■好景気を背景に登場した大型クーペを振り返る
近年、国内の自動車市場では2ドアクーペや3ドアクーペの人気は低迷してしまい、ラインナップも激減してしまいました。
そうした状況のなかでも、大型かつ高額なクーペは一定の需要があり、国内メーカーや輸入車のクーペラインナップは比較的充実しているといえます。
一方、1980年代から1990年代には、いまよりもさらに多くの大型クーペが存在。そこで、バブル期に出たスタイリッシュなビッグサイズクーペを3車種ピックアップして紹介します。
●ユーノス「コスモ」
1980年代の終わり頃、マツダは販売する車種を拡充するために5つの販売チャネルを展開。さまざまなニーズに対応したモデルをラインナップしていました。
その販売チャネルのひとつであるユーノスから、1989年に初代「ロードスター」が発売されると、ユーノスは一気に認知度を高めることに成功します。
さらに好景気の後押しもあり、1990年にはフラッグシップモデルのユーノス「コスモ」を発売。
ロングノーズのフロントには、既存の「13B型」654cc×2ローターロータリー・シーケンシャルツインターボエンジンに加え、280馬力を発揮する新開発の「20B型」654cc×3ローターロータリー・シーケンシャルツインターボエンジンを搭載するなど、まさにバブルを象徴するようなモデルです。
ロー&ワイドで伸びやかなスタイルは、フラッグシップにふさわしい優雅さがあり、20B型エンジンの極悪な燃費ばかりがクローズアップされますが、当時は美しいクーペとしても話題になりました。
また、コスモには世界初となるGPSナビゲーションシステムを装備(3ローター車に設定)するなど、エンジン以外にも先進的な技術も投入されています。
コスモはトップグレードで530万円と高額だったことと、燃費の問題、バブル崩壊によるマツダの経営状態が悪化したという背景もあって、わずか4年で生産を終了した短命なモデルです。
しかし、3ローターエンジンや流麗なフォルムの美しいボディによって、記録よりも記憶に残る1台として、いまも語り継がれる存在となっています。
●スバル「アルシオーネSVX」
1985年に発売されたスバル初のスペシャリティカー「アルシオーネ」は、国産車で初めてCd値0.3を下まわる優れた空力性能を実現し、直線基調のシャープな外観デザインと、飛行機のコクピットをイメージさせる斬新な内装デザインが印象的な2ドアクーペです。
そして1991年に、2代目にあたる「アルシオーネSVX」が発売されると、外観は初代の直線基調から、曲面を多用した流麗で美しいフォルムに一新。
巨匠ジョルジェット・ジウジアーロが原案を手掛けたデザインで特徴的なのが、「ミッドフレームサイドウインドウ」と呼ばれる側面の造形で、アルシオーネSVXの個性的な美しさを表現しています。
搭載されたエンジンは最高出力240馬力を発揮する3.3リッター水平対向6気筒自然吸気で、駆動方式はフルタイム4WDを採用。
トランスミッションは4速ATのみとされるなど、アルシオーネSVXはスポーツカーというよりも高級GTカーというコンセプトで、欧州や北米、オーストラリアでも販売されました。
バブル崩壊の時期に発売されるというタイミングの悪さもあり、アルシオーネSVXは国内でヒットすることはありませんでしたが、1997年までと比較的長く生産され、いまではアルシオーネシリーズを専門に扱う中古車店もあるなど、愛好家が多数存在します。
■アメリカを主戦場に開発されたエグゼクティブなクーペとは!?
●ホンダ「レジェンドクーペ」
ホンダは1985年に高級車ブランドのアキュラを北米で展開するにあたって、フラッグシップとなるセダン「レジェンド」を発売しました。
国内でも「アコード」の上位に位置するモデルとして販売され、ホンダらしいスポーティな走りのエグゼクティブセダンとしてヒット作になります。
1987年には専用の2.7リッターV型6気筒エンジンを搭載する2ドアクーペ「レジェンド ハードトップ」を追加ラインナップ。
そして、セダンは1990年に2代目へとモデルチェンジされ、追って1991年にはクーペも2代目が登場。2代目は「レジェンドクーペ」に改名され、ボディサイズは全長4880mm×全幅1810mm×全高1370mmと、2ドアながらかなり大柄です。
一方で、この大きなボディを巧みに使ってデザインされ、伸びやかなフォルムの美しいスタイリングを実現。
エンジンは最高出力215馬力を発揮する3.2リッターV型6気筒自然吸気を搭載し、セダン用に新開発された4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションは、クーペ専用にチューニングされ、上質な乗り心地と高い走行性能を発揮しました。
また、当時としては先進の安全装備を搭載し、アンチロックブレーキシステム、トラクションコントロールシステム、運転席助手席SRSエアバッグシステムなどを標準装備。
内装もセダンに比べホールド性を重視したフロントシートの採用や、センターコンソールなどに本木目のパネルをふんだんに使用するなど、スポーティでありながら高級感あふれるモデルとなっています。
レジェンドクーペは1996年に生産を終了し、3代目以降には2ドアクーペは設定されていません。
※ ※ ※
大型のクーペはサイズの制約があまり無いことから、美しいデザインのモデルが多い印象です。
欧米では2ドアクーペがパーソナルカーとして高い需要があることから、海外メーカーではプレミアムなモデルが数多くラインナップされています。
一方、日本のみならず欧米でも少数派になってしまったのが小型クーペで、スバルは「BRZ」の生産を終了するなど、さらなるラインナップ減少が進んでいる状況です。
やはり、世界的なSUV人気の高まりがクーペ人気低迷の理由として挙げられ、この先もクーペ人気の巻き返しは厳しいといえます。
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