5月11日(土)、WEC世界耐久選手権第3戦『スパ・フランコルシャン6時間』レースが、ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットでスタートした。前半3時間が経過した時点では、プライベーターとしてポルシェ963を走らせるプロトン・コンペティションの99号車(ニール・ジャニ/ジュリアン・アンドラウアー)が総合首位につけている。
第2戦イモラから3週間という短いインターバルで、シリーズは第3戦を迎えた。6月には第4戦ル・マン24時間レースが控えているとあり、また開幕戦のカタール、イモラと比べると比較的ル・マンに近い性格を持つコースということで、大一番へ向けた仕上がりを確認するレースとしても、重要な位置付けの一戦となる。
異例の“赤旗&延長”大波乱のWECスパでプライベーターが金星。ワークスポルシェを従え初優勝【後半レポート】
それでありながらフォーミュラEのベルリン戦と重複しているとあり、ハイパーカークラスではいくつかの陣営がドライバー2名体制で戦うことを選択している。また、LMGT3クラスのアコーディスASPチームでは、レギュラーのケルビン・ファン・デル・リンデのフォーミュラE代役出走に伴い空いたシートに、2023年スーパーフォーミュラ&GT500王者の宮田莉朋が乗り込むこととなった。
10日(金)に行われた予選では、50号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)のアントニオ・フォコがトップタイムをマークしたものの、その後の車検で規定違反が見つかり失格に。6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)が繰り上がりでポールポジションとなり、2号車キャデラックVシリーズ.R、99号車ポルシェ(プロトン・コンペティション)と続くグリッド上位のオーダーで決勝を迎えた。なお、50号車フェラーリはハイパーカークラスの最後尾グリッドへと回されている。
■BMWがポルシェに追突した影響で長時間のSCに
現地時間12時53分、気温21度/路面温度28度という晴天の下で2周のフォーメーションラップが始まる。
ハイパーカークラスではグリッド上位から順に5号車ポルシェがフレデリック・マコウィッキ、2号車キャデラックがアレックス・リン、99号車ポルシェがアンドラウアー、12号車ポルシェ(ハーツ・チーム・JOTA)がウィル・スティーブンス、6号車ポルシェがローレンス・ファントール、8号車トヨタGR010ハイブリッド(TOYOTA GAZOO Racing)がセバスチャン・ブエミ、35号車アルピーヌA424(アルピーヌ・エンデュランス・チーム)がシャルル・ミレッシ、83号車フェラーリ(AFコルセ)がロバート・クビサで、レースをスタートした。
なお、ソフトとミディアムが持ち込まれているミシュランのスリックタイヤだが、ほとんどの車両がミディアムを選択。また、35号車アルピーヌはハイパーポールでトラブルに見舞われたのち、エンジン交換をして決勝に臨んでいる。
13時過ぎにレースはスタート。接近戦のなか、5号車ポルシェを先頭に大きな混乱はなくレースへと入っていく。8号車トヨタのブエミは9番手へとポジションを下げる一方、7号車のマイク・コンウェイは順位を上げた。
開始10分過ぎ、オー・ルージュへの進入で99号車ポルシェが2号車キャデラックをパスし、2番手へと浮上。キャデラックはこのあとも第1スティントのうちに大きくポジションを下げていった。一方でハイパーポール進出を逃した51号車フェラーリは開始20分にして4番手にまで順位を上げる。
時を同じくして、8号車トヨタにはフォーメーションラップでのフロントモーターからの放出パワー違反があったとして、5秒のストップ&ゴーペナルティが科せられ、ほぼクラス最後尾にまでポジションを落とすことに。
30分が経過する目前、7号車トヨタのコンウェイはGT車両のトラフィックに引っかかったタイミングで、最後尾スタートだった50号車フェラーリのニクラス・ニールセンにオーバーテイクを許す。これで50号車は12番手にまで順位を上げる。
40分経過前、最終シケイン進入でGT3車両が絡んだタイミングで、99号車ポルシェが5号車ポルシェからトップを奪うと、すぐに数秒差にまでギャップを拡大。そして1時間経過を前に、51号車フェラーリのアントニオ・ジョビナッツィが6号車ポルシェのファントールを攻略し、3番手へポジションアップを果たしていった。
最初の1時間でデブリ回収のため2回のフルコースイエロー(FCY)が導入されるなか、ハイパーカー各車は1時間03分を経過したあたりから1回目のルーティンピットへと向かう。
この1回目のピットをもっとも引っ張ったのは、6号車ポルシェ、20号車BMW Mハイブリッド V8(BMW Mチーム WRT)、38号車ポルシェ(ハーツ・チーム・JOTA)、8号車トヨタの4台。6号車ポルシェはステアリングを交換し、ややタイムロスを喫した。
51号車フェラーリはこのタイミングでタイヤ交換も済ませ、コースに戻ると5号車ポルシェを逆転、2番手へと浮上を果たした。さらに83号車フェラーリのクビサも4番手へと進出。7号車トヨタのコンウェイは8番手へとポジションを上げた。
首位99号車ポルシェのアンドラウアーは秒違いのラップタイムを並べ、スタートから1時間30分が経過する頃には、2番手51号車フェラーリとの差を15秒程度にまで拡大する。
1時間30分、ターン8への進入で20号車BMWのレネ・ラストが38号車ポルシェのフィル・ハンソンに追突。この弾みで38号車は真横にいたLMGT3クラスの46号車BMW M4 GT3に激しく接触し、46号車は左側のガードレールに押し出されてフロントを大破してしまう。後に、20号車にはドライブスルーペナルティが科せられた。
この事故によりバーチャルセーフティカー(VSC)が導入されると、3番手の5号車ポルシェを皮切りに、各車が続々とピットへ向かう。首位99号車ポルシェもニール・ジャニへとドライバー交代。ピットアウト後にジャニは運転席側のドアを閉めることにしばらく難儀するが、ピットからさまざまな指示が無線で飛ぶなか、最終的には無事に閉めることができた。
このタイミングで7号車トヨタはニック・デ・フリースに、8号車トヨタは平川亮へとドライバーチェンジし、それぞれ9番手、11番手となる。
VSC導入から10分ほどが経過してほとんどの車両がピット作業を済ませると、セーフティカー(SC)へと運用が切り替わり、各車のギャップがリセットされることとなった。トップ6は99号車ポルシェ、51号車フェラーリ、5号車ポルシェ、6号車ポルシェ、83号車フェラーリ、50号車フェラーリというオーダーだ。
ターン8進入アウト側のガードレールに補修には時間を要し、パスアラウンドによる順位整理が終わった後、スタートから2時間が経過する頃にピットレーンがオープンに。しばらくすると中団以降では93号車プジョー、20号車BMW、11号車イソッタ・フラスキーニら3度目のピット作業に踏み切る陣営も出始め、戦略が分かれることに。トヨタの2台は9番手、10番手で中盤戦へと入っていった。
■3番手走行中の5号車ポルシェにアクシデント
SCランはおよそ45分続き、2時間25分経過時点でリスタートが切られると、50号車フェラーリのミゲル・モリーナが83号車フェラーリのイーフェイ・イェをかわし5番手へ。さらに次の周には6号車ポルシェを抜き4番手へ浮上する。
その背後では2台のトヨタが35号車アルピーヌを攻め立てるが、7号車にはVSC時のスピード違反があったとして、ドライブスルーペナルティが科せられ、15番手にまで後退してしまう。
一方、8号車トヨタの平川は35号車アルピーヌをパスして9番手へ。2号車キャデラックのアール・バンバーも12号車ポルシェをオーバーテイクし、7番手へとポジションを上げていく。
3番手走行中だった5号車ポルシェのミカエル・クリステンセンがターン17立ち上がりで突如コースオフ。コース左側のウォールへと接触してしまいマシンを止めた。これによりFCYが導入され、レースは3時間を迎えた。
SC明けからも99号車ポルシェは快走を続け、3時間経過時点のFCY直前にはでは2番手51号車に数秒程度の差をつけていた。その背後は3番手に50号車フェラーリ、6号車ポルシェ、83号車フェラーリ、2号車キャデラックというトップ6のオーダーとなっている。
トヨタは8号車の平川が8番手、7号車のデ・フリースが12番手でレース折り返しを迎えた。SCが導入されたこともあり、前半を迎えても上位9台の差は1分以内。後半戦も息詰まる展開が続いていきそうだ。
■LMGT3:アイアン・デイムスが独走体制を築くもSCでリセット
LMGT3クラスでは、85号車ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2(アイアン・デイムス)がサラ・ボビーのアタックによりポールポジションを獲得、46号車BMW M4 GT3(チームWRT)、91号車ポルシェ911 GT3 R(マンタイEMA)と続く予選結果となった。
日本勢では、宮田の加わる78号車レクサスがクラス9番手、Dステーション・レーシングの777号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3が14番手、小泉洋史の82号車シボレー・コルベットZ06 GT3.R(TFスポーツ)が15番手、木村武史の87号車レクサスRC F GT3(アコーディスASPチーム)が16番手、そして当初ハイパーポールでジョシュ・ケイギルが2番手タイムを記録するも、その後の車検で失格が決まった佐藤万璃音の95号車マクラーレン720S GT3(ユナイテッド・オートスポーツ)が最後尾となる18番手から、レースをスタートした。小泉と木村はスタートドライバーも務めている。
序盤、4番手スタートだった59号車マクラーレンが2番手へと進出。一方でポールスタートのボビーは独走体制を築き、最初の1時間で40秒近いマージンを作り上げたが、1時間30分経過時点でのVSCからのSC導入でギャップがリセット。
このVSCでは各車がピット作業を行ったが、ステイアウトを選択した78号車レクサスは一時4番手へとポジションを上げる。
2時間を経過しSC中にピットレーンがオープンとなると、ほとんどの車両がこのタイミングで3回目のピット作業へ。ここでニコラス・コスタへと代わった59号車マクラーレンが、ラヘル・フレイへと交代した85号車ランボルギーニを逆転し、トップへと浮上した。
競技再開後は、フレイがコスタに激しくチャージをかけ、ケメルストレートエンドでクラス首位を奪い返し、レース折り返しを迎えた。なお、3番手走行中の27号車アストンマーティン(ハート・オブ・レーシングチーム)には、ピットでの作業違反により、次のピット作業で10秒のストップタイムが加算されることになっている。
日本勢ではDステーションの777号車アストンマーティンがクラス9番手。78号車レクサスは11番手を走行中で、このあと宮田が乗り込むものと思われる。
序盤、小泉がFCY手順違反でペナルティが科せられた82号車シボレーはセバスチャン・バウドへと交代した後に接触の影響かパンクを喫し、14番手。木村からエステバン・マッソンへと交代した87号車レクサスは15番手となっている。VSC時の違反でドライブスルーが科せられた95号車マクラーレンは、3時間経過時点のFCY中、ピットロード入口でマシンを止めている。
レースは後半戦に突入。現地時刻19時(日本時間26時)にフィニッシュを迎える予定だ。
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