安直なワゴン化ではなかったエボワゴンの誕生物語
ランエボ(ランサーエボリューション)といえばセダン。それは、4代目ランサーをベースとした第一世代から、ギャランフォルティスをベースとした最終・第四世代のランエボ10まで、セダンボディが中核モデルに据えられ、WRC参戦マシンもつねにセダンだったことから、そのイメージはファンのみならず三菱自身も強く抱いていたことと想像される。
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だがそんな固定概念を、三菱自らが打破する。それが2005年9月、同年末までの期間限定かつ2500台限定モデルとして誕生した「ランサーエボリューションワゴン」だ。しかもそれは、単にランエボのパワートレインとシャーシをランサーワゴンに組み込んだだけの代物ではない。セダンに対し開口部が大きくリヤの隔壁もないなど、剛性面で不利なワゴンボディに対し、これでもかというほどの補強を施してきた。
剛性不足のワゴンボディを補う大手術を実施
具体的には、エンジンルームと前後フロアはランエボ9のものを用いながら、ランサーワゴンのサイドパネルとルーフパネルをこれに結合。そのうえでA・B・C・Dピラーとルーフとの結合部を補強し、大型リヤフロアクロスメンバーを追加することで、ねじり剛性を大幅に高めている。
さらにリヤダンパー取付部にも補強材を追加。テールゲート開口部には約50点のスポット溶接増し打ちを行うことで、セダンに対してとくに不利なリヤまわりを重点的に強化したのだ。
さらにディーラーオプションとして、リヤハイパフォーマンスバーを設定。これを装着すれば、荷室の使い勝手は落ちるものの、リヤの追従性と安定性をセダンのランエボと同等レベルに高めることができた。
セダンにヒケを取らないヤンチャなスタイリングを踏襲
エクステリアは、アルミ製のエンジンフードおよびフロントブリスターフェンダーをランエボ9から踏襲。フロントバンパー&グリルもランエボ9と共通イメージとしつつ、6速MT車の「GT」はランエボ9と同じくナンバープレートを助手席側に、5速AT車の「GT-A」はかつてランエボ7をベースに作られた「ランサーエボリューション7 GT-A」と同じく中央に装着した。
そのうえで、ランサーワゴンのテールゲートと、同「ラリーアート」用の大型テールゲートスポイラーを装着。さらに専用品としてランエボ9と共通イメージのリヤバンパーと、235/45R17サイズのワイドタイヤを包み込むことができるブリスターフェンダーを備えたリヤクォーターパネルを採用した。これにより、セダンのランエボと外見上も遜色ないレーシーな装いを手に入れている。
静粛性はワゴンに「軍配」快適性も兼ね備えていた
室内は、ランエボ9と共通のチタン調センターパネルやカーボン調インパネ加飾などを装着したオフブラック内装を基本に、アルカンターラ×本革表皮のレカロ製フロントセミバケットシートを全車に標準装備。
リヤシートはランサーワゴンと同じく6:4分割式ながら、表皮は専用のアルカンターラ×プロテインレザー。さらに、リヤホイールハウスが大型化されたことにともない、傾斜配分がやや前傾化されたものになっている。また、荷室周辺には遮音・吸音・制振材が追加され、セダンのランエボ以上に静粛性が高められた。
街乗りでも不満のないマルチなGT性能を発揮
エンジンスペックは「GT」がランエボ9の「GSR」、「GT-A」はランエボ7の「GT-A」と共通で、前者は280ps/6500rpmと40.0kg-m/3000rpm、後者は272ps/6500rpmと35.0kg-m/3000rpmを発生。ピークパワーだけではなく低回転域のトルクも力強く、サーキットやワインディングだけではなく街乗りでも扱いやすい特性を備えている。
筆者がかつて所属していた自動車雑誌編集部には、このランエボワゴン「GT-A」が長期レポート用車両としてガレージに収まっていた。走りには第三世代までのランエボらしい荒々しさがあったものの、都内の移動や箱根のワインディングでの撮影&試乗会取材、果てはイベントでの機材運搬まで、マルチに活躍できるGT性能の持ち主だった。
わずか2年の短命で終わるも記憶に鮮明に残る1台だった
その後2006年8月には、第三世代ランエボの集大成と言える「ランサーエボリューション9 MR」と同時に「ランサーエボリューションワゴンMR」が登場する。
ランエボ9 MRは「GSR」と「RS」の2グレード構成に戻される一方、ランエボワゴンMRは従来通り「GT」と「GT-A」の2グレード体制が維持された。ランエボ9 MRおよびワゴン「GT」のエンジンは、ターボチャージャーのタービンホイール材質がインコネル(ニッケルクロム系合金)からチタンアルミ合金に変更。シャーシもアイバッハ製スプリングの初採用とともに10mmローダウンし、さらにスーパーAYCの左右後輪駆動力制御量を約10%増大させるなど、細部に改良が施された。
しかしながら、翌2007年にデビューした第四世代のランエボ10には、そのベース車であるギャランフォルティス自体にワゴンボディが設定されなかったため、ランエボワゴンはわずか2年の短命モデルに。ラリーマシンさながらの走りに日常域での使い勝手の良さを兼ね備えたこのランエボワゴンは、セダンのランエボ以上に万能かつ希少価値の高い一台と言えるだろう。
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みんなのコメント
農作業に使うからちょうど良いワゴンが欲しくて、地元の農協に手っ取り早く使えるワゴンを1台!って言うと、これを持って来た。
農道のポルシェに対抗して、農道のランボルギーニな走りが出来る車だったけど友人に貸したら全損事故で乗れなく成ったのは惜しかった。