快晴のホームステッド・マイアミ・スピードウェイで争われたNASCARカップシリーズ第34戦『ストレート・トーク・ワイヤレス400』は、残り7周のリスタートから“代表”デニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)や、王者ライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)との三つ巴を展開したレギュラーシーズン王者タイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)が、ホワイトフラッグから2台を撃破して自身初の『Championship 4』への出場権を獲得。土曜のフリープラクティス(FP)最速発進から予選でもポールウイナーに輝くパーフェクトな週末を勝利で締め括った。
来季2025年のNASCARチャーター契約(シリーズ参戦枠)に関し、商業的な権利独占に疑義を唱える『反トラスト訴訟』を起こした23XIレーシングとフロントロウ・モータースポーツ(FRM)の話題だが、両陣営はこの訴訟が解決を待つ間、2025年にチャーターでレースを続けることを許可するよう求める『仮差し止め命令』も提出し、NASCARの運営側と徹底的に争う構えを見せてきた。
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この数週間、チーム側の地位向上を求める意見の相違に直面し、改めて立場を明確にしたNASCARは、法廷に反論を提出したなかで両チームが「原告の希望する条件でNASCARに契約を強制しようとしている」と非難。その要求は「強制的な差し止め命令を得るために必要な、厳しい基準をはるかに下回っている」と述べ、対立は泥沼化する一方となっている。
この問題に際し、今季限りでスチュワート・ハース・レーシング(SHR)の活動を停止し、自らが注力するNHRA(National Hot Rod Association/全米ホットロッド協会)や、スプリントカーでのプログラムに移行する決断を下したトニー・スチュワートも独自の見解を語っている。
「(NASCARは)健全であり、生き残るだろう」と続けたスチュワート。「これまでもそうだったし、これからもそうだろう。しかし、人生のこの時点でこの変化を起こせてうれしい……今季の初めはSHRを閉じる考えはなかったからね」
「シーズン終了時にカップシリーズでの活動をシャットダウンしなければならなかった理由はさまざまだが、時間が経ちオーナーとNASCARの争いや、あそこで起こっている混乱を見ていると、年末にレースを終えても問題ないと今は思っている」
こうして始まったポストシーズン後半戦『Round of 8』の2戦目は、その当該チームに所属するレディックが先行。前述のとおり土曜午前のFPでトップタイムを記録すると、午後の予選でもカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)らを退け、カップ通算9回目のポールポジションを得た。
「これは僕らにとって大きな意味がある」と、ホームステッド・マイアミでは初のポール獲得となったレディック。「この“ビースト”カムリは本当に速いし、予選でそのチャンスを活かすことができて良かった。『先週の終わり方』を考えると、正直言って中断したところから再開することになる。明日が楽しみだ。ここは僕の好みの場所だし、明日何をすべきか分かっている」
迎えた決勝は、ステージ1で好敵手となったラーソンが47周目に右後輪のパンクからウォールの餌食に。これでライバルの消えたポールウイナーが、まずは順当なステージウインのポイントを重ねていく。
続くステージ2では2列目4番手発進だったハムリンが勝利をさらったが、7番手発進だったチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)や、さらに後方20番手から躍進してきた王者ブレイニーら、ポストシーズンを争うトヨタ、シボレー、フォードの各陣営を代表するトップドライバーたちが入れ替わり立ち替わりの首位攻防を繰り広げる。
■王者ブレイニーが意地を見せるが……
すると最終ステージ終盤でトップ争いの輪に復帰していたラーソンが、ターン3でブレイニーとオースティン・ディロン(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)の中央に割って入ろうとして姿勢を乱し、敢えなくスピン。ピットロードではHMSのクルーがディフューザーフラップを所定の位置に戻さなければならなかったため、ここでトップ10圏外にポジションを落としてしまう。
この最終コーションで、ここまで燃費走行を続けていたレディックはステイアウトの判断を下し、一方のブレイニーはハムリンとエリオットを従えピットレーンを後にする。
ここから残り7周のリスタート。前を行くレディックとブレイニーに対し、ハイサイドから仕掛けたハムリンが首位を奪うと、ホワイトフラッグを前にしたターン3~4では、粘りを見せた王者ブレイニーが差し返す意地を見せる。
これで実質3台の勝負となったファイナルラップ。ターン1~2でボトムを選択したレディックが、まずはチーム代表のハムリンを仕留めると、そのままバックストレッチを3台パックの中央で通過。速度を乗せた45号車カムリXSEは、そのままターン3~4のハイラインへ突入し、王者ブレイニーをオーバーテイク。レースハイの97周をリードした勝負でトップチェッカーを受けた。
「明らかにがっかりだ」とフィニッシュ目前で2位惜敗のブレイニー。「勝つチャンスは大いにあったのに、最後のラップがあまり良くなかった。ターン3に激しく突っ込んだと思ったら、レディックが猛スピードで突進し、彼にラインを奪われた。あそこで1台に行かれ(勝機を)失ってしまったのは残念だ」
「12号車のクルーみんなが本当に速いレースカーを持ってきてくれたことに感謝している。(最終戦の地)フェニックスに行くチャンスは大いにあったが、まだもう1回チャンス(次戦マーティンスビル)が残っているし、それを楽しみにしている」
そう語った“ベストルーザー”に対し「コーナーで追い詰められたんだ。他に選択肢はなかった」と明かした勝者レディックは、ひと足先にフェニックスへの切符を手にした。
「タイヤ(のフレッシュさ)が不足していたのは分かっている。ホームステッドではそれは致命的だが、気にはしないよ。僕らはこのレースに勝つために必要なことをした。そしてチャンピオンシップを争っているんだからね」と続けたレディック。
「右サイドドア(のドラフト)を使って彼に追いつく必要があると分かっていた。彼が何をしたかは気にしなかったし、彼はクリーンなレースをしてくれた。感謝している。このチャンピオンシップを狙えるチャンスがあることに興奮しているし、本当に信じられない勝利だよ!」
併催となったNASCARクラフツマン・トラック・シリーズの第21戦『バプテスト・ヘルス200』は、背後のライバルたちがホワイトフラッグで燃料切れに見舞われるサバイバルのなか、グラント・エンフィンガー(CR7モータースポーツ/シボレー・シルバラードRST)が今季2回目の連勝で通算12勝目を挙げることに。
同じく併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第31戦『クレジット・ワン・NASCARアメックス・クレジットカード300』では、終盤コール・カスター(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)からトップを奪ったオースティン・ヒル(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)が今季4勝目、キャリア通算10勝目を飾り、こちらも自身初の『Championship 4』進出を決めている。
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