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“軽”じゃないゾ! 初代ダイハツ・タフト集中講座・元祖はこんな四駆だった(その1)

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“軽”じゃないゾ! 初代ダイハツ・タフト集中講座・元祖はこんな四駆だった(その1)

 こちらでは初めまして。私は中古車屋の店主であり『四駆道楽専門誌 キュリアス』(カマド出版・刊)の編集兼・倉庫係でもあり、重ステ車の運転が億劫になってきた団塊ジュニア末期世代。WEB上では“ポンコツ屋”の名で通っております赤木靖之と申します。皆さまどうぞ、お付き合いください。
 古い四駆に多く接しながら、個人的な趣味嗜好もあって、世間から忘れ去られそうなタフトや後継車のラガー、兄弟車ブリザードを見つけてはマニアに引き継ぎ、輸出や解体を阻止してきました。直近10年限定なら販売実績日本一かもしれません。
 もっとも、ランクルで日本一とか、ジムニーで日本一とは違って、両手ほどの台数で威張れてしまうマイナー車。商売にはなりませんねぇ……。
『四駆道楽専門誌 キュリアス』誌上では『ブリタフト友の会』と銘打ってコーナー展開中ですが、Motor-Fan.jpでもタフトの魅力を広めるべく、まずは各モデルをカタログからご紹介しましょう。

(初出・2020年6月10日)

ダイハツ「タフト」に特別仕様車「ダーククロム ベンチャー」が登場!ボディーカラー3色を追加設定。

第1回 カタログから振り返る初代タフト・前編(F10&F20編)

■タフトF10登場!!

横スリットのグリルはF10の特徴。なんだかガチャピンっぽい。 まだ鋼板ドア車は登場していない。車体色はこの若草色「セプテンバー・グリーン」のみ。 昭和49(1974)年8月、三菱ジープと360cc時代のジムニーの隙間を埋める四輪駆動車として発売されたタフト。本家ウイリスのオリジナル・ジープや三菱J50系と同じ80インチのホイールベースに、現行ジムニーより狭いトレッド、そんな小ぶりな車体に不釣り合いな太いアクスルと、見るからに捻れない閉断面構造のラダーフレームを持つ。あらためて車体寸法を見直すと、現行ジムニーよりコンパクトで軽いことに驚かされる。

 TAFTとは Tough & Almighty Four wheel Touring vehicle の略。その意味合いより、まずタフさが印象付けられるキャッチーなネーミングは秀逸だと思う。しかし、これは新型TAFTだと Tough&Almighty Fun Tool の略というふうに変わっている。なるほど2WDモデルの設定があるからか…。

 当初の車両型式は4人乗りのF10と、リヤオーバーハングを延長して6人乗りとしたF10L。昭和50年排ガス規制適合後は、型式の頭に H- がついて、H-F10(L)などとされた。

 4ナンバーゆえ、乗用車の排ガス規制と施行年度や排ガス記号が異なるためピンとこないかもしれないが、四駆では三菱ジープやジムニーエイトにも付与され、小型トラックやバンでも多く見られる記号である。規制内容はまだゆるやかで、複雑な配管類や触媒装着によって性能を犠牲にされてはいない。

 当時としては高回転型で、レスポンスの良い58psのFE型エンジンに、低い減速比を組み合わせる。その走りはライトウェイトスポーツに似ていると評されながら、路上での非力さは否めなかった。悪路を走るにはパワーなどいらないが、販売上は大排気量のジープや維持費の安いジムニーに対抗するのは難しかった。諸元上の最高速度は100km/hだが、実際は80km/h巡行も疲れる。

 きわめて強靭なシャシーも当時は評価の対象になりにくく、カタログでもアピールされてはいなかった。良くデザインされたボディはオモチャっぽく映ったかもしれない。

エンジンはコンソルテに使われたFE型。「4輪駆動車史上、初の1000cc」と書かれている。当時、ジムニーの360cc水冷エンジンの上は、いきなりジープのKE47型2.3ℓで、その上は6気筒のランクルのF型3.9ℓとパトロールのP型4ℓだった。隙間を突く意味は大きい。三菱ジープは4DR5型2.7ℓディーゼルエンジンのJ54が燃費の良さと小型登録で好評を博し、追随したランクルがダイハツ製B型3ℓを採用するタイミングだった。乗用車でも2ℓ車は高嶺の花だった頃、四駆はみんなデカかった。一直線のラダーフレーム、前後リーフリジッドの足、古典的な三軸オフセットドライブ式のトランスファ、センターブレーキ、後部対面シート、可倒式フロントウインドウ、6.00-16サイズのタイヤetc 三菱ジープに準じている。ちなみにカタログのこの図が掲載されているページは、「日本の風土にほんとうに適した四輪駆動車とは…」という妙に沁みる文言で始まっている。 性能面はさておき、安全装備の先進性は認められる。ボディ一体構造のロールバーと、それによって実現した3点式シートベルトは、ジープ・タイプの車では初めての装備。乗用車で義務化されていたステアリングロックが備わることも自慢だった。
 幌ドアを外した場合の安全バーもしっかりした造りで、カタログでは「ドアと連動するデュアル・サイドガードバー」と謳われている。布ベルトをフックに掛けるだけのジープや細い一本棒をガチャンと差し込むジムニーより、ずっと安全で便利だった。

安全装備が見て取れる。多くの四駆はロールバーもなく2点式シートベルトだった。レジャーより工事現場のパトロール、山間僻地や狩猟の足などが主な用途に想定されていることがわかる。右側の性能比較で引き合いに出されたA社4輪駆動車(ピンク色)とは三菱ジープJ52、B社の車(水色)はジムニーLJ20を指す。オプションのウインチは電動ではなく、ジープと同じ昭和飛行機製のPTO式。この場面のように、ワイヤーをつないでバックで引っ張ろうとしてはいけない。現在では運よく初期型タフトに出会えたとしても、こんな姿だったりすることが多い。残念。●ダイハツタフト F10(1974年) 主要諸元

寸法 全長3320mm×全幅1460mm×全高1860mm
ホイールベース 2025mm
トレッド 前/後 1200mm/1200mm
車両重量 975kg
エンジン FE型 直列4気筒OHVガソリン
総排気量 958cc 
最高出力 58ps/5500rpm
最大トルク 8.0kg-m/4000rpm
トランスミッション 4速MT 2速副変速機付き
ブレーキ前 2リーディング
ブレーキ後 リーディング・トレーリング
タイヤサイズ 6.00-16-4PR

■トヨタの1.6ℓを載せたF20タフトグラン

F20タフトグラン。本車登場の少し前に、タフトのグリル形状はスリットから長方形に変更されていた。 昭和51(1976)年9月にテコ入れが行なわれ、コロナやハイエースに使われたトヨタ12R-J型1.6ℓOHVエンジンを載せた、F20 “タフトグラン” を発売。従来のF10も尻の短い標準型のみ続投された。
 1000ccとの外見上の違いはボンネットの膨らみ。実際これがないと、エンジンは収まらない。強い心臓が載った証拠でもある。

当たり前だがカタログには「トヨタ製エンジンを搭載」なんて書いていない。10モード燃費は7km/ℓで、経験上の実燃費はこのくらいか、もう少し良い場合がある。排気量2ℓ超の三菱ジープに対して、特段に優れているわけではなかった。 F20で採用された黄色いボディをご記憶の方もいるのではないだろうか。それは林道の脇に放置してあったとか、解体屋に転がっていたなどかもしれない。

 私が初めて意識したタフトは、約30年前に見た、神奈川県は横浜北部の田園地帯で畦道に打ち捨てられたF20Lだった。車体には電設業者の看板文字があり、幌やドアは破れて筒抜け状態。勝手に乗り込んで長いシフトレバーをガチャガチャと動かして喜んでいたら、雨水が染み込んだ座席でパンツまで濡れた。写真を撮らなかったことが悔やまれる。

 タフトグランは従来比22ps出力向上、車重が75kg増加、排気量拡大に合わせてデフの減速比を5.571から4.777に高めている。

 まだ5速ミッションは夢の時代で、トップギヤは直結4速のまま。しかもトランスファーは通常使用のハイレンジでも1.3倍に減速された作業車的な性格だったから、高速不適応ぶりは相変わらずだった。

 そして昭和53(1978)年9月、自社製のDG型2.5ℓディーゼルを搭載したF50が追加されるが、それからのお話は後編へ続きます……。

4人乗り、後部を延長した6人乗りに、それぞれの幌ドアと鋼板ドア。そして延長型のバン。一機種だけ残された1000ccはF10S。昭和51(1976)年秋のラインナップだ。この時期には、標準車の型式末尾にShortのSの字が付け加えられた。カタログに掲載された純正オプションは2つだけ。マニュアル式のフリーホイールハブ(写真・上)とラジエターのリザーブタンク(写真・下)だ。前者の機能は今さら説明の必要もあるまい。後年普及したオート式のハブがきわどい地形での前進後退で勝手に解除されてしまったり、130系サーフで採用されたADD機構がフリーホイーリング効果自体が薄かったりするのに対し、「確実」の一語に尽きる。リザーブタンクについては、小排気量のガソリンエンジンに無理をさせるのだから標準装備で欲しかった。F20タフトグランの販促企画として日本三大アルプスの走破が行なわれ、冒険ツアー仕立ての冊子が作られた。あとがきは「決してラクではない9日間であった。しかし、それだけに偽らない性能を体験できたのだと思う。そしてタフト・グランは、プロドライバーではない私たちの、無茶とも思えるトライと過酷な運転に、立派に耐えてくれた」と結ばれている。幌の脱着は実際には「こんなに簡単」ではない。ネジ止めや紐で縛った箇所が多く、幌骨の置場にも困る厄介な代物だった。後年、簡易脱着幌が選べるようになった。トラック型の幌骨に変わって、乳母車式に畳めるフレームをバックル固定した構造で、外した幌布を巻きつけて走ることができる。タフトグラン同様、トヨタから12R-J型エンジンの供給を受けたSV17T デルタ1500、1.5t積みトラック。エンジンの型番は12、クルマの名称は1500、型式は17…!? 本当に1.6ℓだっけと悩んでしまった。●ダイハツ タフトグラン H-F20S(幌ドア) (1976年) 主要諸元

寸法 全長3320mm×全幅1460mm×全高1860mm
ホイールベース 2025mm
トレッド 前/後 1200mm/1200mm
車両重量 1060kg
エンジン 12R-J型 直列4気筒OHVガソリン
総排気量 1587cc 
最高出力 80ps/5200rpm
最大トルク 12.5kg-m/3000rpm
トランスミッション 4速MT 2速副変速機付き
ブレーキ前 2リーディング
ブレーキ後 リーディング・トレーリング
タイヤサイズ 6.00-16-4PR

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みんなのコメント

6件
  • 小学生の時に読んだ児童向けの自動車大百科というような本で、安全のためのロールバーが標準装備されている唯一のジープ型のくるま、みたいな解説がされていたと記憶している。
    それからだいぶ後になってのことだが、開発していた頃に当時の運輸省が、自動車の安全装備の充実について自動車メーカーにヒアリングを行ったところ、幌型車へのロールバーの標準装備化に対しては、トヨタ、日産、三菱等改良が必要となる既存車種を持っていたメーカーが難色を示したので先送りになったが、タフトは先を見越してロールバー標準装備という対応をした、という話を何で読んだかもう忘れたが知ることができた。
  • どう見ても初代ジムニーにしか見えん
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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