ターボ付き2.0Lフラット4を導入
ポルシェほどスポーツカー作りを熟知した自動車メーカーは、存在しないかもしれない。70年も理想とする姿を追い求めてきている。なかでも2シーター・ロードスターのボクスターは、価格的にわれわれへ最も身近な存在だろう。
【画像】2.0Lフラット4でも堪能できる ポルシェ718ボクスター スパイダーとケイマンも 全143枚
現行型の718ボクスターは、2016年に発売されてから数年が経過した。ドライビング体験の1つのベンチマークでありながら、現実的な価格で我がものにできる中古車も増えてきている。
ただし、この982型で気に留めておきたいのがエンジンだ。3代目の981型までは水平対向6気筒エンジンのみの設定だったが、現行型の4代目では、ターボチャージャーで過給される水平対向4気筒エンジンが導入されている。
ベースグレードの718ボクスターに搭載されるのは、299psを発揮する2.0Lフラット4。718ボクスター Sでは、2.5Lへ排気量が増やされ350psを得ている。2018年には、365ps仕様のGTSが追加されている。いずれも2気筒少ないぶん、燃費には優れる。
ポルシェには自然吸気のフラット6が良いというドライバーへ応えるように、2019年には420psのスパイダーが、2020年には400psのGTS 4.0が登場。ドラマチックなポルシェの体験を、一層堪能できるようになった。
カーブが連続する区間で真価を発揮
パワーもさることながら、718ボクスターが真価を発揮するのはカーブが連続するチャレンジングな区間。操縦性は正確で、シャシーはバランスに長け、自信を持ってコーナーを攻め込んでいける。
ステアリング・フィールはダイレクトで、アクセルレスポンスは鋭敏。純粋主義者にはうれしい6速MTを選択することも可能で、充足感のあるドライビングへ浸れる。安楽さを求めるなら、7速デュアルクラッチAT、PDKを選ぶこともできる。
フラット4でも、動力性能は充分以上。ベースグレードの718ボクスターは、PDK仕様で0-100km/h加速を4.9秒でこなす。フラット6のGTS 4.0なら、4.0秒へ縮めるが。
装備も悪くない。ブルートゥースとアップルカープレイに対応した、7.0インチ・タッチモニターのインフォテインメント・システムが標準。パワーウインドウとエアコンはもちろん、ヘッドライトはキセノンで、18インチのアルミホイールを履く。
718ボクスター Sになると、アルミホイールは19インチへ拡大。GTS 4.0では20インチへ大きくなり、アダプティブダンパーとリミテッドスリップ・デフ、スポーツエグゾースト、スポーツクロノ・パッケージが与えられる。見た目もわずかに差別化される。
英国編集部が注目したいのが、2.0Lの718ボクスター Tだ。ベースグレードと一見変わらないが、車高の落ちるサスペンションが組まれ、トルクベクタリング機能付きのリミテッドスリップ・デフ、スポーツクロノ・パッケージが組まれる。
実用性にも気が配られたパッケージング
718ボクスターのインテリアは上質で、アルカンターラも随所に用いられている。ドライビングポジションに優れ、長時間でも快適に過ごせる。スイッチ類などの製造品質は高く、ボタンを押した質感にもこだわられている。
コンパクトなサイズながら、パッケージングは実用性にも気が配られている。大人2名がゆったり座れる車内空間だけでなく、ボディの前後には悪くない大きさの荷室が設けられている。
英国市場を観察すると、2016年式の718ボクスターで3万5000ポンド(約563万円)前後が相場。Sは約4万3000ポンド(約692万円)、GTS 4.0では約5万ポンド(約805万円)へ上昇する。お手頃ではないが、内容を考えれば高いとはいえないだろう。
知っておくべきこと
718ボクスターの燃費は、2.0Lフラット4のWLTP値で11.5km/L。GTS 4.0では9.9km/Lに落ちる。
AUTOCARの姉妹メディアの調査では、718ボクスターの信頼性は振るわない。クーペやコンバーチブルなどを含めた同クラスのカテゴリーでは、8台中8位へ沈んだ。ポルシェというメーカー自体は、スポーツカーを販売する30社中25位となっている。
これは、基本的にエンジンは信頼性が高いものの、初期のデュアルクラッチATに不具合が多かったことが原因の1つ。塗装の品質に不満を抱くオーナーもいるようだ。
トリムグレードとスペック
718ボクスター T:もちろんフラット6は素晴らしいが、お手頃に探せる2.0Lフラット4の魅力は捨てがたい。特に「T」は充分な動力性能にアップグレードされたシャシーが組み合わされ、甘美な体験を味わわせてくれる。
購入時に気をつけたいポイント
リコール
英国では、エアバッグ・コントロールユニットにリコールが出されている。ソフトウエアの更新と部品交換が必要になり、ディーラーで対応済みか確認したい。
エンジンの高圧燃料パイプに、締め付けが甘い部分が含まれる可能性も報告されている。内部のコンロッドに不具合がある可能性もあり、これはエンジンの交換が必要になる。いずれもリコール対応で、英国では無償修理が可能だ。
これまでの乗られ方
高性能なスポーツカーだから、オーナーによっては少々アグレッシブに運転した過去もあるだろう。これまでの整備履歴や事故歴、ホイールのガリ傷などを確かめたい。
ソフトトップ
折りたたみ式ソフトトップの状態と動作具合を確かめる。修理にはかなりの費用が必要になる。
英国編集部の推しチョイス
ベスト:718ボクスター
ベースの718ボクスターでも、充分にポルシェの走りを堪能できる。SやGTSほど新車時の価格が高くないため、そのぶん魅力的なオプションを備える例も見つかる。
ワイルドカード:718スパイダー
究極の718ボクスターといえるのが、スパイダー。プレミア価格がついているが、珠玉のフラット6エンジンを搭載し、サーキット走行へ焦点が向けられている。スリル満点のミドシップ・ポルシェだ。
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