今年もやってきた梅雨の季節。この梅雨時から夏にかけては雨が多いだけに、視界も悪く、路面が滑りやすくなって危険度は急上昇! ドライバーにとってはいつも以上にドライブ中のヒヤリ・ハット体験が増える時期でもある。そこで、ここではそんなヒヤリ・ハットに遭わないための梅雨時ドライブの注意点やその対策を紹介していこう!
※本記事における数値等のデータは2018年6月時点のものです。
文:ベストカー編集部
写真:shutterstock.com、ベストカー編集部
初出:ベストカー2018年7月10日号
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ヒヤリ・ハット その(1)
雨の日の事故は、晴れの日の4倍!!
まず知っておきたいのは、この梅雨時は交通事故が多い時期であるということ。1年で最も交通事故が多い月は11~12月の年の瀬なのだが、次に多いのが3月や10月の行楽シーズン、そして6~7月の梅雨時。6~7月は大型連休などがないわりに事故件数が多いといわれている。
6~7月はなぜ事故が多いのか? 考えられるのはやはり“雨”による要因だ。
首都高速道路の調査によると、1時間あたりの事故件数は雨天時が4.52(件/時間)で、晴天時は1.08(件/時間)。雨天時のほうが晴天時よりも約4倍も高い割合で交通事故が起きているわけだ。さらに雨天時の夜は視界がよりいっそう悪くなるため、深夜になると晴天時の約7倍も事故が発生するというから、さらなる注意が必要だ。
なお、雨天時に多い事故パターンは下記のような例が挙げられる。
ヒヤリ・ハット その(2)
雨の日はココに注意! そしてその対策は?
雨でよく見えません!
視界悪化に注意!!
空が曇天となる梅雨時は日中も薄暗い日が続くので視認性が悪くなる。さらに雨が降ると、フロントガラスやサイドミラーに雨粒がたたきつけられ視界が悪化。周囲の様子が把握しにくくなる。
しかも、雨量が多くなって水たまりができると、並走する大型トラックや対抗車からの水はねによって、ワイパーを使っていてもまったく前方が見えなくなるような場面に出くわすことも。また、夜はいっそう視認性が悪くなるうえに、対向車と自車のヘッドライトが反射し合って、前方を歩く歩行者などが極度に見えにくくなる「グレア現象」なども起こる。ハッと気づいた時には目の前を歩行者が横切ろうとしているといったことがあるので、注意が必要だ。
●視界悪化への対策は?
梅雨時の視界悪化は厄介だ。雨あしが強くなるとワイパーの払拭性能が追いつかなくなり視界確保が難しくなる。安全な運転環境を保つ最大の秘訣は「速度控えめ、車間距離長め」だ。
速度を控えることで、狭まった視界のなかでも周囲を把握しやすくなり、他車の動きに余裕をもって対処できる。また、控えめの速度に長めの車間距離が加わると、前走車の水はねによる悪影響も受けにくく視界も確保しやすい。
水はねは対向車からも受けるが、対向車とすれ違う際に可能なかぎり自分は左に避けるといい。路肩に寄れない場合は速度を落としてすれ違うタイミングをズラすのも効果的。避けたりズラしたりした分だけ放物線を描く対向車のしぶきが手前で落下するため、自分のクルマのフロントやサイドウィンドウへの直撃をかわすことができる。
雨天の夜間は最悪のコンディション。対向車のヘッドライトに眩惑される危険な「グレア現象」を雨粒で増大させないためにも、シーズン前の今、ウィンドウの油膜取りを徹底したい。
雨の降りが強いとワイパーを使っていても、視界が非常に悪くなる。スピードを控えめにして車間距離も確保したい
ツルッと滑ると大事故にも!
路面悪化にご用心!!
雨のなかの事故で最も多いのは、スリップによる事故だ。速度が高いままカーブに進入して起こったスリップや、追い越し時に急加速して起こった直線でのスリップ。それに、轍などの水たまりを走った時にハイドロプレーニング現象が起こり、ブレーキやハンドルが効かないままにスリップしてしまうケースなど。さまざまなシチュエーションで発生している。
そのほか、雨で濡れたマンホールの蓋や道路補修時の鉄板を通過した時に滑ってヒヤッとしたことがあるという人もいるのでは。雨は路面状況が悪化するので注意すべきシーンがとても多い。
●路面悪化への対策は?
雨天の時は路面の摩擦係数が減少してスリップしやすく、車体の安定性が損なわれやすくなる。よって、「走る、曲がる、止まる」に対して“急”がつかないよう自車周囲の交通環境を先読みした“予測運転”が大切だ。
乾燥路面での摩擦係数(μ)を1.0とした場合、雨天時のそれは排水性能に優れた高機能舗装路で0.6~0.5程度、一般的なアスファルト密粒度舗装路では0.5~0.4と、およそ半分程度になることから、雨天時は晴天時の2倍滑りやすい。冒頭で少し触れたが、雨天時の事故件数は晴天時の4倍多くなり、施設接触事故も12倍にまで膨れ上がる(首都高速)。
また、表面の凹凸がすり減ったマンホールの蓋(凹凸のしっかり残っている蓋のμは0.4~0.5)や、道路工事で多用されている鉄板や橋のジョイント部分も、雨天時は氷の上と同じくらい滑りやすい(μは0.2~0.1)。よって、その上ではステアリングを切らず、直線で通過しよう。タイヤのメンテナンスも必須。残り溝3mmとなったタイヤの制動距離は、新品の1.7倍にまで延びる(JAFユーザーテスト)。
雨だと急な飛び出しも増える!
人の動きに気をつけて!!
さらに、雨の日は歩行者や自転車などの人の動きにも気をつけたい。
歩行者は傘をさして歩くため視界が悪化し、周囲だけでなく前方への注意もおろそかになるのだ。周囲がよく見えないうえ、雨音でクルマの音も聞こえにくいために、子どもは急に道路へ飛び出したり、道路を横切るケースがある。さらに、傘をさして自転車を運転する大人も増えたりと、雨の日はよりいっそうの注意が必要だ。
●人の動きへの対策は?
雨天時は歩行者の視界も悪くなる。傘をさしている場合は後方から接近する車両や自転車などに気がつきにくく接触事故も増える傾向にある。
ここでも予測運転が重要。見通しの悪い丁字路はもとより、ガードレールのある幹線道路であっても、その切れ目から傘をさした歩行者が横断する可能性を考慮し、いつでも減速/回避ができるよう運転操作に余裕を持ちたい。
自転車にも注意。道交法では「片手運転の禁止」と明文化(第70、71条)されており、明確に「傘差し運転禁止」の条例を制定している都道府県もある。傘をさした片手運転自転車は不安定になりがちなので側方通過の際は特に注意して走行したい。
雨が多いと落石なども発生!
そのほかにも注意が必要!!
雨の多い時期はそのほか、山道だと走行中、落石によって道路に転がった大きな石に突然遭遇するなんてことも起こりがちだ!
●そのほか注意点と対策は?
山間部では落石の危険性も高まる。長雨の影響で地盤が緩むことが原因。避けるには迂回路を選択するか、迂回できない場合は自治体が発表する災害情報(SNSなど含む)を走行前にチェックしたい。
また、大きな水たまりを通過する際にも危険が伴う。雨量が多くなると普段とは違う場所にも水たまりが発生するが、思いのほか水深が深かったり、大きな凹みや落下物が水没していたりする可能性もある。やむを得ず大きな水たまりに進入する場合は速度を充分に落とし、できるかぎりその端を通過する。
長雨ではぬかるみも発生しやすい。晴天時は砂利道であっても雨により下地の土や泥が柔らかくなり、タイヤがグリップ力を失ってスタックする危険性もある。郊外のあぜ道で右左折する際は、道路の端から少し距離を開けて走行するといい。
ヒヤリ・ハット その(3)
梅雨時から夏はゲリラ豪雨に注意!
梅雨が終わると、今度はゲリラ豪雨の季節がやってくる。例年の傾向から7~9月がシーズンで、8月にピークを迎えるといわれるゲリラ豪雨。
もしクルマに乗っていてゲリラ豪雨に遭ってしまったら、どうするべきかを指南する。
●こんな場所は迂回するのが吉!
鉄道や幹線道路の下をくぐる道路、いわゆるアンダーパスは、大雨が降ると降水量に排水量が追いつかず、道路に大きな水たまりができてしまう。そして毎年、クルマが知らずに進入し水没するというケースが頻発する。この水たまりは、過去のケースでは約1.2mという水深にまで達した場所もあったそうだ。
JAFのテストで、水深60cmではSUVであっても30km/hで進入するとエンジンが止まってしまい、ドアを開けることも困難になる。特に最近多いミニバンでは、スライドドアが人力では開閉不可能という状況に陥ってしまう。
こんなことにならないためにも、ゲリラ豪雨に遭ったら、アンダーパスのある道は迂回することを強くオススメする。クルマだけでなく、自らの命も危険にさらすことになるのでご注意を。
大雨になるとアンダーパスはこんなに大きな水たまりになることも!
●自動ブレーキも前が見えていない
気象庁によると、1時間の雨量が20mm以上~30mm未満で、ワイパーを速くしても見づらくなり、50mm以上ではクルマの運転は危険だとしている。しかし、ゲリラ豪雨は1時間に100mmを超えるケースもあり、まともに視界を確保できないことが多い。
そんな状況では、ドライバーは視界を失いノロノロ運転せざるを得ないが、歩行者も必死に雨に濡れまいと傘で頭を覆うようにして歩く傾向がある。そんな格好では視界は悪く、前から歩いてくる人ですら見えていないことも多い。
そうなると信号機のない十字路などで、気づかずクルマと接触するケースもある。近年のクルマには衝突被害軽減ブレーキが搭載され、性能の高いものは通常時50km/hまで歩行者を検知し停止できるが、悪天候時はそうはいかない。20km/h以下であっても、「ドライバーが見えていない=自動ブレーキのカメラも見えていない」のだ。
このことは、国土交通省が製作したYouTube動画『衝突被害軽減ブレーキは万能ではありません!』で実証されている。自動ブレーキが搭載されているから大丈夫、ということはないのだ(記事の下部にリンクを掲載)。
大雨の際は、濡れたくないのでクルマで出かけたいと考えるが、視界の確保は難しい状況では「乗らない勇気」も必要になってくる。
特殊な状況を再現できる実験施設のワンシーン。雨量が増えると、歩行者が肉眼で認識困難になる
●冠水路に注意! 落雷時は車内に
前述のアンダーパスほどではないが、排水が追いつかなくなると、いたる所で道路が冠水することになる。そうなると心配なのが、マンホールの浮き上がりだ。
近年は対策型のマンホールも導入されているが、すべてが変わっている訳ではない。万が一、対策型ではないマンホールの場合、冠水時に浮き上がって外れてしまうことがある。そんなポッカリ空いた穴にタイヤがはまって身動きが取れなくなったり、動けなくなった原因を探ろうと降車して、ドライバーが排水溝に吸い込まれる……などという事態も起きる可能性がある。大雨で水が逆流して冠水するような場合は、冠水したエリアには立ち入らないほうが身のためだ。
また、たいていの場合豪雨とセットでやってくる雷だが、クルマはボディに落雷しても、車体&タイヤを伝わり地面に逃げるので、車内の人間に伝わることがない。車外よりも安全に過ごすことが可能だ。
最近は、リアルタイムで見ることができる気象情報もあるので危険回避に活用しよう。
ヒヤリ・ハット その(4)
梅雨時に使いたいお役立ちグッズ
ここでは、ベストカー編集部がオススメする梅雨に役立つ最新アイテムを紹介。ガラスの撥水コート剤や、愛車をサビから守ってくれるアイテムなど4点をピックアップしたので、ぜひチェックしてもらいたい。
●ツーフィット ラストストッパー
水分の付着と乾燥が繰り返される梅雨の時期は、クルマのボディにサビが発生しやすい。この「ラストストッパー」は電子の力で、そんなクルマの寿命を縮めるサビから、ボディを守ってくれる強い味方だ。車両サイズ別に4タイプあり、価格1万7000~3万円(税抜)。12V用だけでなく24V用もある。
●ソフト99 ガラコ ブレイヴ
目に見えない凹凸面に撥水成分がしっかり結合。乾燥待ち時間不要のスピード施工で、気持ちよく雨を弾く。フロントガラスはもちろん、ヘッドライトやサイドバイザーなどの透明樹脂パーツ、バイクのヘルメットシールドなどにも使用可能。実勢価格1480円(税込)
●呉工業 ストーナー・カーケアクリーン&リペル
全米ナンバー1ガラスクリーナーに耐久性の優れた撥水効果をプラス。油膜や頑固な汚れをすばやく取り除き、さらに強力な撥水コートを形成するガラス用クリーナー&撥水剤。拭きスジやギラつきのないスッキリ施工が可能で、水滴も飛ぶように流れる。面倒くさがりな人にもバッチリだ。実勢価格1300円(税込)。
●イチネンケミカルズ クリンビューEX
外窓、内窓どちらにも使用できるガラスクリーナー。ガラスに付着した油膜などによるギラつきを解消し、雨水で視界がぼやけたり、対向車のライトが乱反射することを防いでくれる。くもり止め効果もあり、内窓に使用すればスッキリとした視界でドライブができる。実勢価格320円(税込)
【番外コラム】ハイドロプレーニング現象が起こる原因とは?
高速で回転するタイヤが路面の上にたまった雨水の水圧によって浮上してしまうために発生する。摩擦係数が一気に低くなるのでステアリング操作やブレーキによる制動が効かなくなってしまう。タイヤの溝が充分残っていればタイヤの排水性能によってハイドロ現象を抑えられるが、残り溝が3mmを下回る頃には排水性が悪化してハイドロ現象が強まる。
残り溝が充分でも速度が高ければハイドロ現象は避けられない。60km/hを超えると徐々にタイヤは水圧で浮上しはじめ100km/hでは新品タイヤでもハイドロ状態に陥る。
スタッドレスタイヤはトレッド面の凹凸が多くサイプも張り巡らされ排水性が高そうだが、氷雪面でのグリップ力を重視した設計であるため、ハイドロ現象はサマータイヤよりも発生しやすい。
※国土交通省が製作したYouTube動画『衝突被害軽減ブレーキは万能ではありません!』はこちらから
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