この記事をまとめると
■シビックRSはタイプRと比較して60万円弱ほど安価な価格設定だ
【試乗】復活の「RS」は6速MTのみ! 公道で乗ったシビックRSは楽しいけれど「MTならではのよさ」がちょっと足りず!!
■タイプRの納期の長さやタイプRよりマイルドなモデルを求める層をターゲットにしている
■日常生活で扱えるちょうどいい1台として魅力がある
タイプRとの価格差がほとんどない
タイプR “じゃない”ほうのシビックMTモデルといえば、現行シビックの一部改良とともに登場したシビックRS。サーキット走行まで追求した本格スポーツカーのタイプRよりも、もう少し身近で日常でも気軽に乗れるようなMT車というコンセプトで登場したシビックRSですが、車両価格を見てみると……なぬ? タイプRが499万7300円~で、シビックRSが439万8900円なので、その差は59万8400円。
人によってこの差がどのくらいの意味合いなのかは変わってくると思いますが、約60万円なら「なんとか頑張ってタイプRを買ったほうが、のちのちのリセールバリューで取り戻せちゃうのでは?」なんて考えてしまうのも無理はありません。
となると、「シビックRS」を買うべきなのはいったいどんな人でしょうか。
ここでヒントとなるのは、シビックRSの誕生に至った経緯です。現行モデル発売当初から、ベーシックなシビックには2モーターハイブリッドの「e:HEV」とガソリンモデルがあり、ガソリンモデルにはCVTとMTが設定されていましたが、ガソリンモデルのMT販売比率が異様な高さだったそう。これはホンダとしても想定外の嬉しい悲鳴という感じで、いろいろと調べていくと「タイプRじゃないMTのシビック」を求めていた人が多いことに気がついたのだとか。
その理由としては、まずタイプRのほうが車両価格が高く、納期が長くてすぐに乗りたいのに乗れないこと(受注一時停止で買えない時期もあります)。また、ご近所や家族の目があるので4ドアとはいえあんまり派手なスポーツカーに乗るのは気が引けること。燃費やメンテナンスなどのランニングコストも抑えたい……。それでも、普段の道を楽しく走ることができるMT車に乗りたいという、その想いのいじらしさ。
なんとも日本人らしい、奥ゆかしさが見え隠れしているではないですか。それならば、「せっかくMT車を選んでくれる人たちに、もっと走りの気もちよさを追求したシビックのMT車に乗ってもらいたい!」というところから、このシビックRSの企画がスタートしたのです。
また開発チームには20代~30代の若手エンジニアが多く、裏テーマとして「日本のMT免許の普及率を上げてこうぜ!」という気概も強かったと聞きました。それは自分たちも、クルマが好きで運転が好きでホンダに入ったのだから、本当に作りたいのは『元気なホンダ』を感じてもらえるMT車なんだ、というエンジニアの皆さんの本音も伝わってくるエピソードだと思います。
ありそうでなかった絶妙な立ち位置
ただ、「価格的にはもう少し安くないと、若い世代の方はなかなか買えないんじゃないですか?」と聞いたところ、本当はもう少し低価格で出せたらよかったのですが……と残念そうなところも。とはいえ、新車は買える人に買ってもらって、中古市場に出まわってから若い世代の人たちの手にわたるのでもいいのかもしれません。
なんとかしなければ、このままでは日本のMT車が滅びてしまうという危機感も、エンジニアたちとの話で伝わってきました。
そして、今は低価格で買える4ドアのスポーツカーがほとんどないに等しい状態なので、いきなりタイプRにいくのはちょっと……というハードルが生まれてしまっているのも事実です。その手前のエントリーとしてシビックRSでMT車に慣れてもらい、楽しさにどっぷりハマってもらって、それからタイプRにステップアップしてくれたら理想的だと、本格MTスポーツカーへの登竜門的な立ち位置でもあるようです。
こうしたところから考察すると、シビックRSを買うべきなのは、まず「納期が長いクルマは待てない、すぐにMT車に乗りたい!」という人。「ご近所などの目があるため派手なMT車には乗れないけど、どうしてもMTに乗りたい人」、「日常の道でも気もちよく走れるMT車を求めている人」、「いきなりタイプRにいくのはちょっと気が引ける人」……ということになると思います。
高性能タイヤの恩恵も最新の制御の恩恵も受けずに、路面からの入力をある程度はしっかりとドライバーに伝えながら、追従性と接地感を自分でコントロールする余白が残されている、シビックRSのこの楽しさ。日常のちょうどいいMT車として、貴重な存在です。
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RSはボッタ価格。