いつものように落ち着いた展開、目標以上の結果に
MotoGP第17戦、Moto2クラスに参戦する小椋藍選手(MTヘルメット – MSI)は、2024年シーズンのチャンピオンがかかる最初のレースとしてオーストラリアGPを迎えていました。前戦日本GPを終えて、ランキング2番手のセルジオ・ガルシア選手(MTヘルメット – MSI)とは60ポイント差。小椋選手のチャンピオン獲得の条件は、オーストラリアGPを終えて、ランキング2番手以下に76ポイント以上の差がついていることです。
ただ、小椋選手はこのレースウイークで「できる結果を持ち帰る」ことを主な目標としていました。76ポイント以上の差を築くには、小椋選手自身が3位以上を獲得することが必須条件であり、同時にライバルたちの順位(獲得ポイント数)次第でもありました。
また、オーストラリアGPの会場であるフィリップ・アイランド・サーキットを得意とはしていない、ということもあったのでしょう。コースレイアウトというよりも、フィリップアイランドの寒くて風の強い気候が嫌いなのだそうです。
そして今年のフィリップアイランドも、少なくとも土曜日までは、好天に恵まれませんでした。重たい雲が垂れ込めて激しい雨が降ったかと思えば、日が差し、また雨が降る。天候とともに気温も変わる、ジェットコースターのような天候だったのです。
Moto2クラスのセッションで、ドライコンディションで走ることができたのは、金曜日午後のプラクティス1の後半20分程度(しかしそれも、完全なドライコンディションというわけではありませんでした)、そして予選でした。
小椋選手は土曜日午前中、ウエットコンディションで行なわれたプラクティス2でハイサイドを起こし、背中から落下する転倒を喫しましたが、幸いにも怪我はありませんでした。
予選Q2では9番手を獲得。タイム、ポジションともに良かったということですが、「内容としてはそんなに良くなかったと思います。ドライで走れたのは今週初めて。(他のライダーを)追いかけて出したタイムだし、100パーセント、自信を持って走っていたわけじゃなかった」と語っていました。チャンピオン獲得が目前に迫ろうという時でも、自分の走りの追及を続ける、小椋選手らしいコメントでした。
また、小椋選手が9番手スタートを「良かった」と語っていたのには、決勝レースの目標が背景にあったのでしょう。オーストラリアGPの目標は、「トップ10に入ること」だったからです。
ドライコンディションとなった決勝レースでは、4、5番手争いを展開し、最終ラップにディオゴ・モレイラ選手(イタルトランス・レーシング・チーム)とのバトルを制して、4位でゴールしました。レース後、ピットに戻った小椋選手は、クルーと会話しながら笑顔を見せていました。「なすべき仕事をした」4位だったのです。
レース後に話を聞くと、やはり「良かったです、すごく」ということでした。「目標はトップ10だったので、自分としては、このサーキットでの4位は上出来過ぎます」
「トップ3(フェルミン・アルデグエル、アロン・カネト、アロンソ・ロペス)が速かったので、昨日の段階で、この3人にはまずついていけないだろうな、と思っていましたから。ペース的には想定内でした」
「1回ミスをして後ろに下がっちゃった。それがなければ、もう少し前についていけたかもしれないけど」と小椋選手。そのミスというのは、3周目4コーナーでのもので、ラインを外して6番手に後退したのです。
「(前を走っていたマヌエル・)ゴンザレスが左側に寄っていたので、ロングラップ(・ペナルティ)に入るかなと思ったんです。そうしたら入らなかった。計算ミスですね。このままいったらゴンザレスに当たりそうになっちゃうな、と思って、ちょっとブレーキをかけたらリアが浮いてシェイキングしてしまい、真っ直ぐいってしまったんです」
オーストラリアGPのレースウイーク、小椋選手はどこかリラックスしているように見えました。いつもと変わらない落ち着いた小椋選手のレースでしたし、レース後に話を聞いていても、その印象は変わりませんでした。
オーストラリアGPの結果、小椋選手はランキング2番手に浮上したアロン・カネト選手(ファンティック・レーシング)に対し、65ポイント差を築いています。次戦タイGPで小椋選手が5位以上を獲得すれば、他のライダーの結果にかかわらず、チャンピオンが決まります。
「次戦(タイGP)では、かなりチャンスがあると思います」
目前に迫ったタイトルに、小椋選手はそう言いました。やっぱりその様子は、とても自然でした。
次戦、第18戦タイGPは、10月25日から27日にかけて、タイのチャン・インターナショナル・サーキットで行なわれます。2009年の青山博一(現ホンダ・チームアジア監督)以来となる、日本人チャンピオン誕生の瞬間が迫ります。
■Moto2クラスとは……
Moto2クラスは、トライアンフ「ストリートトリプルRS」の排気量765ccの3気筒エンジンをベースに開発されたオフィシャルエンジンと、シャシーコンストラクターが製作したオリジナルシャシーを組み合わせたマシンによって争われる。タイヤは2024年よりピレリのワンメイクとなった。クラスとしてはMotoGPクラスとMoto3クラスの中間に位置する。
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