かつてセダンといえば憧れの存在であったが、カローラやスカイラインと往年の人気モデルが軒並み厳しい状況。ほかにもN-BOXの陰に隠れがちなN-WGNなどなど、乗ればいいのに不人気のクルマはいくつも。一体なぜなのか!?
文/渡辺陽一郎、写真/TOYOTA、NISSAN、SUBARU、DAIHATSU、HONDA
いいクルマなのにな……やっぱセダンはキツイ!? 乗るとめっちゃいいのに販売厳しいクルマ5選
■いいクルマだけど売れない理由は「セダン」だから!?
販売が好調な車種は、多くのユーザーが使っているから優れた商品と判断されるが、売れていないからダメとはいえない。例えば今はスポーツカーの需要が減っており、優れた商品でも好調に販売するのは難しい。
そこで良いクルマなのにあまり売られない車種を取り上げて、その理由、優れた特徴、こうすれば売れるのに、といったことを考えたい。
2022年にマイナーチェンジが実施されたカローラセダン。ガソリン車は1.5Lに縮小された一方で、ハイブリッド車はモーター出力が向上した
●コンパクトセダン:トヨタカローラセダン
*2022年の1カ月平均登録台数:約800台
カローラセダンの2022年における1カ月平均登録台数は約800台だ。カローラシリーズ全体では1万台を少し上まわったから、カローラセダンの販売比率は8%前後に留まる。
この販売実績は、5ドアハッチバックのカローラスポーツ、継続生産型のカローラアクシオを少し超える程度だ。カローラシリーズで登録台数が最も多い車種は、SUVのカローラクロスになり、シリーズ全体の約45%を占める。
カローラセダンが売れない一番の原因は、当然だがボディタイプがセダンになることだ。今はセダンの販売が全般的に低調で、いかに商品力を高めても売れ行きを伸ばしにくい。販売ランキングの上位に入るセダンは皆無だ。
ただし販売は低調でも、セダンの良さは満喫できる。マイナーチェンジではノーマルエンジンが従来の1.8Lから1.5Lに縮小され、リヤサスペンションもダブルウイッシュボーンの独立式からトーションビームの車軸式に簡素化された。それでもハイブリッドは1.8Lで、足まわりも4輪独立式だ。
セダンなら後席とトランクスペースの間に骨格も備わるから、ボディ剛性が高く、走行安定性と乗り心地も満足できる。ハッチバックやSUVに比べると、後輪が路上を転がるときに発するノイズも車内に伝わりにくい。3ナンバー車になった今でも、セダンの中ではボディがコンパクトで、混雑した街中でも運転しやすい。
セダンボディである以上、売れ行きを伸ばすのは難しいが、カローラスポーツに搭載されるパワフルな2Lエンジンを設定する方法はある。グレード名は往年のDOHC(ツインカム)エンジン搭載車と同様の「GT」にすれば、セダンのクラシックな魅力も際立ってくる。
最高出力が405馬力のV型6気筒3Lツインターボを搭載する400Rが魅力的なスカイライン
●Lサイズセダン:日産スカイライン
*2022年の1カ月平均登録台数:約170台
セダンは全長が4800mmを超えるLサイズも売りにくい。特にスカイラインは、以前設定されていたハイブリッドを廃止して、進化した運転支援機能のプロパイロット2.0も選べなくなった。
さらに衝突被害軽減ブレーキは、歩行者を検知できない。今は軽自動車を含めて、歩行者検知が常識になったから、価格の高いスカイラインが4輪車のみを対象にするのは困る。改善が不可欠だ。
逆にスカイラインの優れた機能としては、走行性能が挙げられる。エンジンはV型6気筒3Lツインターボで、動力性能の高い400Rは最高出力が405馬力、最大トルクは48.4kg-mだ。V型8気筒4.5Lの自然吸気エンジン並みの性能になる。後輪駆動とあって前後輪の重量配分もバランスが良く、走行安定性も満足できる。
Lサイズセダンは、大量に売るのが難しいカテゴリーだが、NISMO仕様などさらにスポーツ性を高めたモデルも欲しい。フルモデルチェンジを行って全長を4600mm前後に抑えたいが、これは難しいだろう。
■先代モデルはとても売れてたのに…なぜ現行型は売れない?
キレのある変速感覚を提供するWRX S4のCVTだが、6速MTの追加も期待したい
●ミドルサイズセダン:スバルWRX・S4
*2022年の1カ月平均登録台数:約300台
発表は2021年11月だから、設計は新しいが、売れ行きは低迷している。納期を販売店に尋ねると「3~4カ月」だから、特に長くないのに、2022年の登録台数は1カ月平均が約300台に留まった。
伸び悩む理由は、WRXのようなスポーツ指向のセダンが人気を下げたことだ。しかもWRX・S4は、CVT(無段変速AT)装着車になる。先代WRXは、CVTを搭載するS4に加えて、各種のメカニズムが異なる6速MT専用のSTIも用意していた。
先代型のSTIは、現在のWRX・S4・STIスポーツRとは異なり、モータースポーツの参戦も視野に入れたチューニングのベース車両だった。このようなクルマ好きにウケるマニアックな取り組み方が、現行WRX・S4では薄れてしまい、充分な支持を得られていない。
今後の展開としては、6速MTの追加などが考えられる。また全長は4700mm以下だが、先代型に比べるとボディが大型化され、エンジン排気量も2Lターボから2.4Lターボに拡大された。これによって実用回転域の駆動力は高まったが、最高出力や最大トルクは下がっている。好調に売るためには、動力性能の数値を高めることも大切だ。
■個性派な軽「コペン」の魅力アップさせるには?
標準モデルでもスポーティな走る楽しさを味わえるが、モータースポーツのノウハウを活かしさらに走行性能を高めたコペンGRスポーツも用意
●スポーツクーペ:ダイハツコペン
*2022年の1カ月平均届け出台数:約550台
今は新車として売られる乗用車の40%近くが軽自動車になった。そして軽乗用車の約50%は、全高を1700mm以上に設定してスライドドアを備えるスーパーハイトワゴンだ。
そのために背の低い軽自動車は、価格を徹底的に安く抑えたアルトとミライース以外、売れ行きが低迷する。軽自動車サイズのクーペとなるダイハツコペンは、2022年の1カ月平均届け出台数が約550台だ(トヨタが扱うコペンGRスポーツを含む)。流行からはずれて、タントの6%しか販売されていない。
しかしコペンは魅力的な商品だ。軽自動車だが内外装は上質で、電動開閉式ハードトップも標準装着する。低重心でコンパクトなボディは、峠道などの運転も楽しい。道幅の狭いちょっとしたS字カーブでも、スポーティな走る楽しさを味わえる。
バリエーションも豊富で、標準タイプのコペンローブに加えて、丸型ヘッドランプのコペンセロ、専用の内外装やサスペンションを備えたGRスポーツも選べる。
こういった車種は、細々とでも長く造り続けることで、ユーザーにメリットをもたらす。衝突被害軽減ブレーキを装着するなど、改良を加えながら今後も存続させて欲しい。
■スーパーハイトワゴン市場が強すぎる!! 同じ軽自動車でも販売が大苦戦
2022年に実施されたマイナーチェンジでは、ホンダ初となる急アクセル抑制機能を採用したN-WGN
●ホンダN-WGN
*2022年の1カ月平均届け出台数:約3500台
2022年の1カ月平均届け出台数は約3500台だから、ほかの車種に比べてヒト桁多い。それでもN-BOXは、2022年の1カ月平均届け出台数が約1万7000台だったから、N-WGNはその20%しか売られていない。
N-WGNの売れ行きが伸び悩む一番の理由は、N-BOXの高人気だ。今はスーパーハイトワゴンが圧倒的で、特にN-BOXは、ライバル車のタントやスペーシアと比べても届け出台数が約2倍に達する。その結果、N-WGNは存在感が相対的に乏しくなり、N-BOXに需要を奪われた。
スズキの販売店では「ワゴンRのライバル車は、ホンダ車ならN-WGNになるハズだが、実際に競争するのはN-BOXだ。ハスラーを検討するお客様も、N-BOXと比べることがある」という。ホンダの軽自動車は、用途に関係なくN-BOXが売れ筋だ。
ところが実際には、N-WGNのメリットも多い。ボディが軽いから、N-BOXよりも動力性能や燃費が優れている。シートアレンジが単純な代わりに、後席の下側には、横幅が約1mのワイドなトレイを装着した。傘や靴などを収納できる。荷室の床も低く、専用のボードを使うと、上下2段に分割して棚のように使える。
さらにN-BOXの標準ボディのLは、価格が157万9600円だが、N-WGNの同グレードなら139万9200円に収まる。従ってホンダの軽自動車を合理的に選ぶときは、まずN-WGNを検討する。その上で、もっと広い室内やスライドドアが欲しいと思ったら、N-BOXも選択肢に含めるのが良い。
N-BOXが超絶的な人気を得ているので、N-WGNの売れ行きを増やすのは難しいが、販売店からは「フロントマスクに対するお客様の評判がいま一歩」という話が聞かれる。そこでカスタムを中心に、フロントマスクのデザインを改善したい。またN-BOXにはSUV風のグレードがないため、N-WGNに、フリード/フィットクロスターのような仕様を追加すると良い。
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
みんなのコメント
みんなと同じモノを買わないといられない
矮小な日本民族