創業120周年を迎えたハーレーダビッドソンは人気モデルを刷新してきた。デビュー10年の節目となるブレイクアウトは伝統の空冷45度Vツインを強化し、1923ccもの排気量を獲得。豪快な直線番長の加速力がさらに凶暴となった。
125ccなのに50ccと同じ原付扱いに?! 『5.4馬力以下』案が浮上!【令和5年度 バイクの課題はどうなるPART(2)】……〈多事走論〉from Nom
【テスター:青木タカオ】ヤングマシンの姉妹誌ウィズハーレーで編集長を務めるなど、アメリカンクルーザーに造詣が深い。ヴィンテージから高年式までの歴代ハーレー、ジャンルを問わず試乗経験が豊富で、本場米国のカスタムカルチャーにも精通する。
ハーレーダビッドソン ブレイクアウト117 概要
―― 【HARLEY-DAVIDSON Breakout117 】■全長2370 全幅950全高1085 軸距1695 シート高665(各mm) 車重310kg ■空冷4ストV型2気筒OHV4バルブ 1923cc 102ps/4750rpm 17.03kg-m/3500rpm 変速機6段 燃料タンク容量18.9L ■タイヤサイズF=130/60B21 R=240/40R18 ●色:黒 黒デニム 橙 銀 ●価格:326万4800円~
―― 【ライディングポジション】ハンドル幅は広すぎず、ドラッグバーをライダー寄りに引き寄せたもの。フォワードコントロールながらフットペグが遠すぎるなんてことはない。足が伸び切ってしまうことなく、ヒザが曲がってリラックスした乗車姿勢となる。シート高は665mmと低く、両足カカトまでべったりと地面に届く。[身長175cm/体重65kg]
深く腰掛けるだけで強烈な加速へ準備完了!
ファインダーを覗くフォトグラファーが「絵になる!」と思わず唸る。フロントエンドが高い位置からはじまり、ふくよかなタンクやメカメカしいビッグツインでボリュームを感じさせると、そのままリヤへ真っ直ぐにラインが伸びていく。グラマラスでありつつ、無駄のない研ぎ澄まされたシルエット。ストリートドラッガーと称されるスタイルは、乗り手が何も意識することなく、どっしりとリヤへ荷重がかかり、240mmものワイドタイヤが強力な駆動力を受け止めてくれるから、ライダーはただただ右手のスロットルグリップをワイドオープンするだけで胸のすくダッシュが味わえる。
’23年式ではその凶暴さに、より凄みを増した。1868ccだったエンジンを55cc増しとし、1923cc(117キュービックインチ)へ排気量を拡大。114.3mmもあるストロークをそのままにボアを1.5mm広げ103.5mmに。エレメントを剥き出しにし、より多くのフレッシュエアをシリンダーに送り込むエルボー型のハイフローエアクリーナーをセットし、94psだった最高出力を102psにまで引き上げた。
発散されるトルクの塊は強烈そのもの。45度Vツインならではの不等間隔爆発が路面を掴んで逃さないトラクション性能を生み出し、トラコンなどの電子制御を必要としていないのも舌を巻く。
スロットルレスポンスが鋭くなったことに加え、速度レンジが上がってからの中間加速でも余裕をもたらす。よりゆったりと、高速巡航ができるようになっているのだ。
低中回転域からトルクが潤沢であると同時に、スピードが乗ってからはロングストローク設計ならではの穏やかさが感じられ、とても重い鉄の球が滑らかに、かつ力強く転がるようなフィーリングに心地良さを感じてならない。速度域が上がってもバランサーが振動を抑え、高速道路でのロングライドも快適で、ゆとりをもって流せる。
新型ではクルーズコントロールを新採用していることも見逃せない。トップ6速にて100km/hで流すとデジタルタコメーターは2250rpmを示し、最高出力を発揮する5020rpmまではまだまだ余裕タップリ。直線番長なキャラクターを色濃くしたものの、根底にあるのは長旅を得意とするクルーザーであることも再認識できた。
―― 21インチの大径ホイールを深く寝た34度のレイク角でセット。ハンドリングはコーナーアプローチで手応えを感じさせるが、リヤステアで車体ごと曲げていけば想像以上にスムーズに車体が傾いて旋回していく。
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