この記事をまとめると
■最近のクルマはスペースの都合やコストの問題からパンク修理キットを搭載している
床下のスペアタイヤ付近にぶらついてる謎のチェーンって放置していいの? じつは安全と便利さを両立したスグレモノ機構だった!
■パンク修理キットでは小さな穴しか塞げずサイドウオールのダメージには使えない
■あくまで一時的なので穴が塞がってもすぐにタイヤ交換するのがベストだ
パンク修理キットは使えないことも多い
長くクルマに乗っていると、タイヤがパンクして立ち往生してしまったという経験をした人もそれなりにいるでしょう。実際にロードサービスをおこなうJAFの出動理由では、バッテリー上がりに次ぐ2位にパンクが位置しているそうです。なかなかの多さですね。
さて、運悪くパンクに遭ってしまった場合はどう対処するでしょうか? 昔ながらの人はスペアタイヤへの交換が真っ先に思い浮かぶと思いますが、ご存じの方も多いように、昨今のクルマではスペアタイヤを搭載していない車種も増えています。
高級車ではパンクしてもある程度走行できるランフラットタイヤの採用例が多いようですが、一般的にはパンク修理キットを装備するケースが多いでしょう。
そんなパンク修理キットは、メリットもある程度ある一方で、じつはデメリットも多いんです。ここではパンク修理キットのデメリットにフォーカスして話していきましょう。
■パンク修理キットのメリット
パンク修理キットというアイテムを簡単に説明すると、タイヤの開いた穴を埋めて抜けた空気を充てんする器具のセットです。
市販のパンク修理キットには大きく2種類あって、穴にゴムのピースを挿入して接着剤で癒着させて埋める方式と、空気注入バルブから空気に触れると固まる特殊な液体を流し込んで裏から穴を埋める方式に分かれています。
この2種でもそれぞれメリットとデメリットがあり、向いているケースと向いていないケースがあるので、できれば使いわけるのがベストでしょう。
セットの内容は、手動でパンクした穴を埋めるほうは、ゴム素材のピース(各社で違いがあります)と穴の状態を整えてピースを埋め込む工具、はみ出た部分をカットするカッター、そしてエアーコンプレッサーで構成されています。
液体を流し込む方は、エアゾール式のボトル状の製品とエアーコンプレッサーのみというシンプルな構成です。
スペアタイヤの代わりにパンク修理キットを装着する理由については、まず軽量化とスペースの効率化が大きいでしょう。
スペアタイヤはサイズも重さもかなりあります。大人の男性でも片手では持ち上げられないくらいの重さとサイズがあり、女性では取り出すのもひと苦労でしょう。重さは燃費にも影響するので、コスト的にもよくありません。
格納する場所は居住スペースやガソリンタンクなどの主要部分の容量にできるだけ影響がないところが選ばれるので車体の外寄りが多く、運動性能的にはデメリットになります。
また、何より余分なスペースがあれば室内空間や安全装備の機器を納める空間を確保したいのが設計側の要望だと思います。あまりない機会のためにスペースを割くよりも、普段の使い勝手や安全のために使うほうがいいという判断で修理キットを採用しているのではないでしょうか。
実際にパンクへの対処の手間を考えてみても、ジャッキアップしてタイヤを交換する手間と苦労に比べて、修理キットの場合はジャッキアップしなくても穴を塞ぐことができるので、労力の点ではかなりラクに済ませられると思います。
キットでは小さな穴しか直せない
■パンク修理キットが使えないケース
そんなパンク修理キットですが、いいことばかりではなくデメリットもあります。
●ある程度の大きさの穴までしか対応できない
ピースを埋めるタイプも液体を流し込むタイプも、釘や小破片などによる小さな穴にしか対応できません。どちらかというとピースを埋めるタイプのほうが大きな穴に向いていますが、それでも数ミリという程度でしょう。
大きなボルト類を踏んでしまった場合や、裂傷のように長く切れ込みが入ってしまった場合は穴を埋めきれずに空気が漏れてしまいます。
●サイドウォールのダメージ
肉厚なトレッド面に空いた穴であれば深さがあるのでのりしろが多く取れて穴をしっかり埋められますが、肉が薄いサイドウォール側にダメージが及んでしまった場合は深さが足りないので穴が埋めきれません。
この場合は、小さい穴かつ短い距離なら液体注入タイプで騙し騙し移動することができる可能性はありますが、緊急的な使い方となります。
●ビードが外れてしまった場合
高速道路では、避難スペースなどの安全な場所までパンクしたまま移動しないとならないケースもありますが、そのときに運悪くホイールからタイヤのビード(フチの部分)が脱落してしまうこともあります。
パンク修理キットはどちらのタイプも小さな穴を埋める機能しかないので、すき間がパカッと開いたケースではどうにもできません。
■コスト的にもデメリットはある
パンク修理キットはあくまでも修理を行うアイテムなので、完全にもとのタイヤの状態には戻せません。その部分に不安を覚える人もいるでしょう。
たとえば高速道路ではタイヤは高回転になるために長い時間で大きな負荷がかかり続けます。高速域での遠心力や横Gは想像以上に高い負荷なので、穴埋めの強度がどれくらい信頼できるのかと考え出すと不安になるでしょう。
また、液体注入タイプの場合、長期間の使用は推奨していないモノが多いようです。使われる液体はラバー系の基剤に穴を埋める性能を高めるための溶剤などがミックスされたものなので、成分によっては長期間そのまま使っているとタイヤのゴムや繊維を侵食する恐れがあります。基本的には早いタイミングでのタイヤ交換が望ましいです。
また、ホイールにもそのラバー質が付着するため、タイヤ交換の際にそれを除去するのにかなり手間を要します。店によっては嫌がるところがあるかもしれません。
そして、これはどちらのタイプでもいえることですが、消費期限はしっかり把握しておきましょう。いざというときに劣化していて穴が塞げませんでした……という可能性は十分にあります。
ちなみにスペアタイヤでもパンク修理キットでも、しっかりと安心できる対処をするまでの移動では健全な状態よりも速度を落としてタイヤに負担をかけない走行をしないとなりません。タイヤを交換したから、穴が塞がったからといってそれまで通りに無配慮の運転をするのは、二次的なトラブルにつながる恐れがあるので、慎重な運転で走行しましょう。
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みんなのコメント
スペアタイヤのほうが良かったって心底思ったあの夏。
だからキットではなくスペアが必要だと思う。