この記事をまとめると
◼︎ボルボの電気自動車「C40リチャージ」に試乗
クルマをクレーンで吊って落下! 10万キロぶっ続けで走らせる! 昔の自動車メーカーのテストとPR手法がオモシロすぎる
◼︎SUVスタイルだが、スペックはスポーツカー並みだった
◼︎機能には一部改善の余地が見られるので、今後の進化に期待の1台と言えそうだ
見た目に反する怒涛のスペックに痺れる!
「オオーッ」……!! ボルボ初の100%電気自動車、C40リチャージの初乗り第一声だ。自動車メディア編集者として、カメラマンとしてライターとして、皆20数年。ちょっとやそっと速いとかパワフルな程度なら驚かないし、そのテのクルマには慣れているハズのオトコ3名。それがアクセルを強めにひと踏みした瞬間の奇声とも悲鳴ともとれる3名揃ったハーモニーにある種の笑いがおこる!!
このいかにもモーターらしいアクセル操作をした瞬間のダッシュ力は、すでにテスラ、ポルシェ・タイカン、アウディe-tronでも体感済みの、血の気の引く感覚。「0-100km/h加速4.7秒!!」はスポーツカーの世界。着座位置が高く見晴らしのいい室内の印象はまさにSUVだが、やはり回転と同時に最大トルクが伝わるモーター特性は、ゼロスタートの瞬間から一気に頭も身体も脳も臓物全体がシートバックに押さえ付けられ、後方に浮遊する異様な加速Gだ。そうした走りを好む者としてもなかなか慣れ親しめない凄さである。
全車EV化を目指すボルボ初のBEV=電気自動車がC40リチャージである。ボルボのなかではもっともコンパクトなXC40がベースになるが、これにボルボは「リチャージプラグインハイブリッド」と名乗るPHEVが先に上陸して、モーターとの融合を予め広めておいてから、いよいよフルBEVの投入である。C40リチャージはXC40のクーペ版SUVだと言えばサイズ感もわかるだろう。
XC40のフロントセクションはBピラーから後方とルーフが弧を描いて急角度で下降するクーペスタイル。全高を65mm低くしたC40リチャージはボルボとしても新しいキャラクターだ。
エンジン冷却のための大型ラジエターが必要ないため、BEVのフロントマスクは空力も考えてのっぺりしたものが多い。C40リチャージはボルボマークが入るグリルをカバーしたデザインで違和感は少ない。クーリングシステムへの走行風はバンパーの開口部からの導入で事足りる。
ドアの開閉はもちろん、メインスイッチのON~OFFはキーがそこにあるか、外に持ち出すか、だけで決まる。XC40比65mmも低い全高だが、個定式パノラマガラスルーフの開放感とインナーシェードがないことも関係して、ヘッドクリアランスの圧迫感はほとんどない。ルームミラー越しに後方視界を確認した際のハッチゲートの、ガラス面の天地の低さに驚かされる。
足をスッと延ばしてステアリングをチルトとテレスコピックにより引出して、まるでFR車のようなドラポジが決まるのは従来どおり。
当初からICE(エンジン)、RPHEV、BEV搭載を想定したプラットフォームとフロアデザインだけに、床下に324セル総電力量78kWhのリチウムイオンバッテリーを敷き詰めても、フロア高に変化はなく自然。500kgのバッテリー重量を最適に搭載することで、前後重量配分も理想的な50:50に。水冷で温度管理されるバッテリーは8年間、16万キロまで保証される。
モーターは前後トータルで408馬力/4350~1万3590rpmのパワーと660N・m/0~4350rpmのトルクを1速固定ギヤによりボルボ基準の最高速180km/h(環境性と安全性を考慮して)までカバーする。
ボルボらしさ全開! しかし乗ったら新たな課題も露呈
もちろん前後を駆動するAWDだが、235/45R20のフロントに対してリヤは255/40R20とサイズが異なる。加速時の荷重移動に対してかFR的駆動配分なのかは未確認。フル加速時にリヤが沈むスクォートが少ない気がするので駆動配分の変化も想像できる。
その有り余るモーターパフォーマンスが際立つが、R・N・Dの3段(Pはスイッチ)のシフターをDレンジに入れてブレーキペダルを緩めると、歩くよりもスローペースのクリープで動き出す。アクセルの微妙な動きをスムースかつ忠実に走りに変える繊細で緻密で操作に正確な駆動制御がじつは難しいのだが、そこをキッチリとまとめあげている。
通常モードは走行中にアクセルを離すと惰性のコースティングで、まさに無動力で市街地もサーッと転がる。高速走行も含めてコースティングによる走行はまさに省電力につながる。
一方、ワンペダルモードではアクセルを戻すと回生ブレーキが強力に利いて完全停止まで導き、電費に貢献する。ただしワンペダルは、アクセルの戻し加減で減速が変わるので、減速Gの調整はそのコツを掴む必要がある。
個人的には完全停止よりも弱い減速程度を好むので、走行中はコースティングと回生ブレーキを頻繁に切り替えて、流れにスムースに乗れるようドライブした。このワンペダルへの切り替えは、いちいちモニターで頁選びから始める点が煩わしい。ここはコースティングと回生ブレーキをスイッチひとつでカンタンに切り替えられる先陣たちの操作系を学んで欲しいものだ。
車重2160kg+3名乗車、回転と同時に最大トルクを発生するモーターならではの、そのロケットダッシュ力も理解した。
コーナーに向けてステア操作した際のクルマの動き、4輪が路面を捕えた重厚な操縦安定性とロールの少ないボディの動きは、フロアに敷き詰められた500kgのバッテリーによる低重心さがもたらすものにほかならない。ま、言えばこれも大容量BEVの標準的な印象である。
ステア操作した瞬間の切れ味鋭いハンドリング特性はXC40の……良く言えば持ち味だった。だがC40リチャージでは50:50の荷重バランスの関係か、パフォーマンスから特性を変えたのだろう、前後サイズ違いのタイヤ特性も手伝って直進から切り始め、応答のゲインをより滑らかに旋回につなげる。その自然さはボルボ最上級。
乗り味は角がない硬さ。2160kgを重厚と感じさせないフットワークと、EVによる無音の走行、車外騒音を室内に入り込ませない遮音性は見事で、まさに静かで快適、快速に走りまわるスポーツSUVであり、サルーンの要素も兼ね備えている。
さらに、現行ボルボで最良質、と断言できるのは回生を含むブレーキ性能である。それは加速した勢いを滑らかなタッチで操作したなりに減速を開始するものだ。ブレーキペダルを踏み込んで行くと、ブレーキパッドがディスクローターに擦れていく感触が伝わるかのようなダイレクトな操作性がすばらしい。踏力を抜いて行くときの減速Gのコントロール性は、エンジン車の優れた油圧ブレーキフィールそのものをBEVでありながら味わわせてくれる。良いブレーキの例え”真綿で締め上げる”と、まさにその感触のままをコントロールできるブレーキである。
さて、BEVの宿命は燃料たる電気の充電である。大容量BEVとして航続可能距離はWLTCモードで485km。ドライバーの操縦方法で驚くほど電費が変化するのがBEVだ。もちろんエンジン車でも同様だが、コースティングと回生を効率良く使い、クルマを進める技術があれば電費は延びる。C40リチャージの電費を、400km程度、と想定してバッテリー残量と駆け引きしながら走る。それがBEVの楽しくも難しい特性である。
増えている、とは言えまだまだ充電スポットの数と充電器の性能が、充電器待ち渋滞を含めた充電時間と充電量を左右する。ヒョイと給電できないことがエンジン車との違い。しかし、テスラを大満足で乗りまわす知り合いがいる。一方、航続距離はその半分程度のホンダeを「コレしかない」と誉める知人もいる。BEVはそのヒトの日常使いにマッチするか否か。
個人的には、充電器の手前で他人様が終了するのを待つ、ということができないので、PHEV、ボルボ流にはリチャージ・プラグインハイブリッドのXC40を愛車にしている。
なお、今回の試乗中になんとユーザーに届くC40リチャージの名称が変わった。正式名称はC40リチャージアルティメイト・ツインモーターと長い。さらにシングルモーターでFWDのC40リチャージプラス・シングルモーターがエントリーモデルとして上陸する。
FWDで231馬力/330Nmのシングルモーター仕様も走りのパフォーマンスで優れているであろうことは、XC40 RPHEV(FWD)の印象からも想像できる。
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みんなのコメント
マフラーはどんな形かと思ったけど、EVだから存在しないんですね。