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「お前はバブル期の宝石だったよ・・・」ライバルに差をつけるV6エンジンと3ナンバーボディで勝負に出た三菱エメロードを再考

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「お前はバブル期の宝石だったよ・・・」ライバルに差をつけるV6エンジンと3ナンバーボディで勝負に出た三菱エメロードを再考

称賛されるべきは個性的なスタイリング

高速ツアラーとしての実力はあなどれない!

それは80年代末から90年代前半にかけてのトレンドだった。主要国産車メーカーがこぞってラインナップしていたFF(と、車種によってはそれをベースとした4WD)の4ドアハードトップモデル。その一翼を担っていたのがフランス語でエメラルドを意味する、エメロードだ。

E84Aという車両型式から分かる通り、基本コンポーネンツは7代目ギャラン/5代目エテルナと共用。取材車両は2.0LV6DOHCの6A12型を搭載し、センターデフビスカスカップリング式4WDで駆動するスーパーツーリング4の4速AT車になる。

発売は1992年10月なので、このカテゴリーでは最後発。すでにトヨタのカリーナED/コロナEXiVは2代目となり、日産はプレセア、マツダはペルソナ/ユーノス300を市場投入していた。

そんなライバル達に対するエメロードの特徴は2つあった。ひとつは全幅1730mmの3ナンバーボディを採用したこと、もうひとつは主力エンジンにV6を据えたことだ。ライバルが持ち得ない上級志向を強めるこれらの要素を盛り込むことで、三菱は販売面でのアドバンテージを得ようと考えていたに違いない。

いざ実車を前にすると、まずはそのスタイリングに目を引かれる。曲面のみで構成されたボディは有機的で、ディティールを見ていけば、ボンネットからヘッドライト、フロントバンパーへと繋がるラインや前後フェンダーの膨らみなどに思わず惚れぼれする。ボディ色は車名をそのまま冠したイメージカラーのエメロードグリーン。光の加減によって様々な表情を見せてくれる。

ハイライトは真横からの眺めだ。V6エンジンが収まっているとは思えないほど低く抑えられたボンネット、そこから連続する緩やかな傾斜角とされたAピラーとCピラー、それらがもたらす伸びやかなキャビン…。

3ナンバーと5ナンバーの違いはあるが、エメロードはユーノス500同様に、そのスタイリングが称賛されてもいい。ちなみに、全高は1380(FF車は1370)mm。ライバルたちの1315~1335mmに対してエメロードの方がより低く感じるのは、デザインの巧みさによるところが大きいのだ。

続いて内装。ダッシュボードはエアコンやオーディオの操作面をドライバー側に向けるなど機能性を追求したデザイン。コンソール部にはオニックストーンパネルを採用することでラグジュアリー感を高めている。ステアリングはチルト&テレスコピック調整が可能で、ドライビングポジションの調整幅を拡げている。

メーターは中央にスピードメーターとタコメーターが並び、右側に水温計、左側に燃料計が配置される。

センターコンソールには、上からエアコン吹き出し口、デジタル式時計とハザード&リヤデフォッガースイッチ、スーパーツーリング4標準装備の6インチブラウン管を採用したTVシステム『ライブビジョン』、オートエアコン操作パネル、1DINオーディオスペース、シガーソケット&灰皿が並ぶ。ライブビジョンに代えて、ナビやTV、エアコンなどを一括管理する三菱マルチコミュニケーションシステム(MMCS)もスーパーツーリング4にはメーカーオプションとして設定されていた。

十分な厚みとほどよい硬さのパッドが与えられた前席は、着座時に上半身と下半身それぞれの重心を効果的にサポートする人体重心支持シートを採用。長距離ドライブ時の疲労を大幅に軽減する。

また、後席は背もたれをサイドにまで回り込ませたラップラウンドシートが特徴。ピラーやリヤシェルフとの連続性を持たせ、包み込む感覚を強調する。

搭載エンジンは、当時2LNAとしてはトップレベルの170ps/19.0kgmを誇った6A12型V6DOHC。φ78.4×69.0mmのショートストローク型で、実用域での扱いやすさを重視したSOHCの24バルブ仕様(145ps/18.5kgm)も存在した。DOHCは低中速用と高速用の2つの吸気ポートを備え、エンジン回転数に応じてそれらを連続的に切り替えて吸気特性を最適化する電子制御可変吸気システム(MVIC)も採用。

低回転域のトルク感が十分で4速ATとのマッチングも良く、1500rpmからでもアクセルを踏めば気持ちよく加速する。Dレンジでフル加速を試みると7000rpm+αでシフトアップ。エンジン回転の上昇はややもっさりした感じだが、その回り方は濃密で、パワーを高めながらというよりフラットなトルクで引っぱっていく感じだ。

また、4WDゆえ直進安定性に優れ、高速クルージングなども快適にこなせそう。ハンドリングはどっしりと落ち着いているが、ステアリング切り始めの動きは想像以上に機敏。中速域ではリヤタイヤがまず逆位相になり、その後、同位相に制御されるアクティブ4WSの効果で、コーナリング時は軽快感よりも安定感の方が勝っている。

スーパーツーリング4でこれだから、同じエンジンで車重が130kgも軽いFFのスーパーツーリングならば、もっとスポーティな走りを楽しめるはずだ。

ちなみに、1994年2月の一部改良でFTOに先駆け、6A12型 MIVEC仕様を搭載したスーパーツーリングRを設定。5速MTモデルは200ps/20.4kgm、4速ATモデルは195ps/20.6kgmとスペックが異なり、前者はアイドリング時や定速走行時に3気筒を休止させる可変排気量(MDモード)も採用されていた。

また、同年10月にマイナーチェンジ。1.8L直4の4G93がラインアップから外れ、6A12型2.0L SOHC(145ps)/DOHC(170ps)/同MIVEC(200ps)、6A11型1.8L SOHC(135ps)とV6エンジンに一本化された。

意欲作だったのにその個性が受け入れられず、90年代半ばの景気低迷もあって2代目に繋がらなかったエメロード。それはバブル末期、一瞬の輝きを放った緑色の宝石だったのだ。

■SPECIFICATIONS
車両型式:E84A
全長×全幅×全高:4610×1730×1370mm
ホイールベース:2635mm
トレッド(F/R):1510/1505mm
車両重量:1440kg
エンジン型式:6A12
エンジン形式:V6DOHC
ボア×ストローク:φ78.4×69.0mm
排気量:1998cc 圧縮比:10.0:1
最高出力:170ps/7000rpm
最大トルク:19.0kgm/4000rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式:FRマルチリンク
ブレーキ:FRベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:FR195/60R15

●PHOTO:小林克好(Katsuyoshi KOBAYASHI)/TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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みんなのコメント

71件
  • バブルの宝石、、、
    三菱ならディアマンテの方がそんな感じがするなぁ
  • ユーノス500は海外のカロッツエリアでさえ大絶賛したが、エメロードのデザインが評判だったとは聞いたことがない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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