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4駆のポルシェ911、考察。本当に楽しい911の駆動方式は何か?:前編【Playback GENROQ 2016】

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4駆のポルシェ911、考察。本当に楽しい911の駆動方式は何か?:前編【Playback GENROQ 2016】

PORSCHE 911 TURBO CABRIOLET × TARGA 4S × CARRERA 4S × CARRERA S

ポルシェ911ターボ カブリオレ×タルガ 4S×カレラ 4S×カレラ S

4駆のポルシェ911、考察。本当に楽しい911の駆動方式は何か?:後編【Playback GENROQ 2016】

ポルシェ911の4WDモデルを一気試乗

今やポルシェの4WDモデルはリヤ駆動車と比べ、その支持率は上回っている。高性能化が著しいポルシェにとってもパワーを活かすのに好都合だろう。しかもパワートレインの熟成も進化の幅を広げ、さらに安定感は増している。そこで911ターボ カブリオレの日本上陸を機に、911ターボ、カレラ4S&タルガ4Sを題材にして、ジャーナリストの大谷達也にその効果と特徴を考察してもらうことにした。(前編)

「大パワーでこの安定したコーナリングは、高いボディ剛性と4WDの恩恵」

ポルシェほど4輪駆動の効果に早く気づき、現在に至るまで連綿とその技術を磨き続けてきたスポーツカーメーカーは他にない。

ところで4駆といえばトラクションの話題に陥りがちだが、実はコーナリング性能の改善にも効果があることを皆さんはご存知だろうか?

タイヤが発揮するグリップには、駆動力や制動力を生み出す縦方向のものと、コーナリング時に必要となる横方向のものの2種類がある。ただし、1本のタイヤが生み出すことができるグリップの限界は、縦方向と横方向を合算した値で決まり、それは縦方向と横方向の比率のいかんに関わらず、ほぼ一定となる。これをグラフに表したものが、いわゆるフリクションサークルである。そこから読み取れるのは、激しいコーナリング時には加速や減速が難しく、逆に激しい加減速中はコーナリングの能力が低下するという、どんなタイヤにも共通した特性である。

もしも4輪のうちの2輪だけが駆動輪だったとしたら、どうだろうか? それが限界的なコーナリング中だったとすれば、加速によって横グリップの能力が低下し、駆動輪だけがアウト側に流れることになる。したがって駆動輪が後輪であればオーバーステアに、前輪であればアンダーステアに転じるわけだ。

「ポルシェの技術者たちが4輪駆動を採り入れたのは、論理的な帰結だった」

では、4輪駆動だったら? もしも駆動力が4輪に均等に振り分けられているとすれば、1本のタイヤが受け持つ駆動力は2輪駆動のおよそ半分になり、より優れたトラクション能力を発揮できる。しかも、たとえ横グリップが限界に近い状態から加速したとしても、走行ラインは穏やかにアウト側に膨らむだけで、急激なオーバーステアやアンダーステアに転じることがない。つまり、2輪駆動よりもコーナリング中に受け入れられるトラクションに余裕があり、限界的なコーナリング時のステアリング特性はより安定するのが4輪駆動の特色なのである。

もちろん4輪駆動であれば直進時のトラクションも格段に改善できるほか、後輪駆動に比べると前輪駆動的な性格を帯びるために高速直進性も良好になるというメリットがある。RR方式を採用する911の直進性を確保するために四苦八苦してきたポルシェの技術者たちが4輪駆動を採り入れたのは、いわば論理的な帰結だったといえるだろう。

聞くところによれば、黎明期の自動車にはブレーキが2輪にしか装着されていなかったが、これでは安定性が欠けるために4輪に設けられるようになったとの説があるらしい。同じことを駆動輪に当てはめれば、4輪駆動こそが進化した駆動形式だといえないこともない。

実は4輪駆動のメリットに最初に気づいたのはフェルディナント・ポルシェで、彼は20世紀初頭から4輪駆動車の開発に取り組んでいたほか、60年代には4駆のF1マシンまで生み出している。その血筋を受け継ぐフェルディナント・ピエヒはアウディでクワトロを造り上げ、これは史上初のオンロード用フルタイム4WDとして一世を風靡した。いわば4駆に傾倒するのはポルシェ家のDNA。その思想が最新の911にも息づいているのは当然のことなのだ。

「私は911ターボの進化を思い知らされた」

911ターボ カブリオレで夜の街をクルージングする。今時、これほど高級なコンバーチブルカーのボディ剛性について議論するのはナンセンスかもしれないが、それにしても荒れた路面でさえボディは微動だにしないうえ、ステアリングもがっしりと取り付けられていて不安を与えず、ペダル類の踏み応えが他の911とまったく変わらないことには深い感動を覚えずにはいられない。しかも、いかにも緻密な回り方をする水平対向6気筒エンジンには、歯車の噛み合わせに遊びの片鱗さえ見受けられない駆動系が組み合わされ、えもいわれぬ高精度感を生み出している。そしてソフトトップを閉じればキャビンは静寂に包まれ、開け放てば涼しげな夜風が頬をなでる。これほどゴージャスなオープントップドライビングも、そうそう味わえるものではなかろう。

夜の街並みを離れ、高速道路に乗って郊外のホテルを目指す。ルーフを閉じているので車内は平穏そのもの。100km/h巡航では540psのパワーを持てあまし気味で、ターボエンジンはユルユルと回るのみ。しかもスロットルを緩めれば即座にコースティング機能が立ち上がり、エンジン回転を落として燃費とCO2排出量を改善しようとする。その知的な制御には舌を巻くばかりだが、気がつけば、隣の車線を走るコンパクトカーのペースが妙にシンクロして走りづらい。こんな状態が長く続けば事故の遠因ともなりかねないので、思い切ってスロットルを踏み込む。すると、わずらわしいと感じていたコンパクトカーは急停車でもしたかと思うような勢いでバックミラーのなかで小さくなっていく。そしてこの瞬間、私は911ターボの進化を思い知らされたのである。

「タイプ991 IIになって911ターボは質的変化を遂げた」

ターボラグとひとくちにいうが、私たちが気になるのはスロットルを踏み込んでもエンジン回転数はしばらく上昇せず、やや遅れてタコメーターの針が盤面を駆け上がるよりも前に爆発的なトルクが生み出される現象にあるのではないか? 回りくどい言い方になったが、回転数が一定のままいきなり大トルクが噴出し始めたら誰もが驚くに決まっている。

エンジン回転数が一定のままトルクだけが立ち上がるまでの時間をターボラグと規定するなら、歴代の911ターボは確かにターボラグの削減に努めてきたといえる。そしてタイプ991ではほとんど気にならないくらいまでターボラグは短縮された。それは大げさにいえば時代の終焉といってもいいほどの変化だった。

ところが、タイプ991 IIになって911ターボは質的変化を遂げた。前述したような追い越し加速では、スロットルを踏み込んだ瞬間にエンジン回転数が素早く上昇を開始。これが過給圧が高まって本格的な加速が始まるまでのわずかな時間を埋め合わせる効果を生み出すことで、より滑らかに速度が上昇する感覚を味わえるようになったのだ。

(後編に続く)

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ911ターボ カブリオレ

ボディサイズ:全長4507 全幅1880 全高1294mm
ホイールベース:2450mm
トレッド:前1541 後1590mm
車両重量:1655kg
エンジン:水平対向6気筒DOHCツインターボ
総排気量:3800cc
ボア×ストローク:102×77.5mm
圧縮比:9.8
最高出力:397kW(540ps)/6400rpm
最大トルク:710Nm(72.4kgm)/2250-4000rpm
トランスミッション:7速DCT
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
駆動方式:AWD
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前380×34 後380×30mm
タイヤサイズ(リム径):前245/35ZR20(9J) 後305/30ZR20(11.5J)
最高速度:320km/h
0-100km/h:3.1秒
0-200km/h:10.9秒
CO2排出量:216g/km
燃料消費率:9.3リッター/100km
車両本体価格:2502万円

ポルシェ911カレラ 4S

ボディサイズ:全長4499 全幅1852 全高1298mm
ホイールベース:2450mm
トレッド:前1543 後1558mm
車両重量:MT1490 PDK1510kg
車両総重量:MT1950 PDK1965kg
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHC24バルブ+ツインターボ
総排気量:2981cc
ボア×ストローク:91×76.4mm
圧縮比:10.1
最高出力:309kW(420ps)/6500rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1700-5000rpm
トランスミッション:7速MT/7速PDK
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
キャリパー:前6ピストン対向式アルミニウム製モノブロック 後4ピストン対向式アルミニウム製モノブロック
ディスク径:前350×34 後330×28mm
タイヤサイズ(リム径):前245/35ZR20(8.5J) 後305/30ZR20(11.5J)
最高速度:MT305 PDK303km/h
0-100km/h加速:MT4.2 PDK4.0秒
0-100km/h:PDK スポーツ・プラスモード時3.8秒
燃料消費率:MT8.9 PDK7.9リッター/100km
CO2排出量:MT204 PDK180g/km
車両本体価格(税込):MT1647 PDK1712.1万円

ポルシェ911カレラ S

ボディサイズ:全長4499 全幅1808 全高1302mm
ホイールベース:2450mm
トレッド:前1543 後1518mm
車両重量:MT1440 PDK1460kg
車両総重量:MT1900 PDK1915kg
エンジンタイプ 水平対向6気筒DOHC24バルブ+ツインターボ
総排気量:2981cc
ボア×ストローク:91×76.4mm
圧縮比 10.1
最高出力:309kW(420ps)/6500rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1700-5000rpm
トランスミッション:7速MT/7速PDK
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
キャリパー:前6ピストン対向式アルミニウム製モノブロック 後4ピストン対向式アルミニウム製モノブロック
ディスク径:前350×34 後330×28mm
タイヤサイズ(リム径):前245/35ZR20(8.5J) 後305/30ZR20(11.5J)
最高速度:MT308 PDK306km/h
0-100km/h加速:MT4.3 PDK4.1秒
0-100km/h:PDK スポーツ・プラスモード時3.9秒
燃料消費率:MT8.7 PDK7.7リッター/100km
CO2排出量:MT199 PDK174g/km
車両本体価格(税込):MT1519 PDK1584.1万円

ポルシェ911タルガ 4S(7速PDKのみ)

ボディサイズ:全長4491 全幅1852 全高1289mm
ホイールベース:2450mm
トレッド:前1538 後1552mm
車両重量:MT/PDK1575kg
車両総重量:MT/PDK1980kg
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHC24バルブ+ツインターボ
総排気量:2981cc
ボア×ストローク:91×76.4mm
圧縮比:10.1
最高出力:309kW(420ps)/6500rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1700-5000rpm
トランスミッション:7速PDK
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
キャリパー:前6ピストン対向式アルミニウム製モノブロック 後4ピストン対向式アルミニウム製モノブロック
ディスク径:前350×34 後330×28mm
タイヤサイズ(リム径):前245/35ZR20(8.5J) 後305/30ZR20(11.5J)
最高速度:MT/PDK294km/h
0-100km/h加速:MT/PDK4.6秒
0-100km/h:PDK スポーツ・プラスモード時4.4秒
燃料消費率:MT/PDK9.2リッター/100km
CO2排出量:MT/PDK214g/km
車両本体価格(税込):MT/PDK1913万円

※GENROQ 2016年 8月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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みんなのコメント

8件
  • 安全が一番なのだけれど、安全と引き換えに味も薄れてしまうのは仕方ないことですね。
    ターボラグも1つの味なのですがそこは万人受けではないのかもしれませんね。
  • 池沢さとし先生のせいで、
    どうしてもRRに魅力を感じてしまう。
    更には楠みちはる先生の影響もある。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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