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最新の「プジョー 9X8」から、ル・マン24時間レースに挑戦したマシンを振りかえる【プジョー今昔ストーリー/その10】

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最新の「プジョー 9X8」から、ル・マン24時間レースに挑戦したマシンを振りかえる【プジョー今昔ストーリー/その10】

「温故知新」の逆というわけではないが、最新のプジョー車に乗りながら、古(いにしえ)のプジョー車に思いを馳せてみたい。今回は番外編というわけではないが、2022年のル・マン24時間レースに参戦する「9X8」から、懐かしのレーシングマシンを振りかえってみたい。(タイトル写真は、上が1937年のル・マンでクラス優勝した402 ダールマ、下が9X8)

2022年、プジョーは「9X8」でル・マンに参戦する!
2021年8月21~22日に行われたル・マン24時間レースは、トヨタの4連勝で幕を閉じた。同じクラスで自動車メーカーのライバル不在という寂しさもあったものの、2022年以降のル・マン(世界耐久選手権/WEC)にライバルの参入が予定されている。中でも最初に登場する見込みとなっているのが、プジョーだ。

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プジョーが2022年からの参戦を目指して開発を続けてきたマシン「9X8」は、2021年7月に発表され、そのスタイリングの独創的なカッコよさに驚かされた。プジョーの最新市販モデルに通じる斬新なヘッドライトには、既存のレースマシンとは一線を画す新鮮さを感じる。

また、一般的にボディよりも高い位置に配置されるリアウイングを持たないことも特徴で、ダウンフォースはボディ下面とダックテールのようなボディ一体型スポイラーで発生させると見られる。9X8は空力性能にある程度の制限を課せられるWECの新しいカテゴリー「ハイパーカークラス」に属しており、プジョーが独自のスタイリングを採用できたのは、この制限にもよるようだ。

コクピットからもデザイン面のこだわりを感じさせ、市販車と同じ「iコックピット」が採用されているという。カラーリングはプジョー スポールの新しいテーマカラーである、グレーとライトグリーンで構成される。

パワートレーンはエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムとなる。500kW(680ps)を発生する2.6L V6ツインターボエンジンでリアを駆動し、200kWのモータージェネレーター ユニット(MGU)でフロントを駆動する。この4WDハイブリッドの構成は、2021年9月25日にフランス本国で発表された市販のプジョースポールモデル「508PSE(508 プジョースポールエンジニアード)」と少し似ている。とはいえ、もちろんまったくの別物なのだが、市販車とリンクした技術といえるだろう。

リチウムイオン電池は、フランスの大手バッテリーメーカー「サフト」と共同開発している。サフトは石油会社トタルのグループ会社で、プジョースポールは常にトタル(かつてはエッソ)と組んでモータースポーツ活動を行ってきた。また、プジョー擁するステランティスとサフトは、2020年9月に合弁でバッテリーのギガファクトリー「オートモティブ セルズ テクノロジー」を設立しており、これはプジョー(ステランティス)の電動化計画における重要な事業である。こうした計画に連動して、ル・マン参戦プログラムが遂行されているわけだ。

プジョーが本格的にル・マンに挑んだのは1990年代から
モータースポーツ活動で名前を挙げるという、エンジン車の時代に行なってきたことを、プジョーは新たな電動化時代に再現しようとしているようにも見える。プジョーは、世界最初の自動車レースといわれる1894年のパリ~ルーアンに参加して勝利を収めていた。また1910年代には世界初のDOHCエンジンを搭載して、グランプリレースをはじめ、多くのレースで活躍したことでも知られる。

しかし、プジョーはその後の長い期間、本格的にレース参戦することはなかった。地元フランスのル・マン24時間レースにこそ、1930年代にエミール・ダールマ製作のマシンで、また1960年代にシャルル・ドゥーチュ製作の「CDプジョー」で挑んだこともあった。ただ、それらは小排気量クラスに属しており、総合優勝を狙えるような参戦ではなかった。

プジョーが本格的にル・マン24時間レースへ挑んだのは、1990年代に入ってからである。プジョーは1980年代に205T16によってWRC(世界ラリー選手権)を席巻し、続いてラリーレイドのパリ~ダカールも制覇。その勢いのまま挑戦を始めたのがSWC(スポーツカー世界選手権)/ル・マンの耐久レースで、ここに「905」を持ち込み勝利を飾った。プジョーはこの3つのカテゴリーでことごとく勝つことで、モータースポーツに強いメーカーへとイメージチェンジを成し遂げるのである。

ル・マン24時間レース制覇のあとに挑戦したF1で初めての失敗を喫したのだが、それでも、すぐあとに再挑戦したWRCでしっかり勝って仕切り直し。近年ではダカールラリーでも勝ち、「必勝のプジョー」を取り戻している。出るからには必ず勝つのが、プジョーのオペレーションなのだ。

905は1990年にSWC参戦を始めた。この頃のSWCマシンはF1と共通化された3.5L NAエンジンを新たに採用されており、プジョーはF1を視野に入れてル・マン参戦を決めたといわれている。905は、最新の9X8と同様にスタイリングに重きを置いて開発されており、プジョーはレーシングマシンであってもデザインを重視するメーカーであると改めてわかる。1991年から改良型が投入され、1991年・1992年とル・マンで見事2年連続優勝。1992年には1-2-3フィニッシュを飾る。プジョーはレースに対して戦略的、攻撃的、革新的にアプローチするタイプで、参戦開始から結果を出すまでがとにかく早い。モータースポーツの適性が高いのではないかと思われる。

次なるル・マンへの挑戦は、ディーゼルエンジン搭載モデルが有力な勢力となっていた2007年からだった。プジョーは歴史的にディーゼルエンジンに強く「この戦いには負けられない」という自負があったはずだ。そこで投入された908はやはり当初からスピード面で最速と言われ、期待も強かった。ところが、1年目、2年目に当時のル・マンに君臨していたアウディ(R10 TDI)に敗れてしまう。

しかし、3年目となる翌2009年に見事優勝、雪辱を果たした。さらに翌2010年も参戦を続け、908ハイブリッド4の開発も進めた。ただ、残念ながら欧州経済危機の状況から2011年をもって撤退している。

それがここへきて、ハイブリッドマシンの9X8として実行に移されることになったわけだ。プジョーは近年のトヨタと違って、参戦を継続しているわけではないが、にわかづくりの挑戦でもない。2022年から、果たしてどんな活躍を見せるのか、今から楽しみでならない。(文:武田 隆)

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みんなのコメント

1件
  • 個人的には905 EVO2のデザインが好きでしたね、今に通づる革新的で速さもありました。
    実際レースでは使用がなく見ることが少なかったですが…
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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