2020年、これまでに発売された国産新型車の中で、比較的買いやすい価格(135.3万円~)、ミニマムなサイズにして、超目玉、今こそ買いの1台が、今年の東京オートサロンでプロトタイプを出品し、大注目されたダイハツ・タフトだ。
ピックアップトラック、バックパッカーをイメージしたというデザイン、パッケージを武器に、まさに見る者の目を奪うワイルドなカッコ良さを湛えたクロスオーバーモデルであり、このご時世に、発売後1カ月で、月販販売台数の約4.5倍もの受注があったのだから、相当な人気ぶりと言っていいだろう。
量産二輪車初のハイブリッドシステムを採用したホンダのスクーター「PCX HYBRID」
ハマーやメガクルーザーを思わせる!? 軍用車風の佇まい、大径15インチタイヤ&ホイール、最低地上高190mmの余裕、全グレードにスカイフィールトップと名付けられたガラスルーフ、リヤカメラの標準装備、軽自動車ではまだ特別な、全自動(保持、解除の両方)の電動パーキングブレーキ、オートブレーキホールド機能、それが可能にした渋滞追従機能付きACC(アダプティブクルーズコントロール/Gグレードにクルーズパックとしてオプション)、および17種類以上の先進運転支援機能のスマアシを用意するなど、価格対装備の充実度でも、ライバルを圧倒する。
ここで試乗したのは、148万5000円のNAエンジンを搭載するGグレードのFFだ。軽自動車らしからぬ存在感を発散する、3色用意された(全9色)アースカラーのボディカラーの中でも、もっとも好みに合うレイクブルーメタリックに塗られたタフトは、チョップドルーフを思わせるスクエアなデザインもあって、実に男っぽい。ダイハツとしては、若い男性のパーソナルユースを狙っているそうだが、ボクのようなオヤジでも、例えば往年のミニのように不思議としっくりくる。
運転席に乗り込めば、ワイルド感溢れるインパネデザイン、迷彩柄のシートファブリック、天地に狭いフロントウインドー、立ち気味のAピラーがまずは新鮮だ。そして何よりも感動できるのが、前席のシートのかけ心地。分厚いクッション感があり、座面後端はお尻をふんわり沈み込ませて体重でホールドさせるタイプで、背もたれは背中をやさしく包み込むようにホールドしてくれるからゴキゲンだ。なんでも、あのロッキーのシートフレームを奢っているのだとか。
そして、何といってもルーフ前方にあるスカイフィールトップの気持ち良さが際立つ。シェードを開ければ、前を向いた運転視界に入ってくるのだから、爽快。青空だけでなく、雨の日のレインドロップの情緒すら標準装備というわけだ。
運転席周りの使い勝手も優秀だ。電子パーキングブレーキの採用で足踏み式ブレーキがないこともあって足元は広々。センターコンソール前端のスマホの置き場=トレーも実によく考えられていて、手の届きやすさ、置きやすさはもちろん、すぐ前にUSBソケットがあるのだから充電環境もバッチリなのである(ワイヤレス充電器Qiもアクセサリーとして用意)。
走り出してまずは、NAエンジンにして、実にトルキーであることに気づく。街中、平たん路なら、2名乗車でも動力性能にまったく不足なし。52ps、6.1kg-mを発生するエンジンは、さすがに登坂路では高回転を使うことになりがちだが、例え5000回転まで回しても不快な振動やノイズを伴わないのもうれしいポイントだろう。だから、全般的に動力性能不足を感じにくいとも言える。高速道路の試乗も行ったが、くどいようだが、平たん路ならスイスイと走れ、気持ちよくクルージングできるのだ。
165/65R15サイズのエアーボリウムの大きいタイヤを履いた乗り心地は、開発陣が言うように、エクステリアデザインのワイルドさとバランスを取った、しっかり硬めのタッチを示す。良路であれば、硬くても角の取れた、上級車を思わせる質感、フラット感に終始。高速道路のきつい段差越えなどではそれなりのショックが伝わってくるものの、それもまたワイルドなクルマの”男気”と見れば、納得の範囲かもしれない。
一部、 山道も走行したのだが、前席のホールド性は絶妙に素晴らしく、ぴたりとフィット。上体の揺すられ感は最小限。これなら長距離、長時間のドライブでも疲れにくい。また、パワーステアリングは雑味のないスムーズな操舵フィールと、低速ではごく軽いものの、速度を増すほどに引き締まる、安心感ある制御を実現。切れば過敏でもなくダルでもない、絶妙なタッチであり、スッとクルマの向きを変えてくれる扱いやすさにも納得できるのだ。実用系軽自動車の中ではトップレベルの操縦性と言っていい。
NAモデル唯一のウィークポイントと言えそうなのが、Gターボ用の最新のD-CVTとは違う、旧タイプのCVTを採用していることによる、エンジン回転3000~3500回転で発生するヒュイーンというCVTのノイズ。これ、Gターボではまったく発生しないNAモデルだけのものだ。
パーソナルユースでは倒してラゲッジスペースを拡大し、フルフラット!!にして使うことが想定されている後席は、シートクッション長が約41cmと、例えばタントの約50cmより極端に短いものの、クッションに厚みがあり、ここまで言い忘れていたが、後席はスライド機構をあえて持たず(後席格納の簡便さとフラット収納にこだわったため)、フロアに直接セットされているため、レールを持つとどうしても発生しがちな、荒れた路面などでの微振動が抑えられ、足元も広々していて、小さな椅子にちょこんと座っている感はあるものの、意外なほど快適でもあるのだ。
ところで、軽自動車界ではツートーンカラーが流行っていて、クルマの見映え感を大幅にアップさせてくれる効果があると思っているのだが、ほとんどのクルマでは別料金が発生する。が、タフトの場合は、スカイフィールトップがダークガラスで、Gグレードではその前を黒く塗ってあるため、パッと見、2トーンルーフに見えるのだ。それが標準であり、追加料金が発生しないことも、なんともうれしいポイントとなるだろう。他車では4万円程度のオプションとなり、リヤカメラも標準装備されるのだから、ライバルとの価格比較では、そのあたりの、実は超お買い得である点も、確認していただきたい。NAエンジンを積むGグレードは、装備が充実した、都会にもアウトドアにも似合うパーソナルカーとして、気軽にカッコよく乗れる1台ではないだろうか。
なお、ターボエンジンを積むGターボグレードの試乗記は、別途、お届けしたい。
ダイハツ・タフト
https://www.daihatsu.co.jp/lineup/taft/
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。
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ソフトかタフデントにでも改名したら?