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シビック e:HEVで真夏のレースを戦う【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

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シビック e:HEVで真夏のレースを戦う【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

車の最新技術 [2024.08.19 UP]


シビック e:HEVで真夏のレースを戦う【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】
文●石井昌道

エンジン車が生き残れる夢の燃料【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

 次世代のモータースポーツシーンを見据えてハイブリッドカーでレースに挑むプロジェクトであるシビックe:HEVによるJoy耐(もてぎEnjoy耐久レース)への参戦。

 モータージャーナリストで結成したTOKYO NEXT SPEEDとホンダのエンジニアのコラボによるもので、2020~2023年のフィットe:HEVに続くものでシビックe:HEVにスイッチしてからは2戦目となる。初戦は2023年12月のミニJoy耐の2時間耐久レースで、気温が低くうえに走行時間も比較的に短かったが、今回のJoy耐は7月開催で7時間耐久レースでマシンには酷な状況でもある。

 もともとこのプロジェクトは、ハイブリッドカーなど次世代パワートレーンでエンジン車主体のレースに出たらどうなるのかというモータージャーナリストの興味本位の目的から始まり、市販車ベースでレースに出ると熱害などが心配なのでホンダのエンジニアに相談したことからコラボが決まり、いまではe:HEVの市販車開発のフィードバックに活用されている。開発目的としては過酷な状況は望むところではあるものの、レースウィークの金曜~日曜は連日38℃に達するという暑さだった。

 マシンの仕様は市販車のシビックe:HEVをベースに、ハイブリッドシステムは制御をレース用に変更。具体的にはエンジン回転数を高めに保って発電量を増やし、減速時の回生量も増やしている。一般道を走っていると頻繁にエンジンが停止して燃費を稼いでいるが、その制御のままサーキットで全開走行すると、すぐにバッテリーの電力がつきてしまって遅くなるから、電力確保するのが主な目的だ。1周のラップタイムだけを追求する予選仕様と安定したラップタイムを刻み続ける決勝仕様の2つが存在する。

 夏のレースで肝要な熱対策は、まずフロントバンパーの開口部を拡げるとともに、エンジンラジエターとATFクーラー、ハイブリッド・ラジエター(CPU冷却用)をTRUST製のレース用に換装している。

 サスペンションとブレーキシステムはエンドレス製で、昨冬に比べて仕様やセッティングが進化している。フィットe:HEVのときはブレーキはパッドのみをレース用にしていたが、シビックe:HEVではフロントのキャリパー&ローターも大型化した。ノーマルでも大きな問題はないものの、もてぎはブレーキに厳しいサーキットであることからビッグキャリパー採用に至ったのだが、容量が大きく余裕があることでコントロール性も向上したことは嬉しいところだ。サスペンションは全長式車高調でキャンバー角の変更幅も拡大。タイヤは横浜ゴムのモータースポーツ用であるアドバンA050としている。昨冬は燃費向上も考慮してラジアルのアドバンA052を採用していて、それもグリップ力やコントロール性は優れていたのだが、サーキットでの耐久性を考えるとA050のほうが有利と判断したうえでのスイッチだ。

 軽量化も大きなテーマであり、M-TEC製のカーボンボンネット(ダクト付き)、リアガラスのアクリル化、軽量テールゲート、TRUST製のチタン・エキゾーストを始め、ヘッドライト内部など細かい点でも追求している。現在の車両重量は1323kgで昨冬に比べると36kgの軽量化を果たした。

さらに、今回から採用しているのがLSD(リミテッドスリップデフ)で、これによるラップタイム向上には大きな期待がかかっていた。

 テスト走行ではLSD装着によってフィーリングもラップタイムも大きな変化があった。シビックe:HEVのようにFWD(前輪駆動)でサーキットを走ると、コーナーの立ち上がりでフロントのイン側が空転してタイムロスすることが多い。e:HEVはモーター駆動のためトルクが太く、エンジン車よりもそれが顕著だ。LSDを装着すると空転が抑えられるとともに、ステアリングを切った方向へ引っ張ってくれるので早めにアクセルを踏み込んでいくことで旋回力も増すという二重の効果があり、走らせていても気持ちがいい。FWDの電動スポーツカーとLSDの組み合わせは鬼に金棒なのだ。

 ラップタイムは昨冬のミニJoy耐が2分23秒651だったのに比べて2分22秒882へと0.769秒の向上。気温が30℃台後半という不利な状況であったことも踏まえると期待通りかやや上回る進化だった。それよりも決勝仕様の平均ラップタイムの進化はさらに大きく、ミニJoy耐時の2分31秒8から2分30秒4へと1秒以上の向上を果たしながら、燃費も6%ほど改善。Joy耐で上位を狙うには、さらに2秒前後のラップタイム向上と燃費の2~3%の改善が必要と見立てているから志半ばといったところだが、それなりに順調に開発が進んでいると言えるだろう。

 予選結果は63台中24位と中間よりも上となった。Joy耐は参加台数が多いため、決勝のローリングスタートは2組に分かれる。フィットe:HEVのときも含めて毎回予選順位が中間を上回ったのは初で、上位組でスタートできるのは1分近く有利となる。少しづつだが上位入賞の目標に近づいているのだ。

 決勝も順調に進んだ、と言いたいところだが、最高気温38℃の状況で長く走り続けるのは厳しく、途中でペースダウンを強いられることもあった。これまでのテスト走行ではロングランでも水温は109℃が上限だったが、決勝スタートから4時間を超え、自分がステアリングを握っていたときに124℃を超え、フェールセーフ(マシンを保護するための制御)が入った。パワーが落ちることはなかったのだが、バッテリー冷却を主目的とするエアコンがオフになったのだ。じつはエアコンは車内を冷やす市販車では本来の目的へも使われていて、ドライバーとしてはエンジン車よりは少し楽だったのだが、エアコンオフになると車内が灼熱地獄になってしまった。幸いにしてエアコンオフで走行を続けると水温が閾値よりも下がってことなきを得たが、真夏のレースではさらに冷却強化が必要だということが明らかになってしまった。

 レースでは熱によるちょっとしたトラブルや、セーフティカーの導入によって想定周回数が減り、それによって給油回数を1回減らしたところ後半は燃費がきつくなるなど、ポテンシャルを生かし切れなかったこともあって43位に終わった。

 後のデータ解析では、走らせ方でラップタイムや燃費を向上させるヒントも見つかった。さらなるマシンの進化も含め次戦10月20日のミニJoy耐へ向けて大いに期待したいところなのだ。

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