ブラバス ロケットGTS(Brabus Rocket GTS): このシューティングブレークがかつてロードスターであったとは信じがたい。ブラバスがメルセデスAMG SLをベースに、1,000馬力とフルカーボンボディを備えた2ドアクーペ、ロケットGTSを製作した。
固定ルーフと大きなトランクを切望する「メルセデスAMG SL」ファンがいた。世界的に有名なチューナー、ブラバスは、その人々の願いを聞き入れ、最高のコーチビルディングの伝統に則って「ロケットGTS」を設計した。1,000馬力の素晴らしいシューティングブレークで、価格はほぼ100万ユーロ(約1億6,500万円)だ!
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2ドアのステーションワゴンクーペは新しい発明ではない。最も有名なのは、間違いなく「BMW Z3クーペ」だろう。90年代の終わりに大きな話題を呼び、多くの議論の的となったが、今では人気のモダンクラシックへと成熟した。BMW以外にも、他のメーカーもこの変わったボディ形状に挑戦した。2011年にはフェラーリも2ドアのシューティングブレーク「FF」を発売し、その後継モデル「GTC4ルッソ」も登場した。
メルセデスには「CLSシューティングブレーク」という、末尾に「シューティングブレーク」を冠した気品あるステーションワゴンがあったが、コンセプトとしては古典的なステーションワゴンだ。メルセデスには2ドアのステーションワゴンクーペは存在しなかった。しかし、今ここに誕生したのだ!
ブラバスは不可能を可能にする: 1,000馬力でフルカーボンボディのシューティングブレークは、これまで存在したことがない。ブラバスは、毎年恒例の「シグネチャーナイト」で「ロケットGTS」を発表した。この2+2シーターは、スーパーリッチな車好きのための素晴らしいステーションワゴンクーペだ。
メルセデスAMG SLをベースにしたシューティングブレークボトロップのチューニングエキスパートチームは、「メルセデスAMG SL63 S Eパフォーマンス」をベースに、フロント部分だけ残したシューティングブレークを開発した。ルーフラインは、ウィンドウピラーから完全に再設計されている。メルセデスから直接出てきたかのような美しい形状の、特徴的なステーションワゴン型のリヤで終わるルーフライン。「ロケットGTS」は、ルーフスポイラーと、標準的な「SL」のリヤライトの上にボディに組み込まれたダックテールで装飾されている。
この観点から見ると、ブレーキランプだけがブラバス ロケットGTSのベースとなったモデルを示唆している。ボディ全体がビジブルカーボンであり、よく見ると、ルーフ後部など一部のパーツのみがほとんど目立たない黒色の塗装に切り替わっていることに気づく。ボディ全体はCAD/CFDの手法で開発され、風洞実験でテストされた。その際、「ロケットGTS」のスタンスも広げられた。シューティングブレークのリヤアクスルは1.99mとなり、フロントフェンダーも拡幅された。これにより、エアロブレード付きの21インチ/22インチのブラバス製モノブロックPプラチナホイールを装着するスペースが生まれた。ケブラー製ホイールアーチライニングは素晴らしいディテールだ。4本のチタン製テールパイプをカーボンで覆い、照明を施したエキゾーストシステムは、やや、やり過ぎの感があるが、これは意見の分かれるところだろう。
ラゲッジスペースシューティングブレークにふさわしく、「ロケットGTS」にも実用的なトランクが備わっている。ブラバス社は正確な容量を公表していないが、電動開閉式フラップの後ろには、もちろん、スレートグレーのレザーに貝殻形のひし形デザインを施したブラバス社の最高傑作のインテリアに完璧にマッチする、特注の大型バッグ4個を収納するスペースが在る。
収納力抜群: ブラバスでは、スレートグレーのレザー製バッグも用意している。ダッシュボード、ドアパネル、天井にはアルカンターラが追加されている。ブラバスらしく、仕上がりや外観は非常に高品質だ。細かい部分では、「ロケットGTS」のロゴ入りの黒いシートベルトが目を引く。マイナスポイントは、ナビゲーション画面に「SL」のロードスターのシルエットが残っていることだ。確かに膨大なプログラミングが必要になるとしても、「ロケットGTS」のシルエットが、この素晴らしいインテリアの印象を完璧なものにするだろう。念のため言っておくが、2+2シートは嘘ではない。ただし、身長1.83メートルの私には(あまりにも)窮屈だ。そもそも足元のスペースが不足している。
1000馬力、1620Nmパワーに不足はない。ベース車両でも、816馬力、1420Nmのパワーを誇り、メルセデスがこれまでに製造した量産モデルの中でも最もパワフルな部類に入る。しかし、ブラバスはさらなる改良を施さなければブラバスではない。長いカーボン製ボンネットの下を見ると、まず目に飛び込んでくるのは赤いカーボン製エンジンカバーだ。その下にあるV8ツインターボエンジンは、ボトロップで徹底的に改良され、4.5リッター(厳密に言えば、4,407ccなので4.4リッター)に拡大され、新しいターボチャージャーが装備されている。その結果、796馬力と12,50Nm(トルクは電子制御により1,050Nmに制限)を達成した。さらに、204馬力を追加する電動モーターが搭載されている。合計すると、「ロケットGTS」は1,000馬力と1820Nm(電子制御により1,620Nmに制限)を達成している。
インテリアには高品質な素材が使用されている。残念なのは、タッチスクリーン上のSLアニメーションのためである。プログラマーは、その点について再考する必要がある。その結果、素晴らしい加速性能が実現した。0-100km/h加速は2.6秒、200km/h到達は9.5秒、静止状態からの300km/h到達は23.6秒である。ブラバスが追加しているのは最高速度だけだ。ベース車両と同様に、「ロケットGTS」も電動モーターの関係で、電子制御により317km/hに制限されている。
ベース価格は約95万ユーロ(約1億5,700万円)これまでとは異なり、ブラバスはロケットGTSの生産台数を限定するつもりはない。とはいえ、このカーボンファイバー製シューティングブレークが絶対的な希少性を保ち続けることは、その価格を見れば明らかである。基本仕様で944,860ユーロ(約1億5,590万円)という信じられないほどの価格が付けられるハイパーグランツーリスモシューティングブレークは、ベース車両の4倍以上の価格である。独自性には代償が伴う。
結論:「ロケットGTS」で、ブラバスは「もっと上を目指す余地は常にある」ということを改めて証明した。フルカーボンボディの1,000馬力シューティングブレークは、まだ誰も見たことがない。価格は高いが、その努力はさらに大きい。このような素晴らしいプロジェクトがまだ存在していることを嬉しく思う。
Text: Jan GötzePhoto: Jan Götze / AUTO BILD
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