三菱自動車工業は、1トンピックアップトラック「トライトン」(※)をフルモデルチェンジし、7月26日、タイ・バンコクで世界初披露するとともに、タイにて販売を開始した。
今後、アセアンやオセアニアから順次グローバルに展開するほか、日本市場へは約12年ぶりに投入する計画で、来年初頭の販売を予定としている。
好調だったのは?今年上半期のタイヤ、エンジンオイル、バッテリーの販売動向
※「トライトン」は一部の国・地域では「L200」として販売
三菱自動車のピックアップトラックは1978年に発売以来、45年間で5世代にわたり約560万台を生産し、世界約150ヵ国で販売してきた同社の世界戦略車となる。
約9年ぶりのフルモデルチェンジで6代目となった新型「トライトン」は、「Power for Adventure」という商品コンセプトのもとで開発を進め、内外装デザインからシャシー、ラダーフレーム、エンジンなどを一新した。
強靭なラダーフレームと高効率なクリーンディーゼルエンジン
新開発となるラダーフレームは従来型から断面積を65%増やし、曲げ剛性40%、ねじり剛性60%の強化を実現。一方でハイテン鋼の採用比率を大幅に増加することで、重量増を最小限に抑えた。
これにより走行性能や乗り心地の向上に大きく寄与することはもちろん、積載時の耐久性、衝突時のエネルギー分散性も向上するなど堅牢性を高めている。また、ボディも同様に新たに1180MPaのハイテン鋼を採用するなど、従来車に比べ軽量化を図っている。
150kW仕様エンジンルーム
新開発の4N16型クリーンディーゼルエンジンは、用途に応じた3種類の出力の異なる仕様を用意。高出力仕様のエンジンには新型ターボチャージャーと新燃焼システムを採用し、150kWの最高出力と470 Nmの最大トルクを約1,500rpmからフラットに発生し、実用域での応答性に優れたトルクフルな走行が可能になっている。
標準仕様では最高出力135kW/最大トルク430Nmと、最高出力110kW/最大トルク330Nmの2仕様のエンジンを設定し、いずれもタービン容量を可変制御するVGターボチャージャーを採用している。
さらにトランスミッションは、従来車で好評のスポーツモード付き6速オートマチックトランスミッションと、シフトレバーをワイヤー式とすることでエンジンから直接伝わる振動を低減して快適性を向上した6速マニュアルトランスミッションを採用した。
新開発のサスペンションと熟成した4WDシステムにより走行性能を向上
4WDシステムは走行中にダイヤル式のセレクターで簡単に4WDモードを変更することができる。前40%、後60%に駆動力を配分し、トラクション性能とコーナリング性能を両立するトルク感応式LSDを備えた三菱自動車独自のスーパーセレクト4WD-IIと、イージーセレクト4WDを引き続き採用した。
また、スーパーセレクト4WD-II搭載車は、後輪駆動の「2H」、フルタイム4WDの「4H」、センターディファレンシャル直結の「4HLc」、更によりローギヤの「4LLc」の4種類が選択可能で、ドライブモードは従来車のオフロード4モードから、オンロードも含めた7モードに増加。すべての4WDモードに設定されている「NORMAL」モードをはじめ、2Hには経済性を重視した「ECO」、4Hに「GRAVEL(未舗装路)」と「SNOW(氷雪路)」、4HLcにトラクション性能を引き出す「MUD(泥濘)」と「SAND(砂地)」、4LLcには「ROCK(岩場)」モードが設定され、あらゆる路面で最適なドライブモードを選択可能。
一方、イージーセレクト4WD搭載車の4WDモードは後輪駆動の「2H」、センターディファレンシャル直結の「4H」、よりローギヤの「4L」が選べる。
さらに、スーパーセレクト4WD-II搭載車には、新たにアクティブヨーコントロール[AYC]を採用。コーナー内側の前輪に弱くブレーキをかける事で旋回性を向上させる。
また、2WD/4WDモデル共にアクティブLSD(ブレーキ制御タイプ)を採用。空転している車輪にブレーキをかけて路面をグリップしている車輪に駆動トルクを分配することで、滑りやすい路面での安全性が向上すると共にスポーティな運転を楽しむことができる。
そして、カーブが連続するような道路で安定性を向上させるアクティブスタビリティ&トラクションコントロール[ASTC]を全車に標準装備したほか、下り坂で一定のスピードを保持して安心して走行することができるヒルディセントコントロール [HDC]、坂道発進でのずり落ちを防止するヒルスタートアシスト[HSA]などを引き続き採用している。
なお、サスペンションはフロントにダブルウィッシュボーン式を踏襲し、信頼性と耐久性を重視しながら新たに開発。4WD及び2WDのハイライダーのアッパーアーム取り付け部を上方に移動し、ストロークを20mm増やして接地性・乗り心地を向上したハイマウントタイプとした。
リヤサスペンションは強度を維持しながら軽量化したリーフスプリング式を採用。大径化されたショックアブソーバーと共に快適な乗り心地を実現した。
デザインコンセプト「BEAST MODE」(勇猛果敢)
エクステリアデザインは、ピックアップトラックに求められるタフさや力強さに加え、三菱自動車らしい堅牢さを持ちながら俊敏さも併せ持つ堂々とした佇まいを表現している。
さらに、力強いパフォーマンスと、人とクルマを守る安心感を表現した「ダイナミックシールド」フロントデザインコンセプトを、力強く立体的なフロントグリルやフェンダーから繋がる力強い造形、それを強調するプロテクターで、ピックアップトラックに最適化。
3連のL字型LEDランプを配したデイタイムランニングランプは猛禽類を思わせる眼光鋭い造形とし、その下に立体的な3眼プロジェクター式のヘッドライトを組み合わせる事で、圧倒的な存在感と逞しさを感じさせるデザインとしている。
また水平基調のボディサイドは、ドアの厚みを演出する張りのある大きな面で構成しながら、シャープに張り出したフェンダー造形とのコントラストで引き締め、より幅広く見せることで安定感と強靭さを強調。
加えて、十分な荷台サイズを確保しながら、サイドから続く張りのある面を後端まで回している。両端にT字型のテールランプを配しワイド感を強調するとともに厚みを持たせリヤ周りを逞しく演出している。
インテリアでは、走行時の車体姿勢の変化をつかみやすい水平基調で力強い造形の「HORIZONTAL AXIS(ホリゾンタル・アクシス)」コンセプトを進化させたインストルメントパネルを採用。
プロフェッショナルユースを意識し、乗員を保護するためにソフトパットを要所に採用し、実用性の高さを確保。デザイン面では、幾何学的な造形とメタリックを多用したハイコントラストでモダンな空間としている。
モニターやメーター、コントラストをつけたスイッチ類は視認性にこだわり、セレクター、ダイヤル、スイッチ類は手袋をしたままでも確実に操作ができるよう程よい節度感を実現。
ステアリングホイール、グリップ、ドアハンドル類は握り心地や逞しさを追求するなど「MITSUBISHI TOUCH(三菱タッチ)」という考え方に基づいてデザインした。
ユーティリティは、6A/T車及び6M/T車のフロアコンソールに大型カップが2つ収まるカップホルダー、コンソールボックスには600mlのペットボトルが4本収納可能。5M/T車は形状を工夫し、カップホルダーとしてだけでなく、タブレットやファイルが置けるように工夫するなどプロユースを意識した作りとしている。
グローブボックスやスマートフォンホルダーなどの小物入れは手袋をしたままでも操作しやすいよう余裕をもったサイズとし、電子機器の充電用としてインストルメントパネルとセンターコンソールにタイプAとタイプCのUSBを用意、インストルメントパネルセンター下部にはスマートフォンのワイヤレスチャージャーも装備した。
ボディカラーは従来車にはない、鮮やかさとメタリック感を強めたヤマブキオレンジメタリックと、輝度感を向上させたブレイドシルバーメタリックを新たに投入した。
高品質なベーシックカラーとしてホワイトダイヤモンド、ホワイトソリッド、グラファイトグレーメタリック、ジェットブラックマイカをラインナップしている。
ピックアップトラックとしての基本性能の向上
カーゴベッドを大型化することで、ベッドライナー装着状態でもユーロパレット積載にも対応したほか、従来モデルに比べて荷台高を45mm低い820mmとし、さらにバンパーコーナー上面の面積を拡大し、フレームで補強、足を乗せるスペースとして使用可能とするなど実用性を向上させた。
またフロントシートは腰回りをしっかりサポートし、肩付近は動きやすく開放的な形状とし、ドライバーの疲労を軽減。加えて、ヒップポイントを従来車に比べて20mmアップし、アップライトな乗車姿勢とすることで、室内からの視認性を向上。
このほか、Aピラーを立ててドア開口部を広げ、さらにサイドステップの幅を広げるとともに滑りにくい形状とすることで、乗降性を向上している。
三菱自動車 加藤隆雄社長のコメント
「新型『トライトン』は、三菱自動車独自開発の堅牢なラダーフレームやボディ、強靭な足回り、力強く扱いやすいエンジン、優れた走破性と安定性を実現する4WDシステムなど、従来からもつ三菱自動車らしさに磨きをかけ、新時代に相応しいピックアップトラックへと大幅に進化させました。
最終的には100カ国以上で年間20万台規模となる見通しで、まさに当社の屋台骨を支える最重要モデルであり、成長フェーズの幕開けに投入する、第一弾となる世界戦略車です。ここからはじまる当社の挑戦にどうぞご期待ください」
【諸元・駆動系】
関連情報:https://www.mitsubishi-motors.com/en/products/triton/
構成/土屋嘉久
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