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フレイザー・ナッシュ-BMW 326 当時のベスト・サルーン 80年のサバイバー 前編

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フレイザー・ナッシュ-BMW 326 当時のベスト・サルーン 80年のサバイバー 前編

アウトバーンを110km/hで駆け抜けるため

ピンチはチャンス、という考え方がある。望ましくない状況から、望ましい結果が生まれることもゼロではない。例えば、独裁者のアドルフ・ヒトラーが自国の自動車へ免税を実施しなければ、ドイツは現在のような自動車大国になっていなかった可能性もある。

【画像】フレイザー・ナッシュ-BMW 326と後継といえるブリストル400 最新3シリーズも 全61枚

自動車を発明したといえるドイツだが、技術的に進んだ自動車産業の価値を理解し、早期に国を挙げて推進していた。そんななかで、望まれない戦争へ向かおうとしていた1936年、BMWは新型サルーンの326を発表している。

現代的な直列6気筒エンジンを搭載し、ナチス政権によって敷設されたアウトバーンを、110km/hで駆け抜けられる性能が与えられていた。技術的に進んだ国であるという、当時の政権が広めようとしていたムードを、見事にカタチにしていた。

BMW 328は、当時の優れたスポーツカーだった。同時に326は、欧州でのベスト・サルーンの1台だった。広々としたスチール製ボディは丁寧に溶接され軽量で、5名分のシートが備わっていた。

シャシーは高剛性なボックスセクション。シャシーとボディのフロアが溶接され、チューブラー・シャシーより強固に仕上がり、そこに洗練されたサスペンションが組み合わされていた。

ホイールベースは2896mm。同じシャシーは、長さ違いで安価な320と321のベースにもなった。需要が増えることはなかったが、3.5Lエンジンを搭載した上級な335へも展開している。

縦長キドニーグリルを生んだシマノフスキー

326は見た目も良い。デザイナーを務めていたピーター・シマノフスキー氏は、無名ながら優れた才能の持ち主。滑らかな曲面で覆われたスタイリングは、モデルレンジを通じてBMWらしさ構成する要素だった。

BMWといえば、キドニーグリルを思い浮かべる読者も多いだろう。縦に長い2本のフロントグリルを描き出したのも、そのシマノフスキー。現在へと受け継がれる、ブランド・アイデンティティを生み出したデザイナーでもある。

家族へ向けた量産車として作られた326は、グランドツアラー・クーペの327とスポーツカーの328の兄弟でもある。BMWらしい雛形を確立したモデルでもあり、2シーターの活躍と同等かそれ以上に、重要な意味を持つと考える人も少なくない。

お披露目されたのは、1936年のベルリン・モーターショー。メルセデス・ベンツと直接対峙することになった、BMW初のクルマでもあった。生産開始は1936年6月。BMWのベストセラーへ成長し、戦争が始まる1941年までに1万5936台がラインオフしている。

そのうちの約1万3000台は、ドイツのコーチビルダー、アンビ・バッド社が手掛けた4ドア・ハードトップボディが架装されたサルーン。サイドウインドウが左右合わせて6面ある、シックスライトだ。

別のコーチビルダー、オーテンリーツ社による、ソフトトップを備えた4ドアと2ドアのカブリオレも提供されている。大型モデルのオープンカーという需要も、少ないながら当時から存在していた。

上質に回った小排気量の直列6気筒

当時のドイツ価格は、4ドアサルーンが5500ライヒスマルクで、カブリオレは7300ライヒスマルク。シャシー単体を、4450ライヒスマルクで購入することもできた。

航空機用エンジンの製造を起源とするBMWだけあって、小排気量の直列6気筒エンジンは洗練され、上質に回った。ロングストローク型のM78ユニットは、技術者のフリッツ・フィードラー氏が開発したものだ。

標準的な構造ながら設計に優れ、2077ccへ排気量が拡大されながら、1958年のBMW 501まで登用された名エンジンの1つ。326では319用のものに手を加え、1971ccが与えられていた。

クロスフローではないが、オーバーヘッドバルブと、サイドマウント・カムシャフトをチェーン駆動する構造を採用。シングルのソレックスキャブレターを載せ、バランスの取れたクランクシャフトを、4本のメインベアリングが支えている。

エンジンの下半分は、クロス・プッシュロッドでヘミヘッドの328用ユニットと共有していた。スポーツカー譲りの活発で賑やかな個性は、上級サルーンには適切ではなかったかもしれない。それでも車重1125kgの326を、充分なスピードに乗せた。

自然吸気の6気筒が生み出す最高出力は50psに過ぎないが、扱いやすく、信頼性も当時としては珍しいほど高い。高回転域でのパワフルさより、スムーズな粘り強さ側に設定が振られていた。

M78型エンジンは長時間の負荷にも耐えられ、アウトバーンを125km/hに迫る速度で巡航することも可能。加えて燃費も良好で、1度の満タンで480kmを走れた。

現代的な装備をいち早く導入

トランスミッションは4速MT。クラッチ操作なしで1速と2速を変速できる構造と、3速と4速には変速をしやすくするシンクロメッシュが搭載されてもいる。

何より運転好きのドイツ人を喜ばせたのが、ラック・アンド・ピニオン式の軽快なステアリングと、しなやかなサスペンション。当時は難しいと考えられていた、俊敏な身のこなしと上質な乗り心地とが両立できていた。

リア・サスペンションは、アスクル・ケースへ縦につながったトーションバーが特徴。フロントは先進的な独立懸架式で、横置きのリーフスプリングが、ロワー・コントロールアームの役割も兼務した。ショックアブソーバーも備わっていた。

ブレーキは、BMW初採用となったロッキード社製の油圧式ドラム。電気系統は、電圧6Vのボッシュ社製が組まれている。

車内にはステアリング・ロック機構に、セルフキャンセルされるウインカーレバー、角度調整できるフロントシートなど、今となっては当然といえる装備をいち早く導入。当時のクルマ好きを、強く惹きつけた要素の1つとなった。

かつて英国に存在したスポーツカー・メーカー、フレイザー・ナッシュ社の事業を引き継いだアルディントン家も、この326へ感銘を受けたのだろう。BMWを英国へ広めることになる。

この続きは後編にて。

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