真夏日が続き、人間にとってもクルマにとっても危険な暑さが続いている。こうした猛暑のなかで、クルマのトラブルが一番多いのはバッテリー関連だ。
2020年8月8日~8月16日のお盆期間中にJAFのロードサービス出動理由を見ると、1位は全体の28.96%となる過放電バッテリーで1万7237件、2位はタイヤのバースト/パンク、エアー圧不足で全体の18.8%、1万1237件。3位は破損/劣化バッテリーで4083件、全体の6.86%。1位と3位を合わせたバッテリー関連のJAF出動回数は全体の35.8%にも達している。(出典:JAF)
猛暑到来!! 車内に置き忘れると一発で壊れるスマホとノートPCを救え
こうしたデータが出ているとおり、真夏のクルマトラブルがダントツに多いのがバッテリーのトラブル。
もしバッテリーが上がったり、破損してしまったらどうすればいいのか? また、なるべくお金をかけないでバッテリーがダメになるのを防ぐ工夫を解説する。
文/高根英幸
写真/ベストカーweb編集部、トビラ写真(Adobe Stock@image360)
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■真夏のエンジンルーム内でのバッテリーの厳しい環境
バッテリーの寿命は約3年といわれているが、ここまで酷使している人もいるのでは?(Songkhla Studio@Adobe Stock)
梅雨が明けたと思ったら、いきなり真夏日を連発の日本列島。それでもクルマに乗っていれば乗員は冷房のおかげで涼しく快適な移動を享受できるが、クルマのほうは大変だ。車内を冷やすために、暑いところでより熱い環境にすることを強いられるのだ。エンジンルームの熱気たるやサウナといってもいいくらいの環境だろう。
外気温が1℃上がるとどうなるか。単純にエンジンルーム内の温度も1℃上がる程度だと思っている人もいるのではないだろうか。
実際にはそんな単純なことではなくて、エアコンのコンデンサーやラジエターといった熱交換器は外気温が高くなるほど冷却性能が低下していく。
だから無駄な加速をしてエンジンの温度を上昇させると、それを冷やすために冷却系の温度は上昇し、エンジン本体やエキゾーストマニホールドからの輻射熱も増えてしまう。
水温計の針は安定しているから問題ない、と思っているドライバーもいるだろう。しかし純正の水温計は中央付近を思い切りダルく作ってある。
それはなぜか。渋滞で水温計の針がグングン上昇したり、少し走るだけで水温が低下するような昔のクルマは、クルマ好きを鍛えることになったけれど、普通のドライバーには不安を煽るストレスの材料でしかない。
そこで自動車メーカーはエンジンの燃焼状態に問題が無く、オーバーヒートの心配がない範囲は、水温計の針を安定させるように電子式水温計の制御を調整しているのである。
実際には水温は結構変化しているものだ。OBD2ポートから水温センサーの信号を読み出せば、純正の水温センサーの位置でも水温は変動していることが分かる。
だが、そんなことより同じエンジンルームに置かれて厳しい状況となるバッテリーにこそ気を配るべきだろう。
バッテリーは温度が低くても、高すぎても問題となる。低ければ電圧降下を起こすし、高すぎればバッテリー液の蒸発が進んでしまう。
補水不要のMFバッテリーの場合、水素ガスや水蒸気を滞留させて圧力や温度を下げ、空気中の酸素と反応させて水に戻す複雑な通路を設けて、バッテリー液が目減りすることを抑えているが、それでも減っていくことを完全に抑えることは不可能だから、結果的にバッテリー液不足になれば、補水できないMFバッテリーは寿命ということになる。
アイドリングストップ車のバッテリーは、比較的寿命が短いようだ。バッテリーの主たる役目であるエンジン始動を信号で停止する度に強要される。
その後の走行で充電を積極的に行なって、始動時の消費電力を取り戻そうとするが、何度もエンジン始動を繰り返していれば、充電が追いつかず、常に充電不足の状態で使用されることになるので、バッテリーの劣化が進んでしまうことになる。
ディーラーも、車検後のトラブル発生を避けるために車検毎にバッテリー交換を行なうことが珍しくなくなっている。もっともカタログ燃費の測定モードがWLTCになってからは、アイドリングストップの燃費向上効果は薄いので、今後はそうした傾向は少なくなっていくだろう。
鉛酸バッテリーを寿命だとバンバン交換してしまうのは、そもそも全然エコではない。それに何度かバッテリー上がりをしても、鉛酸バッテリーは復活することもあるのだ。
バッテリーが上がった状態というのは、ほぼ完全に放電し切った状態のこと。そこから充電すればまた使えるようになることもあるが、電圧は元のようにまでは戻らない。それは電解液と極板のバランスが変わってしまっているからだ。
理論的には鉛(Pb)イオンと硫酸(SO)イオンが結合、還元することを繰り返すだけなのだが、実際には結合した硫酸鉛が徐々に結晶化されてしまう。これがバッテリーの劣化だ。
鉛蓄電池の劣化原因の80%はサルフェーションにあるといわれている。充放電の繰り返し、深い放電又は放置によって電極表面に硫酸鉛の硬い結晶が析出されやすくなり、この硬い結晶がサルフェーション(白色硫酸化)でわかりやすくいうとバッテリー内の極端子に付着するゴミ。パルス充電器によってこれを取り除くことができる。実勢価格は約6000円~
特にハザードランプやスモールランプを消し忘れするなど、消費電力が少なく長時間放電されると、この結晶化が進んでしまうのだ。
この現象はサルフェーションと呼ばれ、長い間、このサルフェーションは避けられない現象と思われて、鉛酸バッテリーの寿命を決める原因だと思われていた。
しかしこのサルフェーションを解消できる技術が考え出されてからは、そんな寿命問題も解決されつつある。
それはパルス充電という技術のことだ。微弱な電流の変動(電圧を微妙に変化させる?)を与えることで、極板を刺激してサルフェーションを減らすことができるのである。
完全に上がってサルフェーションがひどい状態のバッテリーの場合、さすがに一度充電しただけで解消されるものではないが、何度か充放電を繰り返すことで結晶化した硫酸鉛が徐々に解消されて、バッテリー液は元の状態に戻っていく。
これはバッテリーの再生業者が導入して、まだ使えるバッテリーのコンディションを整えて、再販している方法だ。
それでも全てのバッテリーに使えるとは限らないが、完全に死んでいないバッテリーであればほぼ確実に効果がある方法なのである。
■バッテリー上がりの前兆はあるのか?
オルタネーターが故障するとバッテリーの充電ができないため、セルモーターを回すことができず、エンジンを始動することができなくなってしまう(Adobe Stock@ake1150)
■バッテリー上がりの前兆
・バッテリーターミナル端子に粉が付いていたり、バッテリーがよく減る
・セルモーター音が鈍くエンジンがかかりにくくなる
・エアコンONやワイパーを同時に使用した際にヘッドライト暗くなる、走行時と停車時で明るさが違う
・アイドリングストップ機構の付いたクルマ場合、信号待ちでアイドリングストップする頻度が減った
・オルタネーターの故障
外出先で、バッテリー上がりが原因で立ち往生するほど、困るトラブルはないだろう。特に30℃を超える真夏日の日中、ロードサービスを待つ間は冷房も使えないのなら、パンクより始末が悪い。
バッテリー上がりの前兆としては、バッテリーの電圧が下がるとセルモーターの回転数が低くなることは、よく知られている。
ホーンやヘッドライトなどと比べて、セルモーターは一気に大電流を使うので、電圧降下が起こりやすいからだ。ヘッドライトが暗い、アイドリングストップする頻度が減った、なども前兆といえる。
それ以外で、バッテリーが弱っていると感じるとするなら、それはよほどバッテリーが弱っているか、ほかに原因がある可能性がある。
電装系統のトラブルとしては、オルタネーターのICレギュレーターが壊れることで発電しなくなってしまうケースも少なくない。これも冒頭のエンジンルーム内の温度上昇が関係していることもある。
というのも、オルタネーターはある程度の耐熱性は確保しているが自らも発熱するため冷却されることが前提だから、特に電子部品が組み込まれる制御部分は暑さに弱いのは否めない。
これは一気に壊れることもあるが、徐々にダメージが蓄積されていくケースもあるようだ。どちらにせよ半導体であるICは壊れる時には突然なので、発電できなくなって走行中もバッテリーから電力供給することになり、気付いたらバッテリーが上がってしまった、というトラブルになることもある。
■主なクルマの装備品の消費電力
・セルモーター:瞬間最大3600W
・エンジンイグニションON時:12~60W
・エンジンアイドリング状態:160~190W
・電動ファン:60~85W
・ヘッドライトHI(標準バルブ):130~140W
・ヘッドライトLOW(標準バルブ):100~115W
・バックランプ:50~55W
・ブレーキランプ:40~50W
・スモールランプ:35~40W
・フォグランプ:50~70W
・ルームランプ:10~15W
・ハザードランプ:50~100W
・エアコン風量1:70~95W
・エアコン風量2:110~120W
・エアコン風量3:145~160W
・エアコン風量MAX:210W
・パワーウィンドウ1ヵ所上昇:85~100W
・フロントワイパー:70~100W
・カーナビ:12~25W
・オーディオ:55~60W
・ETC:2.5W
・ドライブレコーダー:3.5W
■バッテリーの寿命を伸ばす、バッテリー上がりを起こさないためのひと工夫
クルマに乗る機会が少ない人はバッテリーキル(カットオフ)スイッチを取り付けるとバッテリーの放電を防ぐことができる。500円前後から購入でき取り付けも難しくはないので試してみるといいだろう(Adobe Stock@birdlkportfolio2559)
■バッテリー上がりを起こさないためのひと工夫
・1ヵ月に1回など定期的にバッテリー液の状態をチェックすること。面倒くさい人はディーラーやGSなどで夏と冬にチェックしてもらう
・ヘッドランプやハザードランプ、ルームランプ、ブレーキランプなどのランプ類を点けっぱなしにしない
・エンジン始動時にエアコンやオーディオをオフにする。目的地に到着する少し前にエアコンを切る
・ちょい乗りが多いという人は週1あるいは2週に1回の割合で最低でも30分以上の走行、高速道路での走行をおススメする
・大出力のカーオーディオやナビ、ドライブレコーダーやスマホ充電を頻繁にする人などは大容量バッテリーに載せ換える
・バッテリーにサルフェーションの発生を抑えるパルス発生器を取り付ける(3000円前後~)
・長期間クルマに乗らない場合はバッテリーキルスイッチ(500円前後~)を取り付けて放電を防止しバッテリーを長持ちさせる
バッテリーから電力供給していると思われているが、基本的にはエンジン始動時に大電流を出力するだけで、アイドリングでも電力はオルタネーターから供給されている。
しかし、いくら発電量を増やしてもアイドリングでは限界があり、渋滞中にエアコン全開、ワイパーやヘッドライト、ブレーキランプなども点灯しっぱなしでは、バッテリーからも電力を供給することになり、蓄電量が減っていくし、サルフェーションを招くことにもある。夜間ならヘッドライトも、停車中にはスモールランプに切り替えたほうが、バッテリーにとっては負担が減る。
頭に入れてほしいのは、バッテリーを十分に充電するために必要なエンジンの回転数は2000~3000rpm。アイドリング時のエンジン回転数は1000rpm以下だから、エンジンがかかっていても、クルマを停めてアイドリング状態でいるときにはほとんど充電がされないこと。
エンジンをかける時にはエアコンをオフにすることもバッテリーの寿命を延ばすコツ
またエアコンの使い方をひと工夫すること。エンジン始動時にエアコンやオーディオを消してエンジンをかけること。
そして目的地に到着する少し前にエアコン切っておくことだ。バッテリーは始動時(クランキング中)にたくさん電力を消費するが、エアコンやオーディオをつけているだけで負担増になるため、エンジンをかける時は、エアコンをオフにして純粋にエンジン始動だけに電気を使わせる。
また目的地に到着する少し前にエアコンをオフにするのは、バッテリー充電量を増やすことにつながる。オルタネーターで作られた電気の多くをバッテリー充電に回すことで、フル充電状態でエンジン停止することができるからだ。
エアコンのファンは全開にすると冷房能力が追い付かず冷風の温度が若干上昇してしまうこともある。1つでも風量を下げたほうが、消費電力を抑えられるし、冷風の温度が低くなるので、最適な状態に調整することだ。
それと暑い時間の渋滞はなるべく避けることだろう。渋滞は周囲のクルマから発せられる熱で周囲の気温が上昇してしまうだけでなく、車列の間の空気が停滞して、熱い空気が留まりやすい。それが相乗効果となってエンジンルーム内の温度をさらに高めてしまうし、暑いのでエアコンをフル稼働させる原因にもなる。
バッテリー液のレベルチェックを怠らないことも大事だ。これは冷却水やブレーキフルードの液量と同じく、月に1度以上はチェックしたい。気付いた時には減っていたとなると、トラブルの前兆を見過ごして、ダメージを大きくしてしまったり、一気に寿命を縮めてしまうことも起こり得る。
補水できるキャップ付きのバッテリーならバッテリー液のレベル(半透明なケースなら外側から、不透明ならキャップを開けて中の樹脂部分で見る)を見て、不足していれば精製水(バッテリー補充液としてカー用品店で販売されている)を継ぎ足してやる。
継ぎ足すと比重が落ちるので補充電が必要だ。MFバッテリーの場合は上面にインジケーターがあり、その色でバッテリーの状態を判断しよう。
バッテリー液が減り過ぎて極板の上端より低くなってしまうと、内部で火花が起きて水素ガスに引火して、バッテリーが爆発(バッテリーケースが割れる)する可能性もある。そうなるとエンジンルーム内やボンネット裏側は結構なダメージになるので、被害は甚大だ。
定期的に補充電するというのは、バッテリーのコンディションを維持するためには非常に効果的なことだ。それも前述のようにパルス充電器を選べば、充電のたびにバッテリーはリフレッシュされて長く使い続けることができる。
また車載のバッテリーにパルス発生器を取り付けることでも、サルフェーションの発生を抑えることができる。
ちなみに筆者はバッテリーにこのパルス発生器(3000円前後~)を装着しているが、装着以来バッテリーがダメになったことはない。通算で2台のクルマに装着し続け、合計で8年以上はバッテリー無交換を実現している。
バッテリーの交換時期が車検ごとで、4、5万円の専用バッテリーの負担が大き過ぎると感じているなら、アイドリングストップのキャンセラー装着を検討するのも手だ。
ただし渋滞中に冷房を全開にして、ライトやランプを点けっ放しにするのは、前述の通りバッテリーを弱らせるから、キャンセラーを装着したとしてもバッテリーの寿命を伸ばすことは難しい。
また長期間クルマに乗らないなら、バッテリーキル(カットオフ)スイッチを取り付けるのも有効だ。
バッテリーのマイナス端子に取り付けて、キルスイッチを作動させることで(例/ノブを右回りに締めると通電、左回りに占めると電力を遮断)バッテリーの放電防止や盗難防止に効果がある。
ちょっとした気遣いやひと工夫でバッテリーの寿命を延ばすことができるのだ。
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みんなのコメント
バッテリーのトラブルの最大の元凶は、アイドリングストップじゃないの。
アイストが、登場する前まではバッテリーなんて、メンテナンスフリーで10年くらい持ってた。
それまで、一回の走行でセルモーター一度だけ回せばよかったのに、信号のたびにセルモーター回してたらそりゃバッテリーも、劣化激しくなるわ。