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九州に向かってレッツゴー! のはずが…まさかのオイル臭にトラブルの予感、バックミラーにあり得ないものまで…【週刊チンクエチェントVol.17】

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九州に向かってレッツゴー! のはずが…まさかのオイル臭にトラブルの予感、バックミラーにあり得ないものまで…【週刊チンクエチェントVol.17】

いざ出発! 最初はは順調だったものの……

名古屋の「チンクエチェント博物館」が所有するターコイズブルーのフィアット「500L」(1970年式)を、自動車ライターの嶋田智之氏が日々のアシとして長期レポートする「週刊チンクエチェント」。第17回は「トラブルを解決し、またトラブル!?」をお届けします。

古いクルマは日々冒険! 新品のブレーキパーツを装着していても止まるときもあります… 【週刊チンクエチェントVol.16】

名古屋から2泊3日かけて九州に移動

「九州トリコローレ」というのはチンクエチェント博物館が主催するイベントのひとつで、イタリア車を中心としたクルマが毎年200~300台ほど集まる大きな催しだ。僕は縁あって初回の2012年から欠かさずトークのゲストとして呼んでいただいてる。九州・佐賀にはカーショップトリミという豚骨スープ並みに濃厚なチンクエチェント乗りたち(だけじゃないけど)が集まるスペシャルショップがあって、そこのメンバーさんたちとも顔なじみ。いや、彼らはとにかく濃いし、めちゃめちゃ人柄がいいのだ。だからターコイズブルーのゴニョン(仮称)は、タイミング的にもちょうど合いそうだったこともあり、その九州トリコローレでお披露目することに決めていた。

ブレーキのトラブルで出発地点が東京の自宅から名古屋のチンクエチェント博物館へと変更になったけど、それでも会場となる熊本は阿蘇の南小国町までおよそ850km。前回も触れてるけど、ちょっとばかり無謀であることは充分に承知してる。だから何かあったときには博物館の伊藤代表や深津館長に頼らせていただくことをお願いし、さらにはそれにかかる時間のロスをある程度以上考え、ついでに言うなら現代的な高速移動にはまったくもって不向きなクルマであることを念頭に置きまくって、スケジュール組みをした。

イベント本番は2021年4月25日の日曜日。前日となる24日の夕方までには指定されたホテルに着いて、深津さんはじめイベント運営スタッフたちと軽く一杯やりたい。なので、僕は22日に出発して神戸に住むおふくろ宅に1泊、23日は神戸から山口の岩国まで走って1泊、そして24日は岩国から熊本まで走ることに決めた。それぞれおよそ240km、360km、350kmほどだ。もちろん道のりは高速道路がメインになるわけで、左車線を左側ベタベタになって60km/hで走ったとしても、単純計算で走行してる時間は4時間、6時間、6時間弱ってところだろう。途中で何かあったとしても、職業柄か1日に8時間とか10時間とか走っても苦にならない人間なので、リカバリーも不可能じゃないだろう。何せ僕としてはなるべくゴニョン(仮称)と一緒に距離を重ねて、お互いの理解を深めたいわけだから、当然ながらクルマを労りながらだけど、たっぷり走りたかった。

ブレーキ問題はクリア!

22日の昼頃にチンクエチェント博物館に着くと、何もなかったようなすっとぼけた顔をして、ゴニョン(仮称)が佇んでいた。……憎めない顔しやがって。ブレーキの問題はやっぱりイタリアで組まれた新品パーツそのものの不具合から来たもので、すでに国内で新品をさらにオーバーホールしたものに交換されたと説明を受けている。

「ちゃんと通勤に使ったりしてチェックしてありますからね。もうまったく問題ないですよ。フィーリングも前よりいいかも」

深津さんだ。ありがたい。それなりの日数を自宅以外で過ごすわけだからそれなりの荷物になっていて、積み込む場所は当然ながらリアシート。フロントフードを開けるとちょっとしたトランクにはなってるのだけど、とてもじゃないがそこには収まらない。それにこのトランクには、これから別のモノを入れる予定にしてる。リアシートにキャリーバッグを入れようとドライバーズシートを引き上げると、あれ? おそらく前回は気づいてなかっただけなのだろうけど、シートベルトのベルトが何かのはずみで捻れたのか、よじれて取り付けられてる。深津さんが車内に入り込み、パッパと捻れた箇所を直してくれた。

「出発の前に、とりあえずメシ行きません?」

例によって喫茶店なのに誰もコーヒーを注文せずあんかけスパゲティだけ食べて帰るという隠れた名店に、伊藤代表、深津館長と3人で向かい、不思議な美味さのあんかけスパゲティを堪能しておくことにする。戦地に向かうわけでもないが、僕が博物館を訪ねたときには「何が食べたいですか?」「あっ、あのあんかけスパゲティがいいっす」が恒例になっていて、もはや好物。食べておかないと後悔するような気がしたからだ。ちなみに今回は特別に写真でお見せしておくことにしよう。あんかけスパゲティを食べてる間はほとんどが楽しい雑談だけど、一応、マジメにスケジュールの確認などもする。どうやら深津さんとイベント運営スタッフの計5人はイベント前日の早朝に機材満載のハイエースで名古屋を出発して、一気に熊本を目指すようだ。フツーのクルマだったら僕でもそうするけど、さすがにチンクエチェントの18psで、しかも様子見をしながらの走行だとそれは無理……っていうか、15時間走り続けても到着する気がしない。

エンジンも快調! めざすは九州のはずが……

そして、いざ出発! である。今回のイベントはお留守番の伊藤代表が「何かあったら深津くんに電話してね」、深津さんは「24日に九州自動車道とかで僕たちが嶋田さんを抜いちゃうかもしれませんよ(笑)」と送り出してくれる。何だかとっても温かい気分だ。

走り出してみると、たしかにブレーキは効き具合にも問題がなければフィールも良好。安心して踏んでいけるブレーキであることがすぐにわかった。そして最初に目指したのは、実は神戸のおふくろ宅じゃなくて、スーパーオートバックス名古屋ベイだった。東京出発じゃなくなっちゃったので、車載しておきたいモノをここで揃えてから向かいたかったからだ。

折りたたみのバケツ、布のウエス、マイクロファイバー素材のウエス、ウエットティッシュ、iPhoneホルダー、揮発性ガラスコーティング剤、そして……あと何だったっけ? とりあえず洗車、iPhoneをナビ代わりに使うこと、見るからに貧弱なワイパーの補助的対策。その3点を念頭にサササッと買い物をすませた……つもりだったけど、気がついたら2時間! が過ぎていた。こういうカー用品店ってあれこれ見て回るのが楽しいわけで、10代、20代の頃には暇さえあれば用もないのに行ってたのだけど、何だかその頃に戻ったような気分。

それでも後ろ髪をむしり取られるようにして、いよいよ神戸を目指すことにする。エンジンは非常に快調。でも大きな振動が出ちゃう速度域になるべく入れないように60km/hちょいで走る。すぐに名古屋高速4号線の入口が見えてきて、木場インターチェンジから滑り込む。そこから伊勢湾岸自動車道、新名神高速道路、名神高速道路……と進む予定だった。

高速道路でも60km/hちょいをキープして、ゆっくりゆっくりと走っていく。そして伊勢湾岸道から新名神高速に入り、新四日市ジャンクションを過ぎたあたりで、突如としてそれに気がついた。

えっ? オイル? 微かだけどオイル臭いぞ。

マジかっ? オイルの匂い、ちょっと強くなってきてないか?

あー、これはまずいかも。どこか停める場所を探してチェックしなきゃ。

ところがこのあたり、車線は1方向に2車線で路肩もほぼないに等しい。サービスエリア/パーキングエリアは遙か(!)15kmくらい先だ。安全に停車できるところがないのである。

えっ? えええええっ! あああああ!

僕はバックミラーの中にあり得ないモノを見つけて、声にならない声……じゃなくてハッキリと声になってる声をあげることになった。

 ■協力:チンクエチェント博物館

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