遂にSクラスのSUVでEVが登場
既に我々は、メルセデス・ベンツのEVで最高グレードのEQSに試乗し、そのコンセプトと出来栄えの素晴らしさに感動したところだ。
【画像】メルセデス・ベンツEQS 450 4マティックSUV 細部までみる【ディテール】 全33枚
現代の潮流からすれば、EQの次は、SUV仕様が遠からず登場するであろうことが予想されたが、そのSUVは、この5月にEQS 450 4マティックSUV/580 4マティックSUVスポーツとして2グレードが発表された。
編集部では早速、2種類のうち、450 4マティックSUVを借り出し、約1週間に渡って試乗を行ってみた。
450 4マティックSUVの外観は極めて先進的なEQSと異なり、比較的オーソドックスなデザインに見える。
しかし、よく観察すると、フロントグリルからヘッドライト、そして、ボンネットへのスムーズな面構成はEQSと同様の処理であり、7人の居住性を確保するため、最大限ホイールベースを拡大できたのも、EVならではの特徴と言える。
ボディサイズは5135mm(全長)×2035mm(全幅)×1725mm(全高)で、セダンのEQSに比べて、全長が僅かに短く、逆に全幅は110mm広い。実は、全幅の110mmの拡大は心理的に大きく影響し、かなり気を遣うドライビングとなった。ホイールベースはセダンと同様の3210mmである。
パワートレインは、前後2基のモーターによる4輪駆動で、360ps(265kW)の最大出力、800N・mの最大トルクを発生する。床下に格納されたリチウムイオン・バッテリーは107.8kWhの大容量で、1充電当たりの走行距離は593kmと公表されている。この数値が実際の使用でどう変動するかも興味があった。
現実にクルマを目の前にすると
さて、現実にクルマを目の前にすると、やはり、その大きさには圧倒される。特に国内の一般道では車線がそれほど広くないので、2m以上の車幅の感覚に慣れるまでは相当なストレスとなる。
SUVの場合は車高が高く、従って乗り降りも大変だが、このEQSの場合、固定式のステップが装着されていて便利だ、と思ったが、実はこれが曲者で、ステップの幅が充分でないので足が半分しか乗らず、注意しないと滑ったりして、かなり危険に思えた。収納式にしてしっかりと幅を確保していれば便利だが、中途半端で、むしろ無い方が良いと思えた。固定式では雪なども積もってしまうだろうし、突起物として擦りそうなのもいただけない。これを設計した人はどのような昇降を想定していたのか聞いてみたいところである。
気を取り直してドライバーズシートに着座する。ダッシュボードは巨大なスクリーンとなっていてナビも見やすく、ここで殆どの操作は終了する。
かなり太めのステアリングは、切り初めがやや操舵力が必要だがその後はスムーズで、4輪操舵も加わって小気味よい走りが可能だ。総重量は2.9tとヘビー級だが、2基のモーターによるパワーは素晴らしく、一気に加速する。
このEQS SUVではモーターの回転と共に、エンジン音に似たサウンドを奏でるのに驚いた。これまでに聞いた人工のサウンドの中で最も耳に心地よいと思う。
サスペンションは、フロントが4リンク、リアがマルチリンク式で、連続可変ダンピングとエアサスを組み合わせたエアマティックにより、自動車高調整が可能である。コンフォート・モードでは、たっぷりとしたストロークでソフトに走るが、スポーツ・モードをセレクトすると激変し、引き締まった走りのサスに変貌するのが面白い。峠道では、それまでが嘘のように、メリハリの付いた走行が可能であった。
走行可能距離 私の走りでは453km
今回の試乗で走行した距離は362kmで、この間に2回充電を行った。クルマを受け取った際の走行可能距離は603kmであったので、一度の充電で良いはずだが、川崎から都内で用事を済ませて甲府に向かった時には、152kmを走って、走行可能距離残が352km、62%まで減少していたので、甲府で念のため、8kWの充電器で満充電にした。と言ってもメルセデスの場合は6kW(実際には6.5kW流れていた)しか流れないので、7時間10分掛かっている。
2回目は210km走行した後で、走行可能距離残340km、58%の時点で、やはり、8kWの充電器で充電を行った。この時は8時間弱掛かっている。トータルの電費は86.24kW/362km=4.20kW/kmとなった。
とすると、あくまでも推定だが、私の走りでは453kmが現実的な走行可能距離となる。カタログデータよりは少ないが、これだけ走ることが可能なら問題はないだろう。
世の中の趨勢としては、普通充電器でも8kWがあるし、急速充電でも150kWが増えてきている。メルセデスのEVでも6kW以上への対応をお願いしたい。メルセデスのEVオーナーは、107.8kWものバッテリーに対し、6kWの普通受電器しか用意していないのは不満ではないのだろうか?
次のステップはインフラ整備
価格は車両本体が1542万円である。試乗車は、これにオプションとして、AMGラインパッケージが44万円、ショーファーパッケージが85万8000円、デジタルインテリアパッケージが121万円、ブラウンマグノリアインテリアトリムが11万円、ダイヤモンドホワイト塗装が18万7000円で、〆て280万5000円となり、総合計は18322万5000円となっている。
今はどこのメーカーもオプションで稼ぐのは当たり前となっているが、この数値はついため息が出てしまう。
ホイールを思い切り四隅に置いたため、7人が楽に乗れるようになったインテリアは、このクルマで最も価値のあるところだ。3世代などの家族全員で移動が可能というのは、大きなメリットだろう。
これで、メルセデスの上級クラスのEVは、EQE、EQS、EQS SUVと一通りのラインナップが揃った。次のステップは、安心して使用できるだけのインフラ整備にかかってくるのは間違いない。
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みんなのコメント
カッコも悪いし白だとモデルXのようなデブ感があつ。
大型SUVはタフな使い方や頼れる存在が当たり前と言う認識でいると、裏切られてしまう。
チョイ乗りにこのサイズは勝手が悪いし、ベンツ好きは待ちですね。実物もカッコいいとは言えないのでどの程度見慣れるか?