総重量は驚異の500t!
ドイツの大手商用車メーカー、MANは2024年7月25日、ドイツ海軍がかつて運用していた潜水艦を陸路で長時間運ぶ一大プロジェクトに参加したことを明らかにし、そのために用いられた超ロングトレーラーの概要を公開しました。
そもそもこの輸送は、ドイツ南西部バーデン=ヴュルテンベルク州にあるジンスハイム技術博物館の新たな展示品として潜水艦を運び込もうというものです。選ばれたのは、かつてドイツ海軍が運用していた潜水艦「U17」。この艦は第二次世界大戦後、西ドイツ(現ドイツ)が建造した206型潜水艦の5番艦で、1973年11月に就役すると、37年間にわたって、バルト海を中心に活動していました。
2010年に退役すると、汚染物質の除去や武装の撤去などでしばらくのあいだはヴィルヘルムスハーフェンの海軍工廠に係留されていましたが、他の潜水艦との比較検討の結果、2021年に保存が正式決定します。
【動画】目的地の博物館へ到着した潜水艦 ファイナルランの様子
とはいえ、博物館が所在するジンスハイムはかなりの内陸で、バルト海に面した港町ヴィルヘルムスハーフェンとは直線距離でも500kmほど離れています。そこで、途中まではキール運河やライン川、ネッカー川を使って運搬用の艀(はしけ)で運ばれ、ハスマースハイムで陸揚げされたのち、今度はトレーラーで陸路ジンスハイムまで運ばれるというルートが採られました。
ただ、この潜水艦、全長は約50m、重さは約350t(水中排水量は500トン)あります。最大幅も4.6mあり、運ぶためには相応の大きさの車両でないと難しい状況です。そこで用意されたのが、30軸の低床トレーラーでした。
このトレーラーは車輪も各軸に左右2輪ずつ計4輪、トータルで120輪ある巨大なもので、全輪操舵の機能も備えています。なお、重量物の積載に耐えられるよう、トレーラー自体も重量150tあるため、今回の積み荷である「U17」と合わせるとその重さは500tにもなったそうです。
約30kmを3週間かけて移動
また、ここまで重いトレーラーを引っ張るため、トラクター(トレーラーヘッド)も特殊なものが用意されています。白羽の矢が立ったのは8輪仕様のMAN「TGX 41.680」でしたが、パワーロスが生じないよう足回りを原型の8×4から8×6に改造した特別仕様のモデルが用いられています。
こうしてトレーラー(被牽引車)とトラクター(牽引車)を合わせると長さ90m、重さ約530tにもなった超重量物輸送車は、ハスマースハイム ジンスハイム間の約30kmを約3週間かけて走破しています。
ただ、潜水艦のセイルまでの高さは約10mあったため、トレーラーには船体を回転させられる装置が組み付けられており、高架をくぐる際など高さ制限のある場所では潜水艦そのものを回転させ、高さを低くしてくぐり抜けています。
このような形で慎重に運ばれた潜水艦「U17」は、2024年7月30日に無事、目的地のジンスハイム技術博物館に到着しており、今後は所要の修復や化粧直しが行われたうえで一般公開される予定です。
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そしてこれだけのことができる博物館リッチ!