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ポールで勝てないアコスタのジンクス。厳しいブレーキングの大径ディスクとタイヤ選択/MotoGPの御意見番に聞く日本GP

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ポールで勝てないアコスタのジンクス。厳しいブレーキングの大径ディスクとタイヤ選択/MotoGPの御意見番に聞く日本GP

 10月4~6日、2024年MotoGP第16戦日本GPが行われました。我らがホームグランプリとして現地に行った方もいらっしゃるのではないでしょうか。MotoGPクラスではペドロ・アコスタが初ポールポジションを獲得。両レースでアコスタはリタイア、フランセスコ・バニャイアは優勝を飾りました。

 また、中上貴晶の現役最後の日本GP、天候が悪いなかでのMoto2クラス決勝では小椋藍のタイヤ選択も鍵になりました。

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 そんな2024年のMotoGPについて、1970年代からグランプリマシンや8耐マシンの開発に従事し、MotoGPの創世紀には技術規則の策定にも関わるなど多彩な経歴を持つ、“元MotoGP関係者”が語り尽くすコラム、2年目に突入して第41回目となります。

* * * * * *

--いやー、GASGASのペドロ・アコスタ選手残念でしたね。スプリントで転倒したから決勝レースは大丈夫って言う本人のコメントを信じていたんですけどねぇ。

 各カテゴリーで初めてポールポジションを獲った時にはいつも転倒しているっていうジンクスの事だね。結果的に神様はスプリントの転倒はカウントしてくれなかったのか、それともイベント中は有効なジンクスってことなのかね。スプリントではトップに出て転倒しレースは2番手に下がったところで転倒していたから、やっぱりそういう運命だったのかな。

 スプリントはオーバースピードで自分のミスと自覚していたから、これならレースは大丈夫と思ったんだけどね。転倒のシーンを見ても走行ラインは外していないしオーバースピードでもないように見えるから、原因をあれこれ考えて悩むよりこれはジンクスなんだと割り切った方が後に引かなくて良いかもしれないよ(笑)

--やっぱり新人がデビューイヤーで優勝するのってそんなに簡単ではないんですね。

 記録によるとMotoGPクラスのデビューイヤーでの優勝はダニ・ペドロサ選手が2006年に4戦目で達成しているね。その他にはホルヘ・ロレンソ選手が2008年に開幕戦から連続3戦ポールポジションを獲得して3戦目で早くも優勝してるな。

 でも一番凄いのはマルク・マルケス選手で、2013年のデビューイヤー2戦目にして初優勝、その後も優勝を重ねてシーズン6勝で史上最年少チャンピオンになったのは知ってるよね。

 もうちょっと遡ると、バレンティーノ・ロッシ選手が2000年にちょっと遅めの9戦目にして初優勝。更に遡るとケニー・ロバーツ選手が1978年のデビューイヤー3戦目で初優勝してシーズン4勝でチャンピオンになって、これが初のデビューイヤーチャンピオンなんだ。

--いやいや、みんな「超」が付くレジェンドライダーばかりじゃないですか。そう考えるとアコスタ選手には少し荷が重い感じもしますね。

 でも新人ながらKTM(GASGAS)に乗るライダーの中では前回のインドネシアGP終了時点でトップだったわけだよ。

 今回はノーポイントに終わったから比較的好調だったブラッド・ビンダー選手に抜かれてしまったけど、KTM機が残りのレースで同じようなパフォーマンスを発揮できたら初優勝の可能性は高いと思うけどね。

--そういえばKTM機はこのところアコスタ選手以外はパッとしない印象でしたけど、今回はファクトリー勢も比較的好調だったようです。どういった要因が考えられますか?

 やっぱりコースレイアウトの影響が大きいかな。ここはいわゆる「ストップ&ゴー」のサーキットだからKTM機の瞬発力が威力を発揮したという事じゃないかな。もちろんエンジンのパワーだけの問題じゃなくて、クルッと回って素早く加速するためには旋回性とトラクションの良さも必要だけどね。

 ただしアプリリアやヤマハが武器にしている高速コーナーのスタビリティとかは余り必要としないコースと言えるんじゃないかな。あ、ヤマハの場合は「武器にしていた」が正しいかな(笑)

--なるほど、基本的にエンジンパワーがモノいうサーキットという事ですね。エンジンだけではなくてブレーキにも厳しいと聞きましたが、どのくらいのレベルなんでしょう。

 ブレンボによると、モビリティリゾートもてぎのレベルは「6」で、世界的に最高レベルのサーキットの一つらしいよ。CC(カーボン・コンポジット)ディスクが採用されてからブレーキ関係のトラブルは減ったと言っても、トップスピードが飛躍的に向上してタイヤ性能も上がるとブレーキに対する要求レベルは上がる一方なので、通常は外径340mmのところをここでは外径355mmと言う更に大径のディスクを使用しているらしいね。

--なんか内側が櫛の歯みたいに加工されていますけど、あれはどんな意味が有るんですか?

 CCディスクは耐熱性が高いのが特徴だけど、基本的に「炭」なので限界を超えると燃えちゃうから質量を大きくして温度上昇を抑えているんだ。でも外径を大きくするのは限度があるから内径を小さくして質量を稼いでいるんだよ。

 そうするとおそらく内外径の温度差が大きくなって、内側にクラックとか入りやすいので予めスリットを加工して応力集中を避けているのかな。ブレンボはあれを「ベンチレーテッド」と言ってるから冷却効果が主な狙いのようだけどね。F1用のベンチレーテッドディスクと言うのは分厚くてディスクに放射状に穴が開いているんだけれど、MotoGP用の板厚8mmではさすがに強度的に無理って事なんろうだね。

--ところでブレーキに厳しいってことはフロントタイヤにも厳しいってことですよね。それでほとんどのライダーがハードタイヤ一択なんですね。

 レースに関してはそうだったね。路面温度が低いのにハードってどうなのと思うけど、ブレーキの事を考えるとハード一択って事になるみたいだね。

 まあミシュランのいうハードっていうのは単にラバーが硬いんじゃなくて、ラバーは同じで構造が硬いというのもあるからね。スプリントではジャック・ミラー選手が前後ソフトを選択していたから、仕様間の差はそれほど大きくないのかもしれないよ。

--ブレーキに厳しいコースレイアウトという事ですが、今回は燃費の面でも厳しかったようですね。決勝レースではファビオ・クアルタラロ選手がゴール直前で失速してヨハン・ザルコ選手に抜かれていました。こういうのを“デジャヴ”って言うんですよね。

 前々回のエミリヤ・ロマーニャGPの出来事だったから、立て続けに起きてるイメージが宜しくないねぇ。単に燃費が悪いのか構造的に燃料を使いきれないのか分からないけれど、後者だとすると早急に改善しないとね。

 擁護する訳じゃないけれど、こういうレイアウトのサーキットはスロットル全開率が高いので必然的に燃費も悪い。だからヤマハに限った事では無くて、スプリントで優勝したドゥカティのフランセスコ・バニャイア選手もゴール後にガス欠していたところを見ると、決して余裕があるわけじゃ無さそうだよ。

 普段は抑えて走るサイティングラップを路面状況を把握するために強めに走ったので、レース序盤はエコモードのマップで走っていたらしいよ。

--そのバニャイア選手ですが、今回はすごく落ち着いていましたね。これでスプリント3連勝ですから、すっかりホルヘ・マルティン選手のお株を奪った感じですね。

 マルティン選手のQ2での転倒で今回のレースの流れが変わったと言ってもいいんじゃないかな。やはり4列目からのスタートは厳しいよね。でもスタートの上手いマルク・マルケス選手以上にハイリスク覚悟で前に出て行った結果、スプリント4位、レース2位と言うのは上出来と言っていいんじゃないかな。バニャイア選手が完璧だった事を考えると、失点を最小化出来たとポジティブに考えるべきだろうね。

--Q2といえば、マルク・マルケス選手の幻のスーパーラップも今回のレースの流れを変えたと要因のひとつですよね。

 初日からの天気の感じでは、またしてもマルケス選手の独壇場になるかと思っていたんだけど、ポンと42秒台を出してきた時には「キターッ! 」ってみんな思ったんじゃないかな(笑)

 ソフトウエアの問題とか言ってたけど、トラックリミット違反の通知がダッシュボードに表示されるのが遅れたらしいよ。それがなければもう一周プッシュできたかもしれないけれど、インドネシアGPの予選に続いてアンラッキーが続いた感じだね。

--でも、そういうアクシデントを乗り越えてレースでは結果を出して来るところがやはり只者ではないですね、今更ですけど。

 インドネシアGPのレースではマシントラブルで不運の連鎖は断ち切れなかったけど、それを除けばアラゴンGPの完全優勝の後はすっかり表彰台の常連というイメージになって来たね。

 今回もスプリントの終盤でのエネア・バスティアニーニ選手とのオーバーテイクの応酬は実に見応えがあったし、あれが無いと単調で退屈なレースになるところだった。

--レースでも終盤に同じような展開が期待されたんですが、タイヤマネジメントが得意なバスティアニーニ選手も、もう一息のところまで来たものの結局絡めなかったですね。

 絶対に来ると思っていたんだけどねぇ。マルク・マルケス選手も序盤にブレーキに問題を抱えていたようで、トップの2台にはかなり離されてしまったのでレースとしては彼の言う通り単調で面白みに欠ける内容だった。

 と言ってもアクシデントは見たくないので、最後の方はこのフォーメーションで無事にフィニッシュしてくれと祈ってたよ(笑)

--レース開始後に雨が降り始めて白旗が出た時には、去年のような展開になるのかと緊張しましたけど、レース終盤では晴れ間も出てきて良かったですね。その前のMoto2ではレース中断しましたからね。

 小椋藍選手が3列目からのスタートで2位を獲得して、60ポイント差を付けたのでチャンピオンがグッと近づいたね。再スタート後にスリックで勝負したのが好判断だった。

 ギャンブルではあるけれど、こういうケースでは経験的に強気の勝負に出た方が結果が良い場合が多いね。まあ母国GPという事でもう一つ上を狙っていたんだろうけどね。

--母国GPと言えば、これが最後になる中上貴晶選手も特別な思いで臨んだと思うのですが、スプリントではチームメイトと接触してリタイアというアクシデントが起きてしまいましたね。

 中上選手にしてみれば「何してくれるよ!」ってところだと思うけれど、ザルコ選手の立場ではホンダのお膝元で、ホンダ勢でトップという立ち位置に拘ったのかもしれないな。

 来年はテストライダーとしての貢献が期待されている中上選手との関係性を考えると気まずい出来事ではあったね。それはともかくとして、そこまでこだわってもお膝元のレースでトップ10にも入れないところで争っているという現実を、ホンダとヤマハのお偉いさん方が目の当たりにしたわけで、これが今後の展開にどう影響して来るのか来ないのか、それが心配でたまらないよ。

--逆に経営層がこの結果に無関心というのは一番の難敵かもしれませんね。

 いやいや、そういうことはさすがにないと信じているけどね(笑)

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みんなのコメント

3件
  • *****
    足着いたら反則負けなのでは!?
  • まーさん
    ビンダーは足出さないのね。
    マルティンはイン側締める目的で足出してるやろ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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