ダイハツ・ムーヴが10年半ぶりにフル・モデルチェンジを行ない、全グレードにスライドドアを装備して登場した。
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かつて軽自動車市場では、ムーヴをはじめハイトワゴンが主流だったが、スーパーハイトワゴンのスライドドアの利便性が高く評価され、メイン市場がスーパーハイトへスライドしつつある。もちろんスーパーハイトの広い室内空間も魅力だが、特にスライドドアの利便性が注目されているわけだ。
そうした背景からハイトワゴンでもスライドドアを装備したモデルが市場に投入され、結果、販売が伸びつつある。再びハイトワゴンが主流のマーケットとなるかは不透明だが、確実に再伸長する市場であることは間違いない。
そこでダイハツでもハイトワゴンのムーブにスライドドアを採用し、その潮流に乗るべく第7世代へフルモデルチェンジを果たし2025年6月に市場投入をした。
ターゲットユーザーは時代の変化とともに変化しつつあるが、「目利きの世代」としている。ダイハツでは商品価値とコストのバランスに厳しい相場観をもつ「メリハリ堅実層」としている。だから単にスライドドアにしただけではなく、全てにおいて上質なしつらえや味がなければダメだとしている。
ムーヴカスタムはなくなりターボエンジン1グレード&NAエンジン3グレードに
実際に試乗したのはターボの「RS」グレードだ。グレード体系は、NAエンジンの「G」「X」「L」グレードと、ターボを搭載するトップグレードの「RS」という4グレードでそれぞれにFFと4WDが用意される。今回のフルモデルチェンジでムーヴカスタムがなくなり、メーカーとディーラーオプションを組み合わせてできる「ダンディ・スポーツ」と「ノーブルシック・スタイル」でカスタムの領域をカバーする。
プラットフォームは最新のDNGAで、常にアップデートが継続しているDNGAの最新版に660ccのエンジンとCVTを搭載している。エンジンもCVTも時代に合わせて制御適合の見直しを行ない、特にターボのRSはキビキビと走る仕様になっていた。
エンジン特性では、スロットル特性でリニアを追求しつつ、力強く、かつ滑らかな加速フィールになっている。CVTではRSにだけギヤで直結できるD-CVTを搭載。発進から高速走行までストレスなくスムースに走行できる。またサスペンションもRSには15インチのタイヤ&ホイールと高性能ショックアブソーバーを装備していた。
軽自動車とは思えない乗用車ライクの走り
実際に高速走行と市街地走行を行ない、130kmほどの距離をドライブしたのだが、ひとクラス上のコンパクトカーと比較できるレベルに感じる。
まず、ドライビングポジションもハイトワゴンを感じさせず、低く感じるのだ。実際のヒップポイントに大きな変化はないが、乗用車ライクに感じる。その理由のひとつに視界の良さがある。Aピラーに設けられた縦長の変形四角窓が死角を減らし、安心感がある。ペダル位置やステアリングの角度もそれほどアップライトには感じられないところも乗用車的に感じる要因だ。
走行フィールはすこぶる滑らかで静かだ。軽自動車特有のエンジン音が入って来ず、アクセルを大きく踏み込んでも軽特有の音にはならない。このあたりもキャリーオーバーのKF型3気筒エンジンだが、制御の見直しにより、改善されている。
またアクセルペダルに対するレスポンスも良い。息付きがあったり、出遅れたりすることなく期待通りに加速を始めるのでストレスを感じさせない。そして高速の合流車線では、力強く加速をしていく。とても軽自動車とは思えない力強さなのだ。このあたりのフィーリングもコンパクトカーと比肩したくなる。
64ps/100Nmのスペックは従来通りだが、出力カーブの特性をチューニングすることでアクセル開度とペダルを踏み込む速度の信号を拾うことで、急いでいるのか、ゆっくり加速でいいのか判断でき、運転の意思に見合った出力コントロールがされている。
1クラス上の車格と感じる進化
そして静粛性も高い。遮音材や吸音材、ガラスの板厚変更といった情報はないものの、高い静粛性が確保されており、これもまたひとクラス上の車格に感じさせる要因だ。
シートも座り心地がよく、適度にソフトなあたりなので、長距離も全く問題にならない。高速道路を使った長距離ドライブに躊躇なく出かける気になるし、軽自動車であることを忘れさせてくれる。さらにRSにはACCも標準装備されているので、渋滞時の運転疲労もかなり軽減してくれそうだ。
特に高速道路では直進性の高さが安心感につながる。ステアリングの座りもしっかりとあり、どっしり感が伝わってくる。車両も真っ直ぐ走るので修正舵をする必要がなく、欧州のスモールカーをドライブしている気さえ起きてくるほど安心感と安定感があった。
気になる燃費も従来比で向上している。NAエンジンの2WDで20.7km/Lから22.6km/Lへと約10%向上し、ターボも2WDで19.7km/Lから21.5km/Lへと同じく10%程度改善されているのだ。いずれもWLTCモードのデータだ。
このように同じユニットでも10年の間に制御技術は目覚ましく進化しており、こうした燃費改善も可能になっているというわけだ。
スマートアシストは全17種類の機能を搭載。カテゴリーでは衝突回避支援、認識支援、運転負荷軽減、駐車支援といった領域が装備されている。もちろん、トラクションコントールや車両姿勢制御のVSCなどの安全装備も搭載。
日常のアシだけではもったいない、上質な走りと乗り心地の新型ムーヴだ。
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