もくじ
ー 「独身貴族のためのクルマ選び」
ー 恐るべきBMWパワー
ー 心に残るのはポルシェか
ー 高価なクーペの絶対必要条件
ー BMW、ポルシェの一騎打ちへ
「独身貴族のためのクルマ選び」
われわれは通常、グループテストでは同じカテゴリーに属する似たような性格を持つクルマを集めて評価している。例えば、2ℓのBセグメント・ホットハッチ対決、5ℓ級のLセグメント・サルーン対決というようにである。
しかし、今回はいつもとは若干異なるかたちをとらせていただく。ここに集めた3台、BMW 335iクーペ、アウディTTクーペ3.2クワトロ、ポルシェ・ケイマはスポーティなクーペという共通点はあるものの、FRで実用的なリアシートを備えるBMWに対して、ポルシェはミドシップ2シーター、アウディは4WDの2+2クーペという相違点がある。
ちなみに3車の価格は、高い順にBMW(701万円)、ポルシェ(633万円)、アウディ(574万円)。
なぜ、そういう3台を集めたのかというと、この手のクーペを買うひとびとは、実際にはリアシートを必要としていない場合が多く、それならば2シーターとリアシートの有無は無視しても構わないのではないかという結論に達したからだ。
この対決は言い換えれば「独身貴族カーガイのためのクルマ選び」である。ポルシェ911やフェラーリF430は無理だが、700万円以下でカッコよくて走りがいいクーペを探している方は是非ともお読み頂きたい。
当初はこの3台にメルセデス・ベンツSLKを入れて4台対決にすることも考えたが、ご存じのようにSLKは過去のテストで何度もケイマンに破れているので、スリーポインテッドスターにこれ以上恥をかかせるのはやめることにした。
ところでBMWに関して、335iクーペではなくZ4Mクーペのほうがふさわしいのではないかと考える向きもあるだろうが、Z4Mクーペは807万円もするし、BMWとしても今回の対決に、とうてい万人向きではないZ4Mクーペを出場させるより、最新の335iクーペを持ってくるほうが本望なはずだ。
恐るべきBMWパワー
先日われわれは335iクーペに単独で試乗しているが、その驚異的な速さには心底驚かされた。何しろ高速道路の追い越し加速ではM3と勝負できるくらい速い。
このクルマのパワーソース(3.5ℓではなく3ℓの直6ツインターボ)は、306ps/5800rpmの最高出力と40.8kg-m/1300-5000rpmの最大トルクを発生するが、注目すべきは一世代前のV8フェラーリ(360モデナ)を上回るトルクを、走り出した瞬間から発生している点だろう。
トランスミッションは日本へ導入されているのは6段ATのみだが、今回試乗したのは6段MT仕様。車両重量は3台中もっとも重く1600kgもあるが、それにも関わらず馬力荷重比は191ps/トン、トルク荷重比25.5kg-m/トンをマークし、TTとケイマンを引き離す。
BMW、というより3シリーズ・クーペには、もうひとつBMWファンには見逃せない魅力がある。それは7シリーズから始まったバングル・デザインの事実上最後のモデルという意味合いを持っていることだ。
そのスタイリングはアウディやポルシェのように街ゆくひとびとが皆振り返るような派手さはないが、躍動的で、どこから見ても美しい。
アウディは3台中唯一の4WD車であり、スタイリング的にもインパクトがある。パワーソースはゴルフR32譲りの3.2ℓV6で、最高出力250ps/6300rpm、最大トルク32.6kg-m/2500-3000rpmをマークする。
日本仕様のトランスミッションはデュアルクラッチの6段Sトロニックであるが、試乗車は6段MT。ボディはアルミとスティールを併用する新設計のASF(アウディ・スペース・フレーム)で、これにより先代モデルから大幅なダイエットに成功している。
1410kgという重量は4WDであることを考えれば軽いが、それでもポルシェには敵わない。馬力荷重比は最下位の177ps/トン、トルク荷重比は2番手の23.1kg-m/トンである。
ポルシェはエンジンスペックでは2台に大きく見劣りする。ミドシップマウントされる2.7ℓ・フラット6はボクスターと同じもので、最高出力は245ps/6500rpm、最大トルクは27.8kg-m/4600-6000rpmに過ぎない。しかし、車重が1300kgに収められているので、馬力荷重比はトップのBMWに迫る188ps/トンをマークする。
もっとも、トルク荷重比は排気量の小さいことが反映されて21.4kg-m/トンと、両車に大きく引き離されている。ちなみにポルシェのトランスミッションは5段MTがスタンダードで、6段MTはオプション扱いとなっているが、試乗車は5段MTである。
心に残るのはポルシェか
3台を走らせてみて、ともかく印象的だったのは、ポルシェが驚くほど繊細で濃密なフィールを備えていることだ。
コックピットはスポーツカー特有のタイトなフィット感で満たされており、街中をゆっくり流していても、ワインディングロードをハードに攻めていても、常にクルマとの一体感を感じながらドライビングに集中できる点は、さすがである。
だが、さすがのポルシェもBMWの後に乗るとパワーが不足しているように思えてくる。335iクーペの3ℓツインターボは、数値的にはケイマンの2.7ℓの約1.5倍のトルクがあるが、実際にはそれ以上の差があるように感じられてしまう。
先程、335iクーペは高速道路の追い越し加速ではM3並みに速いと述べたが、335iクーペとM3のパワーソースの決定的な違いは、前者が高回転を使わなくても頼もしいトルクが得られるのに対して、後者はそうではないという点だ。335iクーペは確かに速いが、それは積極的にレッドゾーン手前まで回したくなるM3ユニットとは異質のものなのである。
ここで3台の動力性能を検分してみよう。
トップギア固定状態(BMWとアウディは6速でポルシェは5速)での80-113km/h加速は、BMWが6.0秒、アウディが7.4秒、ポルシェが9.0秒。
次にゼロ発進加速であるが、BMWは発進加速にはもっとも不利なFRにも関わらず0-100km/hが5.4秒、0-161km/hを12.8秒という、リアルスポーツも真っ青の俊足ぶりを見せた。
アウディの0-100km/h:5.8秒、0-161km/h:15.1秒という加速タイムはまあまあ立派だが、このクルマは発進加速には有利な4WDであるということを忘れてはならない。
ポルシェは0-100km/h:6.1秒、0-161km/h:15.2秒だ。あと一歩、アウディに及ばなかった。こうして比べてみると、いかにBMWの動力性能が強烈かがおわかりいただけるだろう。しかし、ポルシェも排気量を考慮すれば大いに健闘したと言っていいだろう。
高価なクーペの絶対必要条件
この3台は走りのキャラクター自体大きく異なる。アウディのステアリングを握って、ワインディングでポルシェとのバトルをしてみると、最初のコーナーを抜けただけで、両車の間には決して埋まらない決定的な違いがあると気づく。
極論すると、アウディは純粋にスポーツドライビングを愉しむためには造られていない。先代モデルから見れば、走りは飛躍的に良くなったが、そこには依然としてスポーツスピリットの神髄が欠けている。
ポルシェはしなやかな足が路面のうねりと息を合わせるように動き、大小さまざまなコーナーを流れるようにクリアしていくのに対して、アウディの足はソワソワと落ち着きがなく、舗装の良くない道では跳ねる傾向もあるため、ポルシェのようにリズミカルには走れない。ステアリング・インフォメーションもポルシェほど濃厚ではない。
BMWのシャシー・ポテンシャルも高い。ボディコントロールは優秀で、路面状況に関わらず文句のないロードホールディングが得られる。このため、湧き出るようなトルクを余すことなく路面に伝えられる。
ワインディングでのシャシーのポテンシャルという意味ではポルシェの7割ほどのレベルだが、高速道路の快適性で勝負すれば、ポルシェもアウディも目じゃない。
BMWの数少ない不満点はステアリングで、センター付近が曖昧なことに加えて、インフォメーションも不足気味である。
BMWがポルシェとアウディの2台に明らかに負けているものは走りに関することではない。
それは、700万円もするクーペなのにまるで人目を引かないということだ。アウディに乗っていると老若男女を問わず熱い視線が注がれるし、ポルシェの場合はカーガイから質問攻撃に遭う。
ところが、BMWではそのどちらの体験もできない。
高価なクーペを買うということは、優れたパフォーマンスやクオリティの高さを手に入れるだけではなく、ひとびとから羨望の眼差しを受けることも含まれると考えるのはおかしなことではない。
もし、貴方もそういうふうに考えるのなら、選ぶべきはBMWではなくアウディかポルシェだ。そうではなくて、クルマを操る愉しさを最優先するなら、選ぶべきはアウディではない。
新型アウディTTの走りの洗練度は先代モデルから大きく向上しているが、だからと言って、ワインディングでポルシェと張り合えるシャシーは備えていないのだ。
結論に移ろう。
BMW、ポルシェの一騎打ちへ
BMWとポルシェのどちらが勝者か。これはクーペに何を求めるかによって変わってくる。
純粋に走りの良さを求めるなら、これはもうポルシェを選ぶ以外に選択肢はない。たしかに加速競争ではBMWには敵わないが、その濃厚で洗練された走りは必ずやカーガイを満足させるはずだ。
しかしそうではなく、走りと実用性どちらも譲れないクルマ好きなら、BMWを選べばいい。3台中ベストのオールラウンダーであるからだ。
しかし、われわれはそれでもポルシェを選ぶ。ひょっとしたら月に1日くらいは「BMWにしておけば良かった」と考えるかも知れないが、だからといってそれはポルシェを選ばないことの理由にはなりえないのである。
それほどポルシェの楽しさは突き抜けている。楽しさは、利便性をも飛び越えるというのが、AUTOCARとしての判断である。
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