フルモデルチェンジしたホンダの「シビック」の6MTモデルに今尾直樹が試乗した。
清々しい
メルセデスやBMWとは異なる第3の道──新型アウディA8試乗記
さわやかなクルマだなぁ、と思った。静かで、エンジンはトルクがあって、6500rpmのレッド・ゾーンまでスムーズに気持ちよくまわり、乗り心地は洗濯したてのコットンのワイシャツに袖を通したときみたいに清々しい。
昨年7月に国内で発売になった新型ホンダ・シビックの1.5リッター直列4気筒ガソリンターボ搭載モデルの6MTを試乗しての筆者の素直な印象である。
新型シビックはまずこのピュア内燃機関モデルが登場し、その後、今年の6月にハイブリッドのe:HEVが、9月にスポーツ モデルのタイプRが追加されている。1.5リッター直列4気筒ガソリンターボには先代同様、CVTと6MTの設定があるのだ。
注目すべきは6MTが販売比率の3割と健闘していることである。内燃機関が終わりを告げようとしているいま、マニュアル・トランスミッションに乗っておきたい、と考えるひとが増えているらしい。
筆者も新型シビックのフツウのモデルのMTに乗ってみたい。ということで『GQ』編集部に借りてもらったわけだけれど、試乗後にシビックの広報資料を読んでみたら、その冒頭に開発責任者のことばとしてこんなことが書いてあった。
「新型シビックの開発にあたって考えたことは、“現代におけるシビックとはどうあるべきか”ということでした。歴代の歩みを振り返りながら、ふと思い出したのは『一服の清涼剤』という言葉です」
1972年にデビューした初代シビックから数えること11代目となる新型シビックの開発コンセプトは“爽快シビック”だったのである。つまり、筆者は開発コンセプトそのままの感想を抱いていたのだ。あー。あたしゃ、なんて素直なのでしょう……。と、驚くより、シビックの開発陣が狙い通りのクルマをつくったことに感心すべきか。
低中速トルクたっぷり11代目シビックについて簡単におさらいしておきますと、先代の10代目の国内発売は2017年だから、わずか4年で全面改良を受けたことになる。さすがホンダの累計生産台数の4分の1を占めるという大看板モデルである。
先代はハッチバックとセダン、ボディが2種類あった。新型も、メイン・マーケットの米国では両方あるけれど、国内ではハッチバックに絞られている。そのハッチバック・ボディは全長がちょっぴりのびている。後席の居住性を広げるべく、ホイールベースが35mm伸ばされ、ボディは全長4550mmと30mm長く、1800mmの全幅は変わらず、1415mmの全高は20mm低くなっているのだ。
前マクファーソン・ストラット、後マルチ・リンクというサスペンション形式は先代と同じながら、プラットフォームは一新されている。
デザインは最近のホンダの傾向に則り、ロー&ワイドを強調し、運転のしやすい視界を確保すべく水平を意識している。試乗車のマットっぽい薄いブルーのボディ色も含めて、筆者はなかなか好ましいと思う。とりわけ、フロントのマスクは初代アコードを彷彿させる……と思うのは筆者だけかもしれないですね。
1.5リッター直列4気筒ガソリンターボ・エンジンはタービンや排気系の見直し、クランクシャフトやオイルパンの剛性アップといった小改良を受けている。MTの場合、182psの最高主力と240Nmの最大トルクの数値は同じながら、発生回転数は異なる。最高出力は5500rpmから6000rpmに引き上げられ、最大トルクは逆に1900~5000rpmから1700~4500rpmに低められているのである。
6速MTは、アルミ製のブラケットを採用することでシフト・レバーの支持剛性を高め、縦の動きのシフト・ストロークを5mm、横の動きのセレクト・ストロークを3mm縮めている。特に高性能車でもない、フツウのモデルでmm単位の改良が図られている。このことに驚く。最後になるかもしれない内燃機関のシビックへの、ホンダのエンジニアたちの惜別の念がこういうところにも込められているのだろう。
1.5リッター直列4気筒は、可変バルブ・リフト&タイミング機構機構を備えたVTECターボのおかげもあって、冒頭に記したように低中速トルクがたっぷりあって、レッド・ゾーンの始まる6500rpmあたりまでじつになめらかに、気持ちよくまわる。アクセルをオフにした直後も、少々加速するような感覚があるのはターボゆえかもしれない。
シフトするたびに人生をエンジョイ正直申し上げて、シフトするたびに思うのは、ギアチェンジなんて必要ないんじゃないの? ということだ。それほど1.5リッターの直列4気筒ガソリンターボはトルクがある。
ギアチェンジそれ自体、イージーで、間違えようがないほど6速MTのゲートははっきりしているし、重からず軽からずのクラッチ・ペダルはつなぎやすい。あまりにイージーなので、筆者の場合、MTであることを忘れそうになった。もうちょっとMTらしくするには、トルクを削るか、あるいは発生回転域を狭くすべきではないか、と提案したくなる。冗談半分ですけれど。
MTの意味がまったくないのか、というと、そんなことはない。マニュアルを操るのはやっぱりオモシロイ。他力ではなく、自力でことをなしている感がある。たかがクルマの運転であるとはいえ、たかがクルマの運転だからこそ、他人事ではなく、自分事として自由に操りたいではないですか。
フツウの乗用車でも、MTというだけで、エンスー心が起動する。車重1340kgに、182psと240Nmは十分以上で、リッパにスポーティ・モデルを名乗る資格があるのではあるまいか。
せっかく235/40R18なんて極太扁平タイヤを標準で履いているのだから、ボディと足まわりをタイプRと同じにしちゃったらどうでしょう。と、もしも試乗会にいっていたら、エンジニアのひとに聞いてみたかった。路面によって感じるヒョコヒョコ感、微妙な上下動も消えるのではないか。
その一方、330ps、420Nmのシビック・タイプRほど、パワーもトルクも限られているからこそ、アクセルを思いっきり踏みつけることができる、というメリットもあるかもしれない。実際、このフツウのシビックだって、再三書いているようにトルクが十分だから、一般道をフツウに走っている限り、そう踏む必要もない。
1.5リッター直列4気筒ガソリンターボを搭載するシビックには、LXとE X、装備の違いでふたつのグレードがある。試乗車は高いほうのEXで、「アダプティブドライビングビーム」という、ヘッドライトのローとハイを自動的に切り替えるシステムや12スピーカーのBOSEのサウンド・システム、ワイヤレス充電器などを標準装備する。
価格は357万8300円。タイプRの499万7300円まで、あと141万9000円である。どうせならタイプRにしておいたほうが後悔はないような気もする。筆者だったら、タイプRを選びたい。けれど、あえてEX、もしくはLXで十分、という考え方もある。
タイプRではなくても、MTを選んだというだけで、スポーティであることは疑いない。シフトするたびに人生をエンジョイしている感がある。たぶん、多くのひとが憧れる薪ストーブよりハードルは低いと思う。あれは薪割りがたいへんらしいです。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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