同社初のクロスオーバー 10年以内に発売
マクラーレンは、新型のクロスオーバー車を開発中で、2020年代後半に発売される見込みである。これまでスーパーカーやハイパーカーしか作らないと宣言してきた同社の方針と相反するものだ。
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この新型クロスオーバーは、ハイブリッドではなく完全EVとなる見込みで、内燃エンジンを搭載することはないだろう。今のところ派生モデルの計画は示されていないが、アストン マーティンDBXのように、いずれ複数の仕様を展開することになるだろう。
クロスオーバーとしては比較的車高の低い、コンパクトな四輪駆動車で、電気モーターを2~3基搭載すると考えられる。マクラーレンのブランドにふさわしい高性能モデルとなるだろう。
バッテリーのコストなどを考慮すると、価格は現行モデルを大きく上回り、6000万円近くに達する可能性がある。
スポーツカーブランドが「SUV」を作るワケ
クロスオーバーやSUVに対するマクラーレンの方針転換は、間違いなく他社の成功を受けてのものだろう。ポルシェやランボルギーニといった高級ブランドから発売されているSUVモデルは、従来のスポーツモデルを大きく上回る販売台数を記録し、莫大な利益を生み出している。
例えば、ポルシェは2021年の販売台数が初めて30万台を超え、最高記録を更新した。SUVのマカンとカイエンを合わせると、その販売台数の半分以上を占めることになる。一方、スポーツカーの911はわずか3万8464台であった。
この傾向はランボルギーニのウルスについても同様で、2021年には約2対1の割合でスーパーカーのウラカンを上回った。
アストン マーティンDBXは、2021年に同社の世界販売台数の半分を占めた。
最も利益率の高いスーパーカーメーカーであるフェラーリでさえ、年内に同社初のクロスオーバー車「プロサングエ」を発表する予定だ。プロサングエは、フェラーリの伝統的な自然吸気V12エンジンを搭載する。
マクラーレン社内で起きた大きな変化
マクラーレンの人事面でも大きな変化が起きている。ポルシェで10年以上にわたってカイエンとマカンの開発を監督し、2014年にはフェラーリで最高技術責任者を務めた(プロサングエのコンセプトにも携わっている)ドイツ人エンジニアのマイケル・ライターズが、7月1日に新CEOに就任するのだ。
前任者のマイク・フルウィットは、クロスオーバーやSUVに興味を示さないマクラーレンの姿勢について、最もよく引き合いに出される人物である。昨年末、マクラーレン・グループ全体の経営陣が一新されたのと時を同じくして、彼は説明もなく突然退任した。
マクラーレンの新型クロスオーバーについて、内部関係者によると、コンパクトさ、軽量さ、洗練されたエアロダイナミクスによる性能効率という、確立された伝統に忠実でありたいと考えているようだ。
それを実現するためには、2028年頃に実用化されるであろう全個体電池技術による、小型・軽量化かつ高いエネルギー密度を持つバッテリーが必要となるはずだ。
現在のところ、マクラーレンはクロスオーバーの発売計画について公式なコメントを出していないが、内部関係者は「このアイデアに対する意欲」を認めている。
マクラーレンは昨年、「ソラス(Solus)」、「アオニック(Aonic)」、「Aeron(アーロン)」という名称の商標登録を申請している。後者のアーロンは、ヘブライ語で「力のある山」という意味を持ち、クロスオーバーの車名には適していると言える。
軽量スポーツカーの伝統は守られるのか
マクラーレンの新CEOであるマイケル・ライターズは、ポルシェとフェラーリという世界で最も有名なスポーツカーブランド2社で21年間を過ごし、ポルシェ・カイエンとフェラーリ・プロサングエの開発にも関わってきた。
ライターズはフェラーリの新型プロサングエについて、「このクルマと技術的なコンセプトには確信を持っている」と語り、真のフェラーリではないとの指摘を一蹴。スポーツカーメーカーが多様化する必要性を強く意識していることがうかがえる。
しかし、ライターズは量販モデルの開発を進める一方で、エンスージアスト向けの高性能モデルへのこだわりも見せている。最近、AUTOCARの取材に応じたライターズは、電動化時代におけるフェラーリのV12エンジンの将来性について、次のように語っている。
「わたしは個人的に、このエンジンのために戦わなければならないと考えています。技術的な観点からは、最も効率的とは言えません。性能的にはV8ターボの方が優れているかもしれませんが、エモーショナルな観点からは最高なんです」
同時に、フロントアクスルを電動化することでダイナミックな走りを実現し、「パワーが必要なときでも、音は必要ないこともある」など、電動化の利点についても触れた。
しかし、マクラーレンのスーパーカーに250kgの電動パワートレインを搭載するのは「痛い」として、今後も軽量化を追求する姿勢を示している。
「カーボンファイバーの多用と超低重心化(いずれもマクラーレンの得意分野)は、ダイナミクスへの影響を最小限に抑える助けとなるでしょう」
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ブームがその頃まで続いればいいね。