リヤウインドウの厚さを薄くするなど徹底した軽量化が施されている。
今なお高い人気を誇りプレミア価格で流通
その最高速度は260km/hとされ、当時の新車価格は1380万円。生産から28年を経た現在ではその希少性故にプレミアが付けられ、あるオークションでは1億円を超えるプライスが付けられたことで大きな話題を呼んだ。
TEXT/並木政孝(Masataka NAMIKI)
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