富士スピードウェイで行なわれたスーパーGT第4戦で、ホンダのシビック・タイプR-GTがワンツーフィニッシュを飾った。シビックにとっては記念すべきGT500初優勝となったが、ホンダ・レーシング(HRC)の開発陣としてはこれ により、GT500クラスに“新風”を吹かせることができたと考えているという。
ホンダは今シーズンより、GT500のベース車両をNSX・タイプSからシビック・タイプRにスイッチ。これは市販車のNSXの生産終了を受けてのもので、後継車両として現行ラインアップの中からFL5型のシビック・タイプRが選ばれた形だ。スポーツカー然とした2ドアクーペではなく、5ドアハッチバックが採用されたことは話題となった。
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とはいえ、GT500はモノコックをはじめとした多くのコンポーネントが共通部品となっているため、車両が変わるといっても変わるのは基本的に外観くらい。ただその中でシビックは、NSX時代のハイダウンフォースマシンから、ややオールラウンドでマイルドな特性のマシンになったと言われる。
そしてデビュー4戦目にして優勝を飾ったシビック。レース後に行なわれたHRCのメディアセッションでは、5ドアハッチバック車がGT500で優勝したことはスーパーGTにとってどんな影響があると考えるかとの質問が飛んだが、車体開発責任者の徃西友宏氏は、GT500に“新風”を起こせたのではないかと語った。
「(GT500規則は)全く違うスタイルの車両をベース車に持ってきても、なるべくレースで差がなく戦えるように配慮されていますが、シビックのような5ドア車でもちゃんと争えるということは、誰も確かめたことがありませんでした」
「将来的に他のメーカーさんが『自分たちのラインアップにそういうクルマしかないから、スーパーGTに出てもしょうがない』と思っていたとしたら、シビックでもちゃんと勝っているということがプラスの材料になれば良いなと思っています」
「昔のBTCC(イギリス・ツーリングカー選手権)で4ドアセダンのワゴンのようなクルマ(ボルボ・850エステート)が走っていました。あそこまでではないですが、ファミリーカーやノーマルカーのスタイルをしたクルマでも(GT500に)出ていいんだという、新風を起こしたと思います」
その言葉を聞いて、「GT500の規則はよくできている」と切り出したのは、スーパーGTのラージ・プロジェクトリーダー(LPL)である佐伯昌弘氏だ。
「規則としては非常に良くできていると思います。ベース車両が色んな形をしていても、スケーリング(規則の範囲内で、ベース車のスタイルに合わせたサイズに調整すること)通りに作っていくとほぼ互角に戦えるようなクルマになるのは、規則がよくできているからだと思います」
「(既存の)3メーカー以外のメーカーにも出て欲しいですね」
なお、スーパーGTの次世代GT500車両の導入については、2029年ごろになるのではないかと言われている。プロモーターのGTアソシエイションは、各メーカーとの話し合いの中ではまだ方向性が定まっていないというが、ハイブリッド化なども検討が進められている。
佐伯LPLも、これまで様々な環境対策に取り組んできたモータースポーツ業界が次の10年に向けてどのような方向に進むべきかは非常に難しい問題だと渋い顔。一方で車体という面に関しては、コストダウンが必要になってくるだろうと話した。
「市販車ベースのプロトタイプカーで走るのであれば、今のモノコックでも良いと思います。ただ段々コストが上がってきているので、安いものにできるのであれば、そっちが良いのかなと思います」
「市販車に近い形で走らせるのであれば、今のモノコックをもっと安価なものにしていくとか、共通部品をもっと手に入りやすい価格にするとか、コストダウンに力を入れないとダメかなと思います」
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