新型クロストレックが日本でも発表されたが、そのスタイリングは比較的おとなしかった先代XVに比べてゴツゴツした印象に。そのエクステリアにはブラックの樹脂製パーツがさまざまな箇所で装着されており、特に前後フェンダーに採用されている通気孔のあるクラッディングは特徴的だ。
こうしたブラックのフェンダーはほかにもRAV4のAdventureにも採用されており、SUVとしてのタフなイメージを演出するのに欠かせないパーツとなっている一方、スポーツセダンである現行型WRX S4にもこのクラッディングがついているのは賛否両論あるようだ。
SUVらしさ全開だけど……「ブラック樹脂フェンダー」は劣化して白くなるのか!? 採用の是と非
そこで、樹脂フェンダーと樹脂バンパー、劣化して白くなるメンテのほうが気になってくるところなのだが、実際はどうなのか、その是と非について解説する。
文/高根秀幸、写真/高根英幸、SUBARU、TOYOTA、SUZUKI、MAZDA
■スタイリング上のアクセントとなる「クラッディング」
2022年9月に公開されたスバル クロストレックには、ホイールアーチモールをはじめとしたエクステリアの各所にブラックの樹脂製パーツが装着される
SUVの人気は衰えることを知らないようだ。そのため各メーカーともSUVのラインナップを増やしているが、すべてのSUVが同様に高い人気を得るという訳ではない。やはりデザインや機能で人気が分かれ、販売台数の多少にそれが反映されている。
そんななかで、SUVのスタイリングにおいてアクセントとして用いられているのがクラッディングと呼ばれるアイテム。もともとは外装材の総称らしいが、北米でこう呼ばれるようになったのが日本にも伝わったようだ。
クラッディングとはPP(ポリプロピレン)樹脂の素地仕上げのホイールアーチモールのこと。特に大型化されているSUVでは黒々としたアーチモールがアクセントとして際立っている。塗装せずに樹脂の素材感を強調することでワイルドな印象をより高めることができるのだ。
最近ではさらにエスカレートして、クラッディング自体を立体感のある造形としてアクセント以上の存在感を放つデザインへと仕立てているSUVも登場している。
■クラッディングを採用するメリット
このクラッディングを採用するメリットは、デザイン上のアクセントになるだけではない。無塗装だから製造コストが安いのも大きなメリットだ。SUVなど比較的低価格なクルマを実現するには製造コストも重要だから、非常に重宝するのである。
フェンダーアーチモールはそもそもサイドプロテクションモールと一緒にボディの塗装面を守る意味合いが大きかったアイテムで、クルマによってはオーバーフェンダー的な使い方もされてきた。
しかもPP樹脂はしなやかで強靭、射出整形での造形性は高く複雑なデザインや表面のシボも再現性が高いので、外装だけでなく内装にも用いられている。
外装では擦ってスリキズなどが生じても無塗装なので目立ちにくく、凹んでも復元するのでボディが大柄で未舗装路などを走行する機会の多いSUVには、まさに打ってつけの素材。しかも損傷が酷い場合も、クラッディングだけ交換できるようにしておけば、部品代も安く済ませられる。
無塗装ではない、ほかの外装パーツの場合、交換するとなるとボディカラーに塗装してから装着する必要があるため、交換費用がグンと跳ね上がるのでユーザーにとってもありがたい仕様なのだ。
■デメリットは無塗装ゆえの劣化問題
フロントガラス下、ボンネットとの境目に使われる樹脂パーツ。右側3分の1ほどが白っぽく色褪せているのがお分かりいただけるだろうか。カー用品店などで取り扱う白化除去剤を使用したのが左側。黒い光沢が復活するが、手間は少ないに越したことはない
しかし、高分子樹脂を素地仕上げで利用することはメリットばかりではなく、当然デメリットも存在する。それは紫外線による劣化が避けられない、ということだ。劣化は白化とも言われる白い変色で、その現象は高分子の分子鎖が断裂することで、そこに空気が入ってしまい白く見えてしまうものだ。
カーワックスがボディの光沢を得る手段の主流だった頃はPPバンパーやフェンダーアーチモールのシボにワックスが入り込んで白くなってしまうこともあったが、コーティングが主流の現在は明らかに白化がPP素地仕上げを見すぼらしくさせてしまう原因だ。
この白化も、最新のケミカル用品を使えばある程度カバーできる。市販の素地仕上げ樹脂コーティング剤でも白化を回復させて6カ月程度は維持してくれるが、プロの洗車屋が施してくれるセラミックコーティングで1年以上の保護効果を謳うところもあるようだ。
洗車好きなら、3~4カ月に1度コーティング剤で保護してやれば充分に維持可能なので、手入れをすることが面倒でなければ、美観を保つことはできる。
また、水で濡らして擦るだけで汚れが落とせるメラミンスポンジを使って、劣化した部分だけを落とすこともできる。しかもシボの印象はそのまま(徐々に薄れていくのだろうが)なのだから、こちらも手軽に利用できる白化を解消できる手段だ。
■PP素地仕上げは増やすべきか、減らすべきか
PPはリサイクルしやすい素材であるから、どんどん採用すべきだと思うが、そのままでは高級感を醸し出すのは難しい。しかし、バンパー本体の素材としても使われるほど強靭で、造形が豊かに表現できるのは、プラスチックとしても優秀であることは間違いない。
クルマのスタイリングへの素地仕上げでの利用は、あくまで部分的なものにとどめるべきで、現在のSUV人気とそのデザイントレンドから考えるとそろそろ上限と考えることができそうだ。
また、塗装や接着が難しいという課題はあったのだが、それもプライマー(下地処理剤)や専用接着剤などの開発により改善され、原料への着色以外にも加飾が可能になり、補修も行えるようになった。
PP樹脂の利用は幅広く、身近なところでいうとペットボトル(その名の通りボトル本体はPET樹脂)のキャップやコンビニのお弁当の容器(黒い下皿)などで、実はプラスチックのなかでは2番目に生産量が多い。
石油というと、ガソリンばかりをイメージしがちだが、石油を原料とした製品は実に幅広い。石油からはガソリンなどの燃料以外にいろいろな副生物が取り出される。一気に石油の利用を減らすことができない以上、PP樹脂の利用を極端に減らすことはあまり意味のないことだろう。
同じプラスチック製品に作り替えられるマテリアルリサイクルにも適した素材なのだが、まだ残念ながら燃料としてのリサイクルが主流なのである。利用を減らすよりもマテリアルリサイクルを増やしていくようにするのが先決だろう。
PPの可能性を感じながら、リサイクルを推進するように利用者も意識することが大事だ。
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みんなのコメント
社用車のADバンと同じにしか見えないが
ダサいので買う気もなくなる
あからさまに経費削減だろ