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【ヒットの法則427】BMW120iカブリオレの登場で1シリーズのプレミアム度が大きくアップ

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【ヒットの法則427】BMW120iカブリオレの登場で1シリーズのプレミアム度が大きくアップ

3Lツインターボエンジンのハイパフォーマンスに驚かされた135iクーペに続いて、その1カ月後の2008年3月には、またまたBMW1シリーズに新たな魅力が加えられた。それが120iカブリオレ。今回は上陸まもなく行われた試乗の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine2008年6月号より)

カブリオレ化に伴う巧妙なボディ剛性の強化
まだ1シリーズがデビューする前、2002年のジュネーブオートサロンのBMWブースに「CS1」と呼ばれるコンセプトカーが展示された。いま思えば、これが2008年に1シリーズのラインアップに加わったカブリオレの原型だった。

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当時は、ハッチバックが1シリーズ、そのクーペは2シリーズになると噂されていたので、この「CS1」は、1シリーズの派生である2シリーズのカブリオレになるだろうと想像を巡らせていた。結局、1シリーズクーペも3シリーズクーペも、2シリーズ、4シリーズという偶数で呼ばれることはなく、それぞれ1シリーズクーペ、3シリーズクーペに無事納まって発表されている。

それにしても、今回発売された1シリーズカブリオレは、6年前のコンセプトカー「CS1」にそっくりだ。とくに、今回試乗した120iカブリオレのボディカラー「カシミヤシルバー」は、2002年のショーで展示されていたCS1の色と似ているから、そう感じられた。

2004年にデビューすることになる1シリーズ5ドアハッチバックのデザインがほぼ出来上がった頃と思われる時期に、いきなり2ドアカブリオレのコンセプトカーを展示して、これから登場する1シリーズのイメージを植えつけようとしたのだろうか。

その開発コードナンバーも、奇妙である。1シリーズの5ドアハッチバックモデルのそれはE87で、1シリーズカブリオレがE88と呼ばれるところまではいい。だが1シリーズクーペは、E82という若いコードナンバーを持っている。

コードナンバーは開発許可が下りた順に与えられることになっているから、この順番をそのまま受け取れば、1シリーズクーペの原型が2002年にはすでに出来上がっていて、それを下にコンセプトカーとしてカブリオレに仕立てたのかもしれない。

さて憶測はこれくらいにして、120iカブリオレの話に移ろう。

いつも通り、誰が見てもBMWに見えるキドニーグリルを持つ。ヘッドライトとボンネット、フロントフェンダーのデザインは1シリーズクーペと同じだが、バンパー下にあるエアインテークのデザインはカブリオレ独自のものになっている。ナンバープレート背後のグリルはスクエアに仕切られ、他の1シリーズとは印象が異なる。

カブリオレのドアとその下のサイドシル、テールランプまではクーペと共通パーツだろう。しかし、デッキが平たくなったためトランクリッド、リアフェンダーはカブリオレ独自のデザインになり、リアバンパーの形状もカブリオレ専用になる。

もっとも、外観の違いよりも、見えない部分の違いの方が大きいかもしれない。オープンモデルになった分、ボディ剛性を上げなくてはいけないからだ。トランクの下を覗くと、デファレンシャルギアケースの後部から左右のサイドシルに向けて、V字型に補強板が入っている。この補強の仕方はZ4ロードスターとよく似ている。これにより、ボディの曲げ剛性とねじれ剛性、さらにハンドルを切ったときの横曲げ剛性まで補強しているようだ。

ドア周辺の補強も徹底的に施されている。屋根がないとドアの開口部はそのままU字型になり、そのままでは曲げ剛性、あるいは曲げ方向の振動に弱くなってしまうからだ。

最近のBMWはフロアレベルの補強が得意になったようで、3シリーズカブリオレ、6シリーズカブリオレ、Z4ロードスターのどれもオープンにしたときにボディ剛性の不足を感じない。

この120iカブリオレも同じで、アスファルトの不整路を走ったくらいでは、フロアがブルブルしたりAピラーが振動したりすることはなく、実にしっかりとしたフィールで走ることができるから頼もしい。

後席の快適性も十分に確保、低速域であればトップの開閉も可能
フロントシートやダッシュボード、インストルメントパネルのデザインは1シリーズに共通する。3シリーズカブリオレ、6シリーズカブリオレは3点式シートベルトが内蔵されたインテグレーテッドシートベルトだが、120iカブリオレはドア開口部の後ろ側ボディの上部にショルダーアンカーが設置されている。120iカブリオレのドアはそう大きくないからBピラーの位置でもシートベルトは手で取れるからだろう。

もしインテグレーテッドシートベルト式にしたら、シートフレームの補強、シートレールの補強、フロアの補強などによって相当な重量増になり、1シリーズとしての有利性がなくなってしまう。

ロールオーバー(横転)時の安全性に関しては、3シリーズカブリオレと同じ考え方だ。まずはAピラーの中に補強バーを入れ二重にしている。この強度は相当なもので、1シリーズカブリオレの自重を支えることができる。さらにリアシート用ヘッドレストの後ろ側から、横転する直前にロールオーバーバーが飛び出して、Aピラーとともにボディを支え、中の乗員を守ってくれるのである。

リアシートの居住性は意外といい。ソフトトップを収納するスペースは必要だが、3シリーズカブリオレのメタルトップほどの容積は必要としない。だからバックレストは、120iカブリオレの方が自然な角度になっている。左右方向はやや狭く、中央寄りに座るようになるが、リアシートは2人乗りだから問題ない。フロントシートまでのレッグスペースも意外とあった。子供用のチャイルドシートを確実に取り付けるためのISOFIXアンカーもリアシート左右に付いている。

リモートコントロールによってドアのロック/アンロックができるが、アンロックボタンを長押しすることによって4枚のガラス窓が開き、その後ソフトトップも開いていく。残念ながらリモートコントロールでは閉めることはできない。また、ドアのキーホールにキーを挿して捻っても、ソフトトップの開閉はできない。

ソフトトップを閉める作業は室内の専用スイッチで行う。他の1シリーズと3シリーズはリモコンのロックを長押しすることでドアミラーも畳めたが、120iカブリオレでは室内スイッチのみで作動する。ソフトトップの開閉は電動油圧制御の全自動式で、開閉はそれぞれ約22秒で完了する。

クローズドの状態にしても、ソフトトップは内張りもあるダブルレイヤー構造になっていて、ノイズを効果的に遮断し、室内の温度をキープする機能も持つ。確かに、閉めた時にはほとんどスチールルーフ並みの静粛性が保たれている。

試乗車には、オプションの光沢仕上げのアンソラジットだった。これは、角度によって黒やシルバーに見える、面白い色合いだ。

また、これまでは停止状態でなければできなかったソフトトップの開閉動作が、40km/h以下なら操作可能とした上で、動作が始まれば50km/hまでならそれを持続することができる。信号待ちで操作を開始したときに、青信号になって発進しなくてはならないケースでも融通が利くようになった。

スムーズで素直な走り味と上級レベルの快適性
カブリオレになって重量増になったボディに2L NAエンジンでは、その走りに期待できないと思うかもしれない。しかし、熟成されたバルブトロニック直列4気筒エンジンは十分に流れをリードする走りも可能だし、アクセルペダルを踏み込めばストレスなく加速してくれる。

もちろん、背中を押されるような強烈な加速やホイールスピンするようなパワーはないが、ステップトロニックを使えるから、かなりスポーティな走りも可能だ。

100km/hでのエンジン回転数は、6速2200rpm、5速2800rpm、4速3800rpm、3速5200rpmという具合だから、レッドゾーンの始まる6500rpmぎりぎりまで使うとワインディングロードでも楽しく走れる。

カブリオレらしくソフトトップを開け、サイドウインドウも下げて走るのもいいものだ。だが、サイドウインドウを上げ、オプションのウインドディフレクターをリアシートの上に設置すれば、かなりの長距離を無理なくオープンで走れる。ウインドディフレクターによって、室内への風の巻き込みが効果的に遮断されるからだ。このときは、開放感はたっぷりあるのに風の巻き込みが少ないから、特大のサンルーフを開けているような感覚になる。

車重は1530kgと1シリーズにしては重めだが、コーナリング性能も素直でよい。コーナーの入り口でターンインするときもハンドル操作に合わせるようにスムーズにノーズがインに入っていく。またコーナー出口でアクセルペダルを深く踏み込んでも、リアが破綻をきたすようなことにはならない。エンジンパワーが勝ってないということもあるが、ちゃんとリア荷重になっているからだ。

S字コーナーでも過度にロール角が大きくならないから、揺り返しは小さくスムーズに抜けられる。

快適性は上レベル。ボディのブルブル感や振動がないので「カブリオレとしては」という形容詞なしに快適な乗り味だ。ランフラットタイヤだが、カブリオレでもその硬さを悪いと感じることはない。プレミアムコンパクトというカテゴリーを作り上げ、このサイズのクルマにFRという駆動方式を採用したことが世界のクルマの中で珍しいことだが、この120iカブリオレに乗っていると、そのことが特殊なことだとは思わなくなった。

とても自然にカブリオレに乗ることができるし、3ナンバーでもそのサイズにより市街地でも取り回しがよい。120iカブリオレは、見られることをいつも意識して、お洒落をして乗りたいクルマだ。(文:こもだきよし/Motor Magazine 2008年6月号より)



BMW 120iカブリオレ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4370×1750×1410mm
●ホイールベース:2660mm
●車両重量:1530kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1995cc
●最高出力:156ps/6400rpm
●最大トルク:200Nm/3600rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:434万円(2008年)

[ アルバム : BMW120iカブリオレ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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