トヨタの大型ミニバン「アルファード」の販売が好調だ。小川フミオがあらためて試乗し、その理由を考えた。
新幹線のグランクラスを彷彿とさせる2列目シート
走るオフィスとか走るラウンジが欲しい、なんていう超いそがしいひとには、トヨタ「アルファード・エグゼクティブラウンジ」は選択肢のひとつだろう。メルセデス・ベンツ「Sクラス」が、機能面からいうと、現時点で最高のラウンジカーかもしれない。でも、アルファードという”解”もあるのだ。
最新の大型セダンの場合、後席のセリングポイントは、空間的な余裕だけではない。いってみれば、もてなしの深度にある。
新型Sクラスのロングボディでは、後席シートバックのリクライニング機能やインフォテインメントシステムの充実にくわえ、「ハイ、メルセデス」の呼びかけで起動するボイスコントロールシステムが、後席左右で個別に使える。
「ちょっと暑いんだけど」といえば、コマンドを出した自分が座っている席のエアコン温度を、車載AI(人工知能)が調節してくれる、というぐあい。いっぽうで、高めの着座位置から周囲を眺め、東北や北陸新幹線のグランクラスを思わせる椅子型のラウンジシートを好むひとには、アルファード式のエグゼクティブシートはアリだろう。
なにより、価格差だ。メルセデス・ベンツSクラスのロングボディの「S500」が約2000万円からなのに対して、アルファードは760万円ほどで手に入る。2列目シートでまったりしたいひとにとって、ありがたいことだろう。
今回乗った「アルファード・エグゼクティブラウンジ」は、シリーズ全体として、2021年5月10日に、ごく軽いマイナーチェンジを受けている。シリーズ全体としては、ワンタッチスイッチ付デュアル(両側)パワースライドドアと、アクセサリーコンセントが標準装備になった。
同時に、このエグゼクティブラウンジ(とエアロパーツ装備の「エグゼクティブラウンジS」)では、後席からの視界を広げるべく、可倒式の助手席ヘッドレストが採用されている。さらに2列目の居心地を重視した仕様なのだ。
エグゼクティブラウンジのシートはほかのグレードより大型化されているのも特徴で、ネガは、3列目シートへのアクセス性がいまいちな点。
3列目シートは、より大きなサイズのミニバンである「グランエース」ほどではないにしても、おとなだって座れる。それだけに、ファミリーで使おうなんてひとは、2列目シートがじゃまして、からだが通りにくいエグゼクティブラウンジは避けておくのが賢明かもしれない。
もちろん、使用目的に応じて最適の解を与えてくれるのは歓迎すべきコンセプト。したがって、エグゼクティブラウンジに文句をいう筋合いはないのだけれど。
ドライバーズシートも悪くない
エグゼクティブラウンジは、もっとも売れているモデルというわけではないが、これもまた、アルファードを代表するグレードである。そもそも、現在の3代目アルファードは、2015年に“大空間高級サルーン”を謳って登場した。そのコンセプトに合致していると思う。
それまでもエグゼクティブパワーシートを備えた仕様は、アルファードに設定されていたものの、3代目では、2列目シートを中心とした空間がよりぜいたくになっていることに驚いた記憶がある。
3代目では発表のとき、操縦安定性と室内静粛性をともに高めたこともアピールしていた。ボディでは高張力鋼板がより多く使用され、同時に、剛性感をあげつつ、しなやかさを増す構造用接着材の塗布面積も拡大された。リアサスペンションは、2代目のトーショナルビームからダブルウィッシュボーン式へ変更されている。
その恩恵は、じつは、ドライバーズシートで大きく感じられる。全長4945mmで、全高1950mm、そして車重2240kgと、ミニバンなんて呼びたくないぐらいの大きさの図体。でも、操縦性はなかなかのものなのだ。
ひとつは、加速性だ。2493cc直列4気筒ガソリンエンジンによる206Nmの最大トルクに、モーターが139Nm上乗せされるだけあって、発進からスムーズだ。
同時に感心したのは、アクセルペダルに載せた足の力を抜いていったときの加速のコントロール性のよさだ。たとえば、踏みこんだ量の半分戻せば、その量で加速が続く。
おかげで、意外なほど走りやすい。最近だと、レクサス車や、新型トヨタ「アクア」でも、おなじように感じた。
トヨタのエンジニアは、踏み込んで戻すときの加速性、ブレーキペダルなら減速量、ステアリング・ホイールでは切ってから戻していくときのボデォの追従性に注目していると言っている。いまのアルファードも、その考えにのっとって、きちんとファインチューニングされているように思う。
たとえ2列目シートがベストのエグゼクティブラウンジであっても、ドライバーに楽しみが残されている。ただし、やや残念な点も……さらに強くアクセルペダルを踏み込んだときの、加速の“つき”はよくない。まわしても、あまり楽しいエンジンではないのだ。内燃機関ゆえの魅力を味わわせてくれるという考えは希薄かもしれない。
売れ行き好調
静粛性は高く、乗り心地も重厚感がある。エグゼクティブラウンジには「T-Connect SDナビゲーションシステム+JBLプレミアムサウンドシステム」が標準装備(グレードによっては70万円超えのオプション)されているので、オーディオは重低音をしっかり出し、現代のポピュラーミュージックによく合った音を聴かせてくれる。
2021年は1月から6月にかけての半年の累計で5万6778台を販売し、乗用車では「ヤリス」「ルーミー」(ともにトヨタ)についで3位につけたアルファード(ヴェルファイアは46位)。
2021年前半には単月1万台超えも記録している。押し出しが強いものの、ヴェルファイアのように直線基調の”ガンダム”系でなく、すこしクラシックな格子を活かしつつクロームで飾りたてたグリルが人気の理由だろうか。
くわえて、時代の嗜好性を先取りするようなホワイト系の塗色のバリエーションも、マーケットのニーズに合致している。
759万9000円のエグゼクティブラウンジは、後席に座るひとのためのモデルであり、かつ高価。最量販グレードである「2.5 S Cパッケージ」に比して、15分の1ぐらいしか売れていないようだ。
とはいえ、それでも月販100台に迫るというから、やっぱり、マーケット動向をしっかり捕捉している。世のなかには、それだけ多忙なひとが多いということなのだろうか。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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みんなのコメント
世間では立派に見える車格とデザイン、一言で「良い車買ったなぁ」と言われる風格。
そして残価設定ローンだろうとそれが手に入る購入計画と購入後のアフターサービス。
総じてトヨタと言うブランドがバックボーンにある「選んで間違い無い」安心感。
そりゃ売れる。
トヤカク言う奴は自分が時代に取り残されている事、主義主張が既にマイノリティだと言う事を自覚した方が良い。
間違っても人前で「アルファードなんてオラオラ顔の〜」なんて言おうもんなら世間からズレたヤツと思われるぞ。
当時から2.4Lは非力だの色々言われてたが、街乗り中心では逆に扱いやすかった。
デカい割に見通しも良く車幅感覚もつかめ易いし、小回り効いてと
女性でも運転しやすい車だった。
ただ、それから買い換えようとなった時に同じアルファード以外に他の選択肢が無かった事。
何かしらアルファード以上の魅力がある車と言うものが残念ながら見当たらないのが現状なんですよ。