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旧車は「本当の日常の足」になる?(1) フォード・カプリ Mk2で実験 理想と現実に揺れる

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旧車は「本当の日常の足」になる?(1) フォード・カプリ Mk2で実験 理想と現実に揺れる

現代の条件へ古い量産車は対応できるのか?

筆者を乗せた年代物のフォード・カプリが、200mほど進む。交差点で緩やかに右折を試みると、不意にガラガラという音が前方から響いた。予期していなかったが、聞き慣れたものでもあった。

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自然と50年ほど昔の記憶が蘇る。ヒーターファンのブレードに、紛れ込んだ落ち葉が当たるノイズだ。かつて自分が所有していたコルチナ 1600Eで、この音を数えきれないほど聞いてきた。

この頃のフォード車は、フロントガラスの付け根にある吸気ダクトから小さな落ち葉が入り、その奥のファンへ吸い込まれることが珍しくなかった。カーブでは、稀にファンの回転を妨げることも。

筆者が編み出した対処法は、ファンを高速へ切り替えて、落ち葉を粉々に砕いてしまうこと。毎回ではないが、うまく機能したのを覚えている。

今回、47年も昔のカプリ Mk2へ乗ろうと考えたキッカケは、英国の法改正。40年以上前に製造された一部のモデルで、ロンドン中心部でのウルトラ・ローエミッション・ゾーン(ULEZ)規制が緩和されたのだ。

つまり、12.5ポンド(約2300円)の通行料が免除される。ロンドンまでクラシックカーで通勤することも、条件としては可能になったといえる。

そして疑問は広がった。高速道路や郊外の幹線道路、夜間や雨天など、現代の多様な条件へ古い量産車は対応できるだろうか。AUTOCARではクラシックカーのコンテンツも多いが、実際のところ、筆者も新しいモデルの機能性に甘やかされている1人だ。

現代のガソリン車は静かで、排気ガスが綺麗

英国フォードのヘリテイジ・コレクションは、それを確かめるのに好適。写真映えするミッド・ブルーの塗装にビニール張りのルーフを備えるカプリ 1.6Lは、女性オーナーが7万7000kmを走行した後、寄贈されたのだという。

筆者のようなメディアの好奇心へ応えられるよう、車検を取得し走れる状態が保たれている。走行距離が800kmは増えることをお伝えしたが、快く貸し出してくれた。

ロントン東部のダグナムに、英国フォードは約100台のコレクションを保管してきた。初期のT型から商用車までラインナップは極めて多彩だったが、環境としては完璧ではなかった。

しかし最近になって、グレートブリテン島中部のダベントリーにある、欧州フォードの本部へコレクションを移動。広大な敷地に、ヘンリー・フォード・アカデミーという施設を整えようとしている。

コレクションを管理するのは、キュレーターのレン・キーン氏と、彼を支えるクリス・スミス氏。年式やモデルタイプによって分類され、整理されている。予定通り準備が進めば、2024年の春先には一般公開されるという。

カプリの運転席へ座る。キーを捻ってもエンジンはくすぶるだけ。チョークレバーの存在を忘れていた。引っ張ると、すぐに安定したアイドリングが始まった。

排気音は大きめ。排気ガスは臭い。半世紀ほど前のキャブレター車は、こんな感じだった。2秒もクルマの後ろに立っていれば、現代のガソリン車は静かで、排気ガスが綺麗なのだと実感できる。

現代の交通環境で役立つ視界の広さ

4気筒エンジンが温まると、ノイズが滑らかに転じる。コルチナのプッシュロッド式からOHCへ進化したユニットは、フィーリングも滑らか。主張される最高出力73ps、最大トルク11.8kg-mを発揮しそうに、調子が良い。

当時のクルマとしては典型的な動力性能で、見た目はモダンといえた。全長は約4.3mあるが、車重は1010kgしかない。アルミニウムが多用された、筆者のアルピーヌA110より100kg近く軽い。

まずはダベントリーから西へ走り、走り慣れた道を通って南へ下り、自宅を目指す。道のりは105km。馴染みのないクルマを短時間に理解するなら、馴染みのある道を運転するのが望ましい。

発進してすぐ、運転席からの視界が驚くほど広いことに気づく。車内は広々。高さ方向は限られるが、荷室も大きかった。現代のモデルも空間効率が追求されているとはいえ、75Lも入るガソリンタンクを載せていながら、カプリの余裕には関心してしまう。

運転はしやすい。全方向に優れる視界は、現代の交通環境でも非常に役立つ。先日試乗したジャガーFタイプと比べると、特にそんな印象は強まる。

ファブリック張りのシートは、見た目はスタイリッシュながら、サポート性がいまいち。現代のシートは、良く設計されている。

操縦系はシンプル。フロントのワイパーは動作音が目立つものの、しっかり水を拭う。ヘッドライトは、予想より遥かに明るい。ラジオデッキはFM放送の普及以前の代物で、音質は良くない。

この続きは、旧車は「本当の日常の足」になる?(2)にて。

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